兵庫県立芸術文化センター杮落とし・佐渡裕指揮「第9コンサート」
期待に反して、意外なくらい平凡な演奏だった。佐渡裕の指揮に、オーディションで選りすぐりの若手国際色オーケストラの面々が、もっとハッスルして演奏するかと思っていた。
佐渡氏のベートーヴェンは、師のバーンスタイン譲りの極めてロマンティックな解釈で、テンポもダイナミックスも自在に揺れ動く。その表現意図に奏者がついていけていないのか、リハーサル不足なのか。コーラスはプロアマ混成だから、細かい表情を求めても無理だったろう。ソリスト4人の美声が救いだった。
だが、何といっても誕生したばかりのオーケストラだ。これからじっくり音を磨いていってもらえばよい。それには、佐渡氏が地道にトレーニングをするしかない。オーケストラ・ビルダーとしても評価の高い佐渡氏の手腕に期待しよう。
この劇場は、阪神間文化の地盤沈下を食い止める一つの起爆剤となる使命を背負っているかもしれない。しかし、経済効果ばかり追い求めていると、せっかく造った劇場もオーケストラも、十分生かせないことになる。芸術文化の育成に手をつけたからには、県民も長いスパンで見守ってほしい。佐渡氏がこの地に腰を落ち着けて10年単位で劇場運営に取り組んでくれたなら、30年後、おそらく世界に誇りうる劇場に成長しているだろう。
そう考えると、オープニング・シリーズのラインナップは、いささか浮薄に過ぎるように見える。第9を何度もやって客を呼ぼうというのは、まあよい。しかし、佐渡氏の人脈か、世界的アーティストをずらりと呼び集めてみせたとしても、今後10年、ずっと彼らが毎年のように来てくれるとはいくまい。それだけの予算も、プロモーション力も、地方の公共施設に求めるのは無理だろう。大きく花火を打ち上げて、それでおしまい、とならないよう切に祈る。
10月30日
佐渡氏のベートーヴェンは、師のバーンスタイン譲りの極めてロマンティックな解釈で、テンポもダイナミックスも自在に揺れ動く。その表現意図に奏者がついていけていないのか、リハーサル不足なのか。コーラスはプロアマ混成だから、細かい表情を求めても無理だったろう。ソリスト4人の美声が救いだった。
だが、何といっても誕生したばかりのオーケストラだ。これからじっくり音を磨いていってもらえばよい。それには、佐渡氏が地道にトレーニングをするしかない。オーケストラ・ビルダーとしても評価の高い佐渡氏の手腕に期待しよう。
この劇場は、阪神間文化の地盤沈下を食い止める一つの起爆剤となる使命を背負っているかもしれない。しかし、経済効果ばかり追い求めていると、せっかく造った劇場もオーケストラも、十分生かせないことになる。芸術文化の育成に手をつけたからには、県民も長いスパンで見守ってほしい。佐渡氏がこの地に腰を落ち着けて10年単位で劇場運営に取り組んでくれたなら、30年後、おそらく世界に誇りうる劇場に成長しているだろう。
そう考えると、オープニング・シリーズのラインナップは、いささか浮薄に過ぎるように見える。第9を何度もやって客を呼ぼうというのは、まあよい。しかし、佐渡氏の人脈か、世界的アーティストをずらりと呼び集めてみせたとしても、今後10年、ずっと彼らが毎年のように来てくれるとはいくまい。それだけの予算も、プロモーション力も、地方の公共施設に求めるのは無理だろう。大きく花火を打ち上げて、それでおしまい、とならないよう切に祈る。
10月30日