(報告)「小川国夫没後10年記念」読書会in生駒ビルヂング
(報告)「小川国夫没後10年記念」読書会in生駒ビルヂング
昨夜、「小川国夫没後10年記念」読書会in生駒ビルヂングにご参加くださったみなさま、感謝します。
この4月に没後10年をむかえた作家・小川国夫の小説を読む企画、課題に『あじさしの洲・骨王 小川国夫自選短篇集』より「ハシッシ・ギャング」を選びました。
最初、ひそかに危惧していたのは、小川国夫の小説のとっつきにくさ、です。しかし、さすが読み巧者の方々、私が気づかなかった細部の意味を教えてくださったり、考えつかなかった解釈も。
例えば、短編「ハシッシ・ギャング」の中の「ハシッシ」と言うのが、かつては麻薬の中でもかっこいいイメージであったこと、70年代のサイケデリック文化の時代、ハシッシといえばレゲエ・ミュージシャンと縁が深かったこと、など。また、「ハシッシ・ギャング」に出てくる滋賀県の地名がおそらく架空のものであること、その場所と思しきあたりに、本当に湖水に近い神社があり、知る人ぞ知る湖のビュースポットがあること、など。
また、カトリックに詳しい参加者からも、木南慈平、という登場人物の名前が、カトリックでは有名な人物名に似ていること、なども教えていただきました。
解釈では、「ハシッシ・ギャング」に出てくる木南さんは主人公の理想の友人をイメージした幻ではないか?という意見、この物語は全て主人公の夢ではないか?という意見も。
筆者の解釈としては、この「ハシッシ・ギャング」の幻聴と、「骨王」のゴ・ニクレの聴いた幻聴は、つながりがあるように思えます。古代の部族の王は幻聴を聞いて戦いに赴くのですが、現代人は幻聴を聞いてもただ墓場に集まってじっと耳をすまし、せいぜい、好きな女性を追いかけるぐらいしかないのだ、という対比を読みとりました。
亡くなって10年、だんだんと忘れられつつある小川国夫の文学ですが、昨夜のささやかな読書会で、少しは愛読者を増やすことが出来たかもしれません。不肖の弟子・土居豊が拙いながらも読書会を開いているのを、師匠・小川国夫が、天国でニヤリとして眺めているような気がしました。
ついでながら、
土居豊が小川国夫の思い出をエッセイに書いた記事が、明日4月21日の毎日新聞夕刊(関西版)に掲載されます。
さて、
生駒ビル読書会、次回は、
カズオ・イシグロ
『夜想曲集』
を読みます。
5月23日(水)19時〜
※詳細はこちらにも告知します
https://m.facebook.com/ikomabld.reading.circle/?ref=bookmarks
※会場の生駒ビルヂングの屋根と、夕空の三日月。