報告)鳴尾図書館講座ハルヒとアーサー・ランサム&「涼宮ハルヒと、ナンシイ・ブラケット」書籍化企画 | 作家・土居豊の批評 その他の文章

報告)鳴尾図書館講座ハルヒとアーサー・ランサム&「涼宮ハルヒと、ナンシイ・ブラケット」書籍化企画

(報告)西宮市立鳴尾図書館講座『涼宮ハルヒ』とアーサー・ランサム&仮説「涼宮ハルヒと、ナンシイ・ブラケット」書籍化企画の発表

 

※鳴尾図書館所蔵の「涼宮ハルヒ」シリーズと、講師・土居豊の著作など

 

 

※アーサー・ランサムの「ツバメ号」シリーズ、どこの公共図書館にも必ずあるはずです。特徴的なグレーの装幀、ヨットのイラスト。

 

※見開きには、この物語世界の地図。少年少女たちの冒険の舞台は、実在する英国湖水地方がモデル。

 

 

昨日は西宮市立鳴尾図書館で講座をやりました。テーマは、『涼宮ハルヒ』とアーサー・ランサム。まるで私の著書『ハルキとハルヒ』のようにまたこじつけか?と、批判したくなるテーマに思えるかもしれませんが、そんなことはありません!

講座にご参加の方々からも、私の仮説に賛同をいただきました。

 

その仮説とは?

「涼宮ハルヒと、ナンシイ・ブラケット」

これが私の仮説です。

 

このタイトル、わかる人には、わかるはずだと思います。

この二人、なぜかよく似ているのです。

20世紀初頭の英国作家ランサムと、21世紀の日本のラノベ作家谷川流、この両者にはもちろん、何もつながりはないはずです。

なのに、ハルヒとナンシイは、時代も国もジャンルも違うのに実に似ているのです。

 

「涼宮ハルヒと、ナンシイ・ブラケット」、この仮説のさわりを昨日、鳴尾図書館講座でお話して、数名からご賛同いただけたことで、この仮説を本にまとめる自信が出ました。

英国児童文学のヒロインと、ラノベのヒロインがなぜこんなに似てるのか? その謎を推理し、この仮説から子供の読書啓蒙へと繋げようと思います。

 

「涼宮ハルヒと、ナンシイ・ブラケット」という仮説を本にまとめます。

ご興味ある版元さん、編集さん、学者の方々、図書館関係、国語の先生、ぜひ、お声かけください。

日本の児童文学研究とラノベ研究、図書館活動、読書啓蒙を繋げる、これまでなかった試みを、ぜひ支援いただきたく、お願い申し上げます。

「涼宮ハルヒと、ナンシイ・ブラケット」の仮説、書籍化の企画について、ご関心あれば、後日、詳細をお知らせします。

また、昨日の鳴尾図書館での講座、内容を後日、音声かテキストで公開する予定です。

 

※「涼宮ハルヒ」シリーズは、今や高校の英語の教科書にも載っているぐらい、ポピュラーです

 

 

 

※「涼宮ハルヒ」とアーサー・ランサム、果たしてどんな繋がりが?

 

※ナンシイ・ブラケットは、ランサムの創造したヒロインであると同時に、作者ランサムを超えて物語世界を想像する存在となった。

 

 

 

※鳴尾図書館講座、次回が最終回

 

(詳細)

西宮市立鳴尾図書館

連続講座「小説を読む楽しみ」全4回

講師:作家・土居 豊

参加人数:各回40人(先着順)

場所:鳴尾図書館1階 視聴覚室

日時:

次回

第4回 3月9日(土)野坂昭如と遠藤周作(地元が舞台の戦争小説)

 

時間は毎回 午後2時~午後3時30分

お問い合わせ:西宮市立鳴尾図書館

電話: 0798-45-5003

663-8178 兵庫県西宮市 甲子園八番町1−20

 

※過去の開催報告

https://ameblo.jp/takashihara/entry-12432532604.html

 

https://ameblo.jp/takashihara/entry-12435882096.html

 

 

※昨日の鳴尾図書館講座のレジュメです

 

 

鳴尾図書館連続講座「小説を読む楽しみ」

第3回

アーサー・ランサムと谷川流(児童文学と青少年向き小説)

2019年2月23日(土)午後2時~午後3時30分

 

⒈ アマゾン海賊ナンシイ・ブラケット→SOS団団長涼宮ハルヒ、という継承?

