作家・土居豊の批評 その他の文章 -167ページ目

【オリコン】『涼宮ハルヒ』最新刊34.1万部で文庫トップ!

3.11後のいま、「終らない日常」を取り戻せるのは、物語の中だけ

【『涼宮ハルヒ』最新刊34.1万部で文庫トップ! 週間売上げ部門過去最高の好スタート(オリコン6月2日)
http://www.oricon.co.jp/news/ranking/88338/full/

5月25日に発売された4年ぶりシリーズ最新刊『涼宮ハルヒの驚愕 初回限定版』(作・谷川流、イラスト・いとうのいぢ/角川グループパブリッシング「スニーカー文庫」)が、今週6/6付のオリコン“本”ランキング文庫部門で実売34.1万部を売上げ、同部門での最高週間売上を記録し堂々の首位を飾った。これまでは、本屋大賞を受賞し映画化もされた湊かなえ氏の『告白』(双葉社)が持つ16.7万部が最高。今回は実に2倍強とうい実売を記録し、圧倒的な強さをみせつけた。】

実売34万部とは大したものです。いくら人気のラノベシリーズとはいえ、これほど売れているのは、作品のもつ魅力が、長年のファンだけでなく新しい読者も引きつけているからでしょう。
かくいう自分も、遅れてきたファンなのですが。
昨年公開された映画『涼宮ハルヒの消失』は、筒井康隆も面白いといっただけあって、時間テーマのSF作品としてもすぐれた出来となっています。
しかし、あくまでこのシリーズの最大の魅力は、誰もが体験しただろう学園生活へのノスタルジーをかきたてられるところにあると思います。
学園もののマンガ、アニメ、ラノベは数多くありますが、「ハルヒ」の学園生活は、今時のものというより、実はかなり80年代テイストを感じさせます。
作者自身の年齢は不明ですが、おそらくそれほど若い世代ではないでしょう。
作品を読むと、一見饒舌すぎる一人称語りの行間から、古き良き学園生活への郷愁が感じられるのです。
この作品には、こうあってほしかった理想の学園生活が描かれているといえます。
その象徴として描かれるのが、ハルヒたちがたむろする文芸部室です。
最新作では、この古い校舎の片隅にあるいかにも年季の入った部室が、物語の重要な鍵を握ります。
多彩なキャラクターの魅力ももちろんですが、意外と見落とされているのが、この小説の描写にちりばめられた「ものたち」への愛情の目線です。
そのことを読み取ったからこそ、アニメ版が徹底的なロケハンと背景へのこだわりの上に実現したのでしょう。
いまや、原作のラノベよりもアニメ版のほうの土地や建物描写が、ファンを聖地探訪に駆り立てているようです。実際、原作の描写には、地名を特定できるところはほとんどありません。
けれど、新しい読者にとって、聖地巡礼の魅力もさることながら、作者の文章に巧みに引きずられて、いつしか自分の学生時代へのノスタルジーにひたっているような読後感は、実に心地よいものだといえましょう。
この作者の小説のお約束なのかもしれませんが、決して無茶な展開をとらないストーリーテリングに物足りなく思う人もいるかもしれません。しかし、なにも起こらないようでいて、少しずつ物語が進んでいく快適さは、「終らない日常」そのものであり、3.11後のいま、「日常」が一度崩壊した日本に、あえて「終らない日常」を取り戻せるのは、物語の中だけなのかもしれません。
せめて読書の間だけでも、「ありそうで、じつはありえない物語」の心地よさにひたってみませんか。

