オペラ座の怪人(浦澄彬の批評アーカイブ17) | 作家・土居豊の批評 その他の文章

オペラ座の怪人(浦澄彬の批評アーカイブ17)

「オペラ座の怪人」の難しさ (2002.2.25)
これで4度目だが、ミュージカル『オペラ座の怪人』を観た。
このミュージカルは、難しい。役者を選ぶ作品
である。
 
まず、ヒロインは怪人と若い子爵との間で揺れる恋心を歌でも演技でも表現できなければならない。もし
どちらか片方に気持ちが最初からいってしまっていると、結末がみえみえになる。
今回観た女優は、最初
から子爵に決めてしまっていた。だから、怪人は終始悪役でしかなかった。
これでは、作品の魅力が半減
する。
 
それと関連して、若い子爵には、あくまでも二枚目の優男をもってこなくてはならない。
この役がタフで
ありすぎると、怪人はまったく引き立たない。
子爵は、金持ちのぼっちゃんでなければうまくない。
 
怪人役は、どうしても悪役に見えてしまう。だから、善悪を超越した存在感、カリスマを発散していなければ
ならない。
 
この三役がそろってこそ、作品が生きる。
劇団四季は、健闘してはいるが、今の配役は適役とはいかな
い。歌はうまいが、演技に入り込めていない。
ロンドンで観た『オペラ座』は、まったく見事だった。この暗い芝居で、笑わせるところをしっかり笑わせて
いたのが、底力を感じさせた。
何より、劇場の雰囲気と、観客の盛り上がり方に酔った。芝居を楽しむ人達
の裾野の広さの差であろうか。
とはいえ、このハイテク・ミュージカルをロングランさせているのは、日本のミュージカルの実力が着実に
高まっている証拠である。
あとは、観客の問題なのかもしれない。もっと、ミュージカル好きが増えてほしい。
それと、安いチケットも。立ち見でいいから。