大阪シンフォニカー交響楽団演奏会・スメタナ『わが祖国』 | 作家・土居豊の批評 その他の文章

大阪シンフォニカー交響楽団演奏会・スメタナ『わが祖国』

大阪には何と、プロのオーケストラが5つもある。歴史ある大阪フィル、公立の強力な大阪センチュリーに挟まれて、関西フィル、大阪シンフォニカー、カレッジオペラハウス管弦楽団は常に苦戦を強いられている。
中でも、大阪シンフォニカーは、もともと若手のミュージシャンのために自主的に結成された楽団で、財政面で苦労の連続だったときく。その昔、私はここの付属の合唱団に混じって、ベートーヴェンの第9を歌ったことがあり、それ以来、親近感を抱いてきた。
この前、新しく客演常任指揮者になったチェコのウラディーミル・ヴァーレク指揮によるスメタナの「わが祖国」を聴いた。昨今、「わが祖国」全曲を日本のオケであたりまえのように聴けるようになった。しかし、この曲は難物で、説得力ある演奏はそう多くない。
かつて、チェコスロヴァキアがビロード革命によって民主化されたころ、共産政権から逃れて亡命していた巨匠ラファエル・クーベリックが帰郷してチェコ・フィルを指揮し、「わが祖国」をやった。その公演が何と大阪まではるばるやってきて、ザ・シンフォニーホールで行われたのを聴いた。その強烈な祖国への思いあふれる演奏を聴いて以来、ちっとやそっとの演奏では満足できなくなっていたのだ。
しかし、今回のヴァーレクと大阪シンフォニカーの「わが祖国」は、新しい時代の幕開けにふさわしい見事なものだった。指揮者の手馴れたリードと楽員の思いがしっかり噛み合った快演だった。
惜しむらくは、客席があまり埋まっていなかったこと。特に、ランクの高い席がほとんど空席だった。それはつまり、このオケの熱心なファンは大勢いるのに、肝心のスポンサーが、席を確保していながら聞きにこないということだ。そんなことでは、せっかく若手オケとチェコの名匠が気を吐いていても、その活動が認められていかないだろう。せっかく金を出すなら、きちんと聴きに来るべきだし、そうでないなら、いい席を学生などに安く開放してでも、もっと多くの人々に、このすばらしい演奏を聴いてもらうべきだ。
7月23日