※写真は阪急梅田駅エスカレータ―を占拠したハルヒポスター

(以下告知)筆者が「ハルヒ」をテーマに語る講座/講演です

以下の記事のように、今年も「西宮文学案内」で、文芸レクチャラー・土居豊の講演をやらせていただきます!(募集期間終了)
http://mainichi.jp/area/hyogo/news/20110406ddlk28040382000c.html
「連続講座:「西宮文学案内」文学とのかかわり--来月~7月 /兵庫」(毎日新聞4月6日)
 ◇「阪急電車」など紹介
 西宮市と市文化振興財団は5月~7月、西宮と文学とのかかわりをテーマにした連続講座「西宮文学案内」を開催する。映画化された小説「阪急電車」や、阪神間ゆかりの作家、村上春樹など話題の作品・作家を取り上げる。
 5月8日は午後1時半から、市大学交流センター(同市北口町)で、「『阪急電車』今津線大検定」を開催。かつては沿線に映画スタジオやレコーディングスタジオが立地するなど、映画や音楽の発信源だった今津線沿線。検定では沿線の歴史や文化の他、小説「阪急電車」からも出題する。
 この他、6月7日午後1時20分から、神戸女学院大(同市岡田山)で大阪府立大の堀江珠喜教授が「文学の中のお嬢様」と題し講演。7月9日午後2時からは、大手前大学さくら夙川キャンパス(同市御茶家所町)で作家の土居豊さんが、ともに西宮に関係が深いライトノベルの主人公、涼宮ハルヒと村上春樹について論じる。
 定員は各100人程度、受講料各500円。事前に申し込みが必要で、締め切りは22日。問い合わせは同財団(0798・33・3146)。【浜名晋一】〔阪神版〕】


新刊『涼宮ハルヒの驚愕』が話題の「涼宮ハルヒ」シリーズと、村上春樹を並べて論じる世界初の試みです!奇しくも、『驚愕』が『1Q84』を追い抜いて驚異の売れ行きをみせている「ハルヒ」ですが、意外にも「ハルキ」との共通点がたくさんあります。
これは単発受講できますので、6月5日(日)、ぜひはびきの市民大学にお越しくださいましたら光栄です。
※詳細は以下↓
講座「村上春樹と12人のライバルたち」好評開講中!
2011年度前期・はびきの市民大学講座「村上春樹と12人のライバルたち」(全12回)
【ノーベル文学賞候補でありミリオンセラー『1Q84』で社会現象にもなった村上春樹の文学を、関係の深いライバルたちとの比較で読み解きます。講師は春樹研究歴20年、近著『村上春樹のエロス』他著作多数刊行しています。】
2011年4月24日から毎日曜日15時。LICはびきのにて。

http://www.city.habikino.osaka.jp/lic/shimindaigaku/kouza11zenki-sun.html

4月24日「村上同士の対決(村上春樹VS村上龍)」(終了)
5月8日「阪神間育ちの作家対決(村上春樹VS宮本輝)」(終了)
5月15日「早稲田出身の作家対決(村上春樹VS立松和平、三田誠広)」(終了)
5月22日「ノーベル賞候補と受賞者の対決(村上春樹VS川端康成、大江健三郎)」(終了)
5月29日「国民文学と呼ばれた作家の対決(村上春樹VS司馬遼太郎)」(終了)
6月5日「ハルキVSハルヒ(村上春樹VS谷川流『涼宮ハルヒ』)」
6月12日「社会現象となったベストセラー対決(『ノルウェイの森』VSセカチュー)」
6月19日「ノンフィクション対決(『アンダーグラウンド』VSカポーティ『冷血』)」
6月26日「カフカ同士の対決(『海辺のカフカ』VSフランツ・カフカ)」
7月3日「ハルキVS名探偵(VSチャンドラーのフィリップ・マーロウ探偵)」
7月10日「ハルキVSギャツビー(VSフィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』)」
7月31日「ハルキVSカラマーゾフ(VSドストエフスキー『カラマーゾフ』)」
以上

単発受講も可能です!
お問い合わせ、お申し込みは以下まで
http://www.city.habikino.lg.jp/lic/shimindaigaku/index.html
〒583-0854 大阪府羽曳野市軽里1丁目1番1号
羽曳野市立生活文化情報センター LICはびきの内
TEL 072-950-5503 / FAX 072-950-5650
E-mail  shimindaigaku@city.habikino.osaka.jp
作家・文芸レクチャラー土居豊ブログ「震災後の文学・芸術」

