「世界の小澤」と「若手の代役指揮者」
「世界の小澤」と「若手の代役指揮者」
NHKの番組で、小澤征爾の復帰を特集していた。一音楽ファンとしては、小澤の復帰を心から喜びたい。
でも番組的には、首をかしげてしまった。
番組は、サイトウキネンフェスティバルでの小澤の復帰ステージを、長時間の枠で放映予定だったようだ。
けれど、腰の悪化のため、小澤の指揮する演目はチャイコフスキーの弦楽セレナーデ一曲だった。
そのせいか、番組は小澤のリハーサルと、代役の下野竜也のリハーサルなどをつなぎ、サイトウキネンの本番は小澤の一曲のみで、あとは、小澤/ベルリンフィルでの悲愴を放映していた。
私としては、リハーサルのみ放映された下野指揮のノベンバーステップスの、本番ステージがみたかった。なぜなら、下野はすでに若手指揮者というより、中堅の実力派なのだが、小澤の代役という重責を引き受けた意気込みが、どんなステージに結実したのか、ぜひ見たかったのだ。
なにもあそこにベルリンの悲愴を入れることはないと思う。
おそらく、番組の意図としては、小澤のドキュメンタリーだったから、仕方がないというのはもちろんわかる。
けれど、小澤もかつて、若手だったとき、今回の下野と同じようにベテランの代役を見事やりとげて、のしあがってきたはずなのだ。
NHKとしても、若手指揮者をもっと応援してほしい、という気持で、この一文を書いた。
かつてNHKが、若手だったころの小澤をキャンセルして、結果的に国外に放り出した過去は、あえて問うまい。