劇団四季「キャッツ」(浦澄彬の批評アーカイブ8) | 作家・土居豊の批評 その他の文章

劇団四季「キャッツ」(浦澄彬の批評アーカイブ8)

浪速のCATS (2001.3.28)
劇団四季のミュージカル『CATS』が大阪城の傍のMBS劇場でロングラン公演されている。
私が観に
行った日は、平日の夕方だったが、当日券も完売していた。大変な人気で、「ミュージカルの王様」という
コピーも伊達ではない。
 
JR環状線の大阪城駅を出ると、大変な賑わい。さすがはCATS、と思っていると、どうも様子が違う。
周りに群れているのは、同じようなカジュアルな服装の中学生高校生ぐらいの女の子ばかり。
どうやら、
大阪城ホールでジャニーズのタレントのコンサートがあるらしい。
公園の中を、異質な団体が交差する。
手に手にタレントの顔写真入りのうちわやブロマイドを持った中高生の女の子の集団と、おしゃれな服装
のOLやカップル、家族連れが、お互い変なものを見るような目でちらっと相手を見て通り過ぎる。
それにしても、中高生の女の子たちに薄汚いおやじのダフ屋が群がっているありさまは、何とも異様な
光景だった。
 
さて、『CATS』だが、仮設のMBS劇場の中は、全くの異空間と化していた。
客席を取り巻く空間は巨大
なゴミの塊をモチーフにしたオブジェで埋まっている。猫の視点を再現したものという。
満席の客席はリピー
ターも多いようで、以前のステージとの違いなどを語り合っている。
家族連れも多く、子供たちが大勢いて、
口をあんぐり開けて壁のオブジェを見上げている。
 
ステージは見るものを完全にその世界にひきこんでしまった。様々な要素がそれぞれ最大の魅力で演じ
られていて、ミュージカルを観る喜びに満ちていた。
 
小さい子どもも、この夜、出会った不思議な猫たちのことを忘れないだろう。『猫の名前』の場面で、それ
ぞれの猫たちが客席に下りてきて、猫そのもののしぐさで観客にじっと迫ってくる場面。幼い女の子が、
目をまん丸にして目の前の不思議な存在をじっと見つめていた。