地下式原発推進で超党派議連

いまだに原子力のバラ色の夢から醒めない老人達

【地下式原発推進で超党派議連(時事)
http://www.jiji.com/jc/eqa?g=eqa&k=2011053100809
与野党の有志による「地下式原子力発電所政策推進議員連盟」が31日発足し、衆院議員会館で初会合を開いた。たちあがれ日本の平沼赳夫代表が会長に就任。自民党の森喜朗元首相、民主党の石井一副代表らが顧問となり、二十数人が出席した。政界再編や大連立を視野に入れた動きとの見方もある。
 平沼氏は福島第1原発事故を受け、「地下に原発を造ることは安全性の面から意義がある」と強調。地下式原発は耐震性に優れ、放射性物質が漏れても地中に封じ込められる利点があるという。(2011/05/31-19:00)】

いまだに原子力のバラ色の夢から醒めない老人達の妄言としかいいようがありません。
あるいは、単純に、連立を組むための口実だとしか思えません。
地下にあろうが宇宙にあろうが、原子力を安全に使う技術はまだ確立されていないわけであり、それをこの期に及んで政治的スローガンにするロートルぶりには、絶望的になります。
核開発や原子物理学の科学的価値は否定しませんが、その技術に国家の命運を託するのは、もはや時代遅れだと気づいてほしいものです。
戦艦大和で国を守ろうとした昭和の日本軍のようなものだといえましょう。
20世紀までは、原子力はクリーンエネルギーだ、という印象がまだ通用していました。だから、鉄腕アトムも、サイボーグ009も、原子力で動いていることになっていたのです。
アトムやウランは善玉でも、プルートはあきらかに悪役です。
現実の核物質でも、さすがにプルトニウムを無害だと主張するのは、人間の感覚として無理があると思います。
少なくとも若い世代に対して、原子力がバラ色の新技術だとするイメージを植え付けるのは、もはや無理というものでしょう。
政治家なら、せめてもっと夢のある未来を語ってほしいものです。地下に埋めた核施設に未来を託するなどというストーリーからは、宇宙戦艦ヤマトの地下都市や、エヴァンゲリオンのセントラルドグマといった、破滅に瀕した人類のイメージしか浮かんで来ないのは、私だけかもしれませんが。

人体の標本展示、立件見送り

妥当な判断?

【人体の標本展示、立件見送り(5月30日朝日)
http://www.asahi.com/national/update/0530/OSK201105300053.html
京都市で昨年12月~今年1月に開かれた「人体の不思議展」で特殊加工された人体の標本が展示されたことをめぐり、京都府保険医協会幹部らが主催の実行委員会を刑事告発した問題で、京都府警は、死体解剖保存法違反の疑いでの立件を見送ると決めた。起訴に消極的な意見を添え、近く関係書類を京都地検へ送る。
保険医協会側は告発状で「市の許可を得ずに遺体を保存した」と主張。府警は厚生労働省の見解も踏まえ、標本は「死体」にあたるが、展示を違法な「保存」とみなして刑事責任を問うのは困難と判断した。】

すでに全国で何度も公開されている同展ですが、いまさら立件されてもなあ、というのが正直な感想です。だから、今回の判断は、まあ、妥当な線でしょう。
もともと、この展示は、きわもの趣味というより、教育的な価値が高いと思われます。解剖学的な知識はもとより、子供も大人も、自分や他人の身体への理解を深める、という視点から、大いに役立ったのではないでしょうか。
もっとも、実は私はこの手のリアルな展示が苦手で、まだ観ていません(汗)
血をみるのも大嫌いで、スプラッター映画でも貧血を起こすぐらいです。
あ、でもこの展示では血は出ないでしょうね。
今度こそは観ようかなあ。

新刊『涼宮ハルヒの驚愕』が話題の「涼宮ハルヒ」シリーズと、村上春樹を並べて論じる世界初の試みです

新刊『涼宮ハルヒの驚愕』が話題の「涼宮ハルヒ」シリーズと、村上春樹を並べて論じる世界初の試みです!奇しくも、『驚愕』が『1Q84』を追い抜いて驚異の売れ行きをみせている「ハルヒ」ですが、意外にも「ハルキ」との共通点がたくさんあります。
その一端を昨年、ハルヒの聖地・西宮で講演させていただきました。
以下、兵庫県のブログで紹介されています↓

