オペラ | 作家・土居豊の批評 その他の文章

オペラ

その現場を初めて見物させてもらった。芝居の現場はみたことがある。しかし、オペラのそれは、やはり音楽の流れが優先していた。ダメだしは、演出家がステージを飛び跳ねるようにしてキャスト一人一人につけていく。その間、指揮者は一心にスコアを確認している。たとえ、いくら演出が歌手に演技させても、それが歌と一体化しなければ、ぎこちない動きでしかない。もちろん、演出と音楽は相互補完している。しかし、あくまで最後は音楽がそのステージを確定してしまうのだ。オペラのマエストロ、その呼び名は伊達ではない。モーツアルトの「コシ」であって、ダ・ポンテの、ではない所以はそこにある。
6月13日