(1)

19世紀後半〜20世紀前半の児童文学のヒロインたちは、21世紀のラノベ&アニメのヒロイン像を先取りしている。特に、英国児童文学の名作「ツバメ号とアマゾン号」シリーズのヒロインであるナンシイは、ラノベ&アニメで一世風靡した「涼宮ハルヒ」シリーズの涼宮ハルヒに酷似している。

仮説として、20世紀前半に「ツバメ号」シリーズの作者・ランサムが描いた男勝りの少女が、21世紀日本で無意識的に継承されているのかもしれない、と考える。特に、「涼宮ハルヒ」の作者の出身地である阪神間特有の文化風土によって、英国児童文学の影響が継承されたのかもしれない、という仮説も考察する。

日本における児童文学の受容が、のちに日本独特のラノベ・アニメに少なからぬ影響を及ぼしたのではなかろうか、という仮説を、児童文学史上の代表的ヒロインたちを考察することで、論考していく。

 

(2)児童文学のヒロインたちの例

1)英国児童文学の場合

アリス(不思議の国のアリス)

ウェンディ(ピーターパン)

ナンシイなど「ツバメ号」シリーズの少女たち

「ナルニア国物語」のペベンシー姉妹

メアリー・ポピンズ

 

2)他国の児童文学の場合

アン・シャーリー(赤毛のアン)

ピッピ、エーヴァ・ロッタ、チョルベンなど、リンドグレーン作品

「二人のロッテ」など、ケストナー作品

ムーミンの場合

 

⒉ ランサム・サガのヒロイン・ナンシイと、涼宮ハルヒとの奇妙な類似

(1)「ないのなら創ればいいのよ」という物語創造性と自発性、無類の活動力。

1)ナンシイの場合

アマゾン海賊の創造

ごっこ遊びによる海賊物語の実践

ごっこ遊びが現実世界を侵食する(ジム・ターナー=フリント船長、農場の人々=ネイティブたち、現実の強盗=海賊の宝 など)

 

ナンシイの支配する物語世界の具体例

『ツバメ号とアマゾン号』『ツバメの谷』

アマゾン海賊のルールとツバメ探検隊のルールは、西欧大航海時代の白人とネイティブの接触の歴史をほぼ踏襲する。

 

『長い冬休み』

湖の結氷による架空の北極探検ごっこ。病気に倒れても、ナンシイは物語の進行を支配する。

 

『ツバメ号の伝書バト』

金探しという実務の仕事が目的であっても、ナンシイは物語を支配し、ゴールドラッシュごっこを実践する。

 

『ひみつの海』

ナンシイの支配力の及ばない「秘密の海」世界では、ナンシイの分身的な少女であるデイジーと意気投合し、本来のアマゾン海賊から現地のごっこ遊び「ウナギ族」になりきって、間接的に物語を支配する。

 

『スカラブ号の夏休み』

大おばさんの来訪という現実生活の危機を迎えて、ナンシイの構想力と支配力は、地元の海千山千の大人たちをもその物語世界の中に取り込む。大人たちの思惑を排除して、現実世界を完全に支配する。

 

『シロクマ号となぞの鳥』

スコットランド高地地方という一種の異国の地での、現実的な科学探検の現場でもナンシイの構想力と支配力は効力を発揮し、ゲール人という異国人でさえ物語世界に取り込んでしまう。

 

ナンシイの自発性と活動力

地方の地主のお嬢様でありながら、規範に従わず、自発的なキャンプ活動とごっこ遊びで大人から独立した生活を楽しむ。

大人顔負けの活動力で、湖水地方からイングランド南部、スコットランドでも現地の大人たちを巻き込んでごっこ遊びを展開する。

 

2)ハルヒの場合

SOS団の創造

構成員は、宇宙創造の女神?であるらしいハルヒ、一般人?のキョン、宇宙人の長門、未来人のみくる、超能力者の古泉。

 

ごっこ遊び(部活)によるSF世界の出現。

具体例

ハルヒは、自分の望むように世界を創造し直したらしい?