ひょうごっつ☆くーるβ版
http://hyogotsucool.seesaa.net/article/172106534.html

その考察をさらに進めたのが、今回のはびきの市民大学での講座です。
これは単発受講できますので、来週の日曜日、ぜひはびきの市民大学にお越しくださいましたら光栄です。
※詳細は以下↓
また、世界最速の『涼宮ハルヒの驚愕』書評!には間に合わなかったけれど、私も書評しました!(ネタバレなし)↓
http://ameblo.jp/takashihara/entry-10903342081.html
このシリーズの白眉は、「変わらない日常」が、いつの間にか確かに変化して、同じ世界が、ほんの少し変わってみえる一瞬を、見事にとらえているところにあります。6月5日はぜひ、はびきので『涼宮ハルヒの驚愕』についても語り合いましょう!

以下、告知です↓

講座「村上春樹と12人のライバルたち」好評開講中!
2011年度前期・はびきの市民大学講座「村上春樹と12人のライバルたち」(全12回)
【ノーベル文学賞候補でありミリオンセラー『1Q84』で社会現象にもなった村上春樹の文学を、関係の深いライバルたちとの比較で読み解きます。講師は春樹研究歴20年、近著『村上春樹のエロス』他著作多数刊行しています。】
2011年4月24日から毎日曜日15時。LICはびきのにて。

http://www.city.habikino.osaka.jp/lic/shimindaigaku/kouza11zenki-sun.html

4月24日「村上同士の対決(村上春樹VS村上龍)」(終了)
5月8日「阪神間育ちの作家対決(村上春樹VS宮本輝)」(終了)
5月15日「早稲田出身の作家対決(村上春樹VS立松和平、三田誠広)」(終了)
5月22日「ノーベル賞候補と受賞者の対決(村上春樹VS川端康成、大江健三郎)」(終了)
5月29日「国民文学と呼ばれた作家の対決(村上春樹VS司馬遼太郎)」(終了)
6月5日「ハルキVSハルヒ(村上春樹VS谷川流『涼宮ハルヒ』)」
6月12日「社会現象となったベストセラー対決(『ノルウェイの森』VSセカチュー)」
6月19日「ノンフィクション対決(『アンダーグラウンド』VSカポーティ『冷血』)」
6月26日「カフカ同士の対決(『海辺のカフカ』VSフランツ・カフカ)」
7月3日「ハルキVS名探偵(VSチャンドラーのフィリップ・マーロウ探偵)」
7月10日「ハルキVSギャツビー(VSフィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』)」
7月31日「ハルキVSカラマーゾフ(VSドストエフスキー『カラマーゾフ』)」
以上

単発受講も可能です!
お問い合わせ、お申し込みは以下まで
http://www.city.habikino.lg.jp/lic/shimindaigaku/index.html
〒583-0854 大阪府羽曳野市軽里1丁目1番1号
羽曳野市立生活文化情報センター LICはびきの内
TEL 072-950-5503 / FAX 072-950-5650
E-mail  shimindaigaku@city.habikino.osaka.jp
作家・文芸レクチャラー土居豊ブログ「震災後の文学・芸術」
作家・文芸レクチャラー土居豊ブログ「震災後の文学・芸術」
作家・文芸レクチャラー土居豊ブログ「震災後の文学・芸術」

仮設 盆までの全員入居厳しく

約束を守れる大人になりましょう

【仮設 盆までの全員入居厳しく(毎日新聞 2011年5月29日)
http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110529k0000e040018000c.html
東日本大震災で被災した宮城県で、菅直人首相が掲げた「お盆のころまでに被災者全員の仮設住宅入居」の目標達成が困難になっている。集落維持や農漁業再生などを求める被災者の要望を受けて、三陸沿岸自治体が域内での用地確保に奔走し、7月中旬までの着工が難しい状況だからだ。県は内陸部に建設したい考えで、沿岸市町とは落差がある。着工の進捗(しんちょく)率は、100%に達した内陸自治体がある一方、三陸沿岸自治体は5割前後にとどまっている
県内最多の8000戸が必要な石巻市の進捗率は5割を切る。市は今月上旬、必要戸数が供給を上回る市内3地区で、自治会などに民有地提供を依頼。「津波に浸水せず最低10戸が建設できる」「ライフラインが整っている」などの条件を満たした牡鹿地区の6カ所で今月中旬からようやく樹木伐採、切り土などの造成工事を始めた。】

