大阪音楽大学学生演奏会・ヴァイオリンの小山亜希とクラリネットの原田恵美 | 作家・土居豊の批評 その他の文章

大阪音楽大学学生演奏会・ヴァイオリンの小山亜希とクラリネットの原田恵美

2日連続の第2夜を聴いた。
この大学は、以前から出入りしているが、改めて学生の演奏を聴いてみた。しかし、結論から言えば、玉石混交である。
まずは玉から。学生の前田恵美作曲による『コントラバス二重奏・60~戦場での祈り~』が、大変すぐれた作品であり、またすばらしい演奏だった。戦後六〇年をきっかけに、一人の兵士の写真からインスピレーションを得て、コントラバス2本とピアノ、という変わった編成で作られた曲で、コントラバスの二人は、敵同士の二人の兵士を表すという。平易な楽曲構成だが、そこに込められた祈りの心情が、ストレートに表現されていて、若い女性の感性が伝わってきた。演奏者のコントラバス二人は、戦場の兵士さながらの熱演で、おそらく友人とおぼしき作曲者の女性を称えた。
もう一人、ヴァイオリンの小山亜希。サンサーンスの『序奏とロンド・カプリチオーソ』
初め、高校生が出てきたのかと思ったほど、幼い容姿に、七五三みたいな子供じみたドレス。しかし、演奏はタフで筋金入り。多少アンバランスで不安定な箇所もあるが、18歳にしては前途有望である。
もう一人、クラリネットの原田恵美。アーノルドのソナタ。
こちらも18歳。それなのに、小難しい現代曲を、いとも楽々と吹きこなし、多彩な音色で管楽器の楽しさを歌い上げた。
こうしてみると、大学一年だからといって、決して侮ってはいけない。才能のある奏者は、やはり早熟なのだ。一方、上級生なのに、ぱっとしない奏者もいる。
疑問だが、きっとオーディションをしているはずなのに、どうしてこう、演奏者の実力に差があるのだろう? 楽器や学年が偏らないよう、人数枠を設けているのだろうか?
もしそうなら、公開演奏にする意味はない。一般客は、優れた学生の演奏を聴きたいのだ。ピアノ教室の発表会のつもりで、内輪に向けてやっているなら、この音大はいつまでもレベルアップは望めまい。腕達者は日本にも世界にもたくさんいるのだ。
11月2日