ハルヒは、願望実現力を持つらしい?

ハルヒは中学1年のとき、自分で考えた宇宙人へのメッセージ絵文字を中学のグラウンドに書いた(キョンに書かせた)が、その絵文字は宇宙人語で「私はここにいる」という意味になっていた。

宇宙人がハルヒを観測するために送り込んだのが、長門有希。人類の想像を超えた力を持つ。

未来人がハルヒを観測するために送り込んだエージェントが、みくる。

ハルヒが脳内で作り出す「閉鎖空間」が実体化してしまい、その中で暴れる巨人「神人」を倒すために超能力を与えられたのが、古泉。

ハルヒはSOS団を率いて、願望実現力で様々な騒動を巻き起こす。

例:大学生の強豪野球チームにSOS団が勝ってしまう。

孤島で起きた(偽の)殺人事件を解決してしまう。

ハルヒが夏休みにやり残したことがあるため時間がループして同じ時間が繰り返される。

SOS団が文化祭用映画を撮影する中で、神社の鳩が全部白い鳩になったり、秋なのに桜が咲いたりする。

 

ハルヒの自発性、無類の活動力

自分の理想とする活動ができる部活を探して全部の部活に仮入部する。結局、自分でSOS団という部を立ち上げる。この世の不思議を探して街を探索活動する。探偵のようなこともして、事件を解決する。など

 

(3)ハルヒとナンシイ、両者に共通する特徴

1)自ら創って活動する中での正義感の発露とモラル感覚。

ナンシイ:アマゾン海賊というごっこをやりながらも、現実の危機にあってはチームのリーダーとして活躍する。

ごっこの中ではわざと事件を演出するが、現実の事件や危機に際しては、正義感とモラリティを発揮する。

 

ハルヒ:SOS団というごっこ遊びをやり、宇宙創造能力や願望実現力を発揮できる立場にいながらも、高校生としてまともな正義感やモラルを守り、決して無軌道に暴走しない。

 

2)ごっこ遊びから現実の危機に巻き込まれかける、そのギリギリのところで踏みとどまるバランス感覚。

ナンシイ:アマゾン海賊というごっこ遊びをやる中で現実に危機に陥りそうになるが、あくまでも無事に実生活に戻れる範囲で冒険する。

 

ハルヒ:SOS団はこの世の不思議を探索する活動をするが、ハルヒは自分の宇宙創造力や願望実現力を無意識に使うとき、現実に異常事態が起きてみんなが困るようなことにならないよう、細心のバランスがとられている。

 

3)思春期にありながら、性的行動の自制。

ナンシイ:年齢的には思春期にありながら、ごっこ遊びを最優先し、性的にはまだ目覚めていない。(児童文学としての作者の過度な抑制の結果)

 

ハルヒ:性的に目覚めているらしく「身体を持て余す」と発言しながらも、恋愛を「病気」と認識して否定的にとらえている。

 

4)ナンシイとハルヒの目立った共通点

 

おてんばだが、実は育ちのいいお嬢さん。

 

見た目も派手で目立ち、実は美形。

 

トレードマークがある。ナンシイの赤い帽子、ハルヒのカチューシャ。

 

体力もありスポーツ万能。

 

上空から見てわかる信号、を発明して使う。

(ハルヒの「私はここにいる」、ナンシイの「行かない」)

 

物語中で、消失してしまう

(ハルヒの「消失」、ナンシイのおたふく風邪)

 

本当の危機にあったら、俄然理性的に、勇敢に活躍する

(ハルヒの孤島、ナンシイの山火事や大おばさんの遭難)

 

 

以上

 

 

※涼宮ハルヒもナンシイ・ブラケットも、どちらもおてんばだが実は育ちのいいお嬢さん、見た目も派手で目立ち、実は美形。

 

 

 

※「ツバメ号とアマゾン号」のシリーズは、何度も映像化されているが、日本では未公開。

 

※実は、筆者は昔、このシリーズをアニメ化したいと思って、あれこれ設定を考えたことがあります。日本のアニメ制作会社、どこか実現しませんか?