 

国会中継で、この「お盆までには」の首相の答弁を見ていました。
この「お盆まで」という期限さえもが、首相自ら言ったのではなく、国会での追求の中で、しぶしぶながら、という感じで述べられました。
その約束さえ、平然とこうして破られるとなれば、もはや、この国の首相の何を信じろというのでしょう?
もちろん、厳しい避難所生活が、もうすぐ3ヶ月になろうというとき、「せめてお盆までには仮設に」と信じて待っていらした方々にとって、どれだけショックか、想像に余りあります。
「お盆までに」というのは、単なる期日指定ではないのです。
避難所生活を脱して、せめてお盆にご先祖を自宅にお招きしたい、という日本人なら当然の希望がこめられているのです。
「お盆までに」といったとき、その言葉の重みを、感じていたでしょうか?
この約束を破ることは、現実に生きている人々だけでなく、祖先の魂をも裏切ることになるのだと、思わないのでしょうか?
まあ、そこまで考えていないのかもしれません。
それにしても、一国のリーダーたるもの、せめて約束を守れる大人であってほしいものです。そうでないと、子供たちにしめしがつかないじゃありませんか!

結局、今回も、いささか感情的な内容で書いてしまいました。

台風2号 東北も雨強まる見込み

まさに弱り目に祟り目

【台風2号 東北も雨強まる見込み
http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110529ddm041040135000c.html
強い台風2号は28日午後11時現在、那覇市の北北西約70キロの海上を時速45キロで北東に進んでいる。中心気圧は950ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は40メートルで、半径130キロ以内では風速25メートル以上の暴風が吹いている。
気象庁によると、鹿児島県から東日本では29日にかけて、局地的に雷を伴い1時間に50~70ミリの非常に激しい雨が降る恐れがある。東日本大震災で被災した東北地方は29日夜から雨が強まり、30~31日に大雨となるため、土砂災害や河川増水への警戒が必要】
(毎日新聞 2011年5月29日)

 
弱り目に祟り目、ということわざ通り、自然は人間の都合で動いてはくれません。
震災後、すでに3ヶ月目が近づいているというのに、国はほとんど機能不全状態だとしか思えない、遅々とした復旧対策しかできないまま。
震災と津波の被害が十分に復旧できないままだと、梅雨や台風の季節には大変な事態になりかねない、ということは、自明の理だったはずです。
批判ばかりしていてもしょうがない、とは思いますが、あまりといえばあまりの後手後手振りに、本当に国というものが信用できなくなってきました。
それにしても、この台風がうまく被災地をそれてくれることを祈ります。
いずれにしても、梅雨入りして、すぐに台風2つ目だなんて。自然の前に、人間の浅知恵を痛感します。
いささか、悲観的にすぎる気分ですが、サミットでの首相の空々しい演説をみて、ますます憤りにかられました。

電子書籍の新刊発売決定!

先ほど東京から帰阪の途につきました。いよいよ電子書籍の新刊が出せそうです。その内容は……
近々、発表します!
台風が接近していますが、まさに台風の目となるはずの本です。ご期待いただけましたら光栄です。

震災のこと

今朝は東京です。昨夜の打ち合わせは、某出版社の編集さんにご紹介いただき、未来を見据えたお話が交わせたと思います。
今日も夕方、大事な取引先の方にお目にかかります。
思うのですが、関西の自分からすると、やはり東京のみなさん、震災後、ずっとナーバスなまま、緊張して生活されてるなあ、と感じます。
関西では、もはや震災の話題は一種のイベント的な(言葉は悪いですが)受けとめ方になっていると思います。
改めて、震災のこと、原発事故のことを、考えなければならない、と思いました。

2012年大河・松ケン清盛夫人に武井咲、深田恭子、加藤あい

【2012年大河・松ケン清盛夫人に武井咲、深田恭子、加藤あい 『平清盛』女優9名豪華競演
http://beauty.oricon.co.jp/news/88119/

NHKは26日、松山ケンイチ(26)主演の2012年大河ドラマ『平清盛』の女性新キャスト9名を発表した。清盛の最初の妻・高階明子に加藤あい(28)、後妻・平時子に深田恭子(28)、夫・源義朝の処刑後に清盛の側室となる常盤御前に武井咲(17)。9名中7名が大河初出演というフレッシュかつ豪華キャストに囲まれた会見で、松山は「モチベーションが上がった。いい意味でぶつかり合えるという思いが強くなった。男性、女性共に素晴らしいキャストで責任重大ですが、一生懸命やりたい」と気を引き締めた。 】

今年の大河『江』のあまりのぐだぐだぶりに、しばらく大河を見ていなかったが、来年の『清盛』は大いに期待できそう。
なんといっても、久々の平安もので、衣装調度の華麗な映像も楽しみだ。
松ケンは、このところますます成長著しいので、骨太かつ繊細な清盛を演じてくれそう。
女性陣の豪華さは大河ならではだが、個人的には、建春門院を演じる成海璃子が嬉しい。実はひそかにファンなのだ。
それはどうでもいいが、清盛といえばこれまで『平家物語』での悪役ぶりが強調されてきた。映画『新平家物語』での新世代武士の斬新なイメージに迫るような、新しい清盛像を期待したい。
奇しくも、私の新作歴史小説『かぶろ』は、清盛配下の少年スパイ団かぶろを主人公に、源平合戦の裏舞台を描くもので、近々、電子書籍版での刊行が予定されている。
この秋には、「清盛」をテーマにした講演もいくつか予定していて、そういう意味でも、個人的に「清盛」はマイブームになっているのだ。

世界最速の『涼宮ハルヒの驚愕』書評!には間に合わなかったが私も書評します!(ネタバレなし)

世界最速の『涼宮ハルヒの驚愕』書評!には間に合わなかったが私も書評します!(ネタバレなし)

長らく刊行が待たれていた谷川流の『涼宮ハルヒ』シリーズ最新刊『涼宮ハルヒの驚愕』が25日、発売され、さっそく読んでみた。
すでにスニーカー誌上でその冒頭が先行掲載されていたとはいえ、前後篇2冊にボリュームアップされた物語は、期待を裏切らない完成度だった。
この人気作は、「終らない日常」を賛美してやまないノスタルジックな青春ストーリーである。
したがって、物語がこの最新刊で完結するのかどうか?が最大の気がかりだろう。
そのラストは、まさに「驚愕」のシーン、といいたいところだ。
さて、内容のネタバレは避けるが、前作の『涼宮ハルヒの分裂』から、このシリーズは新たな展開に入ってきた。それは、新しく主役級のキャラクターが登場してきたことと、ストーリー構成を思い切り大胆に、趣向をこらしていることだ。
新しいヒロインの一人、佐々木は、今回の新作でも、予想通り重要な動きをみせ、ストーリーは意外な展開をたどる。『涼宮ハルヒの陰謀』から登場してきた未来人も、今回、キープレーヤー的に位置づけられている。
さらに、前作の『分裂』から試みられている、一つの時空をα軸とβ軸に文字通り分裂させ、パラレルストーリー的に構成した物語は、最終的に見事な結末へとなだれこんでいく。
その物語手法は、まるで村上春樹の『1Q84』を髣髴とさせるのだ。
しかし、この作品の魅力は、なんといっても、主要キャラクターたちの生き生きとした描写にある。ハルヒとキョンの仲はどうなるのか? 前作で病に倒れた長門の運命は? 朝比奈さんや古泉はどう動くのか? 
おそらく、このシリーズが愛されている最大の理由は、メインキャラたちが変わらない個性を発揮しながらも、少しずつ人間的な成長を遂げていく、という、キャラクターものの王道を歩んでいる点にあるのだ。
「変わらない日常」を描きながらも、学園青春ものの宿命として、主役達は学年を上がり、着実に大人への階段を登っていくことになる。このシリーズの白眉は、「変わらない日常」が、いつの間にか確かに変化して、同じ世界が、ほんの少し変わってみえる一瞬を、見事にとらえているところにある。
奇しくも、3.11を境に、「終らない日常」だったはずの生活が一変したこの国で、それでも「変わらない日常」を生きていくことの大切さとすばらしさを、この小説は表現しているのである。
震災後のいまこそ、この小説を読んでみてほしい。おそらくは、失われた過去への愛惜と、見慣れた現在の日常への愛着をともに噛みしめるような、上質の読後感を味わうことができるはずである。

最後に、私も「ハルヒ」シリーズの大ファンだが、以下のような講座、講演を近々、やらせていただけるのが一ファンとして非常にうれしい。

以下、告知↓

はびきの市民大学講座「村上春樹と12人のライバルたち」
第6回「ハルキVSハルヒ(村上春樹VS谷川流『涼宮ハルヒ』)」
6月5日(日)15時。
この講座シリーズは2011年4月24日から毎日曜日15時、LICはびきのにて開講中。単発受講できますので、ぜひご一緒に、ハルキワールドとハルヒワールドのありえなさそうな?コラボを論じましょう!
http://www.city.habikino.osaka.jp/lic/shimindaigaku/kouza11zenki-sun.html


今年の【西宮文学案内】春季は、実はすでに申し込み期間は過ぎているのですが、再度お知らせさせていただきます。
以下の記事(再掲)のように、今年も「西宮文学案内」で、文芸レクチャラー・土居豊の講演をやらせていただきます!
【http://mainichi.jp/area/hyogo/news/20110406ddlk28040382000c.html
「連続講座:「西宮文学案内」文学とのかかわり--来月~7月 /兵庫」(毎日新聞4月6日)
 ◇「阪急電車」など紹介
 西宮市と市文化振興財団は5月~7月、西宮と文学とのかかわりをテーマにした連続講座「西宮文学案内」を開催する。映画化された小説「阪急電車」や、阪神間ゆかりの作家、村上春樹など話題の作品・作家を取り上げる。
 5月8日は午後1時半から、市大学交流センター(同市北口町)で、「『阪急電車』今津線大検定」を開催。かつては沿線に映画スタジオやレコーディングスタジオが立地するなど、映画や音楽の発信源だった今津線沿線。検定では沿線の歴史や文化の他、小説「阪急電車」からも出題する。
 この他、6月7日午後1時20分から、神戸女学院大(同市岡田山)で大阪府立大の堀江珠喜教授が「文学の中のお嬢様」と題し講演。7月9日午後2時からは、大手前大学さくら夙川キャンパス(同市御茶家所町)で作家の土居豊さんが、ともに西宮に関係が深いライトノベルの主人公、涼宮ハルヒと村上春樹について論じる。
 定員は各100人程度、受講料各500円。事前に申し込みが必要で、締め切りは22日。問い合わせは同財団(0798・33・3146)。【浜名晋一】〔阪神版〕】
西宮市は、知る人ぞ知る、村上春樹が育った街であり、また、アニメ『涼宮ハルヒ』の舞台として世界中のオタクの聖地ともなっています。
ちなみに、私の担当した講演『涼宮ハルヒ』の回については、以下のように兵庫県がやっているブログでもご紹介いただいています。
ひょうごっつ☆くーるβ版→
http://hyogotsucool.seesaa.net/article/172106534.html

※大森望による『涼宮ハルヒの驚愕』最速レビュー
http://www.webdoku.jp/newshz/ohmori/2011/05/25/000000.html
作家・文芸レクチャラー土居豊ブログ「震災後の文学・芸術」
作家・文芸レクチャラー土居豊ブログ「震災後の文学・芸術」