今日は恩師・小川国夫の命日 | 作家・土居豊の批評 その他の文章

今日は恩師・小川国夫の命日

今日は恩師・小川国夫の命日

4月8日は、わが恩師である故・小川国夫の命日です。
2008年に亡くなって、はや8年になります。
小川国夫の小説は、玄人好みで一般の読者にはとっつきにくいとよくいわれます。
ですが、もし書店でみかけたら、ぜひ手にとってみてほしいと思います。特に、数多く刊行されている小川国夫のエッセイ集は、小川節というべきユーモア溢れる文章が、読む人を惹きつけてやみません。
晩年の小川国夫は、「小川漫画」と自ら名付けたコミカルで味わい深いイラストが挿入され、老境の作家の巧まざる笑いを醸し出しています。

※『随筆集 夕波帖』小川国夫
http://www.amazon.co.jp/dp/4901998196/ref=la_B001I7H6E2_1_24?s=books&ie=UTF8&qid=1460075783&sr=1-24

けれど、もし小川国夫の本領を読みたいと思うのなら、やはり小説をおすすめします。小川文学の生涯の歩みというべき小説の数々は、いまは大多数が絶版ですが、その片鱗を、文庫本でも体験することができます。
小川国夫の小説でいまも有名なのは、実質的なデビュー作品集である『アポロンの島』でしょう。この作品集は、自費出版で出したものの全く売れなかったのに、かねて小川が主宰していた同人誌「青銅」に注目していた島尾敏雄が、この短編集を注文し、朝日新聞で激賞したことで、一躍世間に知られたのです。
けれど、個人的には、小川文学の入門編として、新聞連載の長編『悲しみの港』をおすすめします。この恋愛小説には、小川国夫の小説に頻出する諸要素、たとえば漂泊への憧れや、捨て鉢な恋心、世間から隠れ棲む文士の心境、慌ただしい日常から離れた悠々自適の思い、切羽詰まった恋の激情、など、多彩な魅力がバランス良く配置されています。新聞連載だけあって、文体も他の小川作品よりよほどやさしく書かれていて、いまの若い人にも読みやすい小説だと思います。
とっつきにくいと敬遠せず、ぜひ『悲しみの港』を手にとってみてください。

※『悲しみの港』小川国夫(電子書籍版)
http://www.amazon.co.jp/電子書籍-P-D-BOOKS%E3%80%80悲しみの港(上)-小川国夫-ebook/dp/B01DNBMBP4/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1460076446&sr=1-1


もう一つ、小川文学上級編としては、文庫で入手可能な短編集『あじさしの洲 骨王』をおすすめします。特に、短編「ハシッシ・ギャング」は小川国夫がまだ気力、体力とも衰えていなかった老年期に書いた充実の短編です。

※『あじさしの洲 骨王』小川国夫
http://www.amazon.co.jp/あじさしの洲-骨王-講談社文芸文庫-小川国夫-ebook/dp/B00JEWCRD8/ref=pd_sim_sbs_351_1?ie=UTF8&dpID=415fx9dUfIL&dpSrc=sims&preST=_AC_UL160_SR111%2C160_&refRID=1W91YBFRZXAHPKMS3ZGY


本作は、没後、インディーズ映画にもなっています。この映画については、筆者も大阪での上映会の際、トークイベントに出演し、最後の弟子の一人として小川国夫の思い出を語りました。


http://movie.walkerplus.com/mv46643/


それにしても、常々思うのですが、「小川国夫全集」(小沢書店)を、どこか大手の版元の手で再刊してほしいです。小沢書店の廃業によって、せっかくの小川全集が絶版となり、いまや入手困難なのは、実に残念でなりません。
2018年は没後10年ですので、小川国夫の文学について、弟子の一人としてきちんと文章を残したいと考えています。


※藤枝市観光ガイドHP 小川国夫を記念する藤枝市文学館
http://www.fujieda.gr.jp/contents/NOD97/428744.html

※小川国夫についての近年の報道より
【幻の宗教劇台本発見 「信仰と文学」の原点 静岡・藤枝の教会で51年上演】
(毎日新聞2015年11月13日 東京夕刊)
http://mainichi.jp/articles/20151113/dde/041/040/061000c


※松本隆の小川国夫についての発言より
(引用)
http://www.j-wave.co.jp/original/worldaircurrent/lounge/back/030705/
《すごく昔から“カナリア諸島”という地名だけは知っていたんですよ。「どんな所だろう?」とずっと気にはなっていたんだけど。高校生の頃かな、小川国夫という小説家の方がいて。その人の小説がすごい好きだったんですけど。その作品の中に「カナリア諸島にいたんだ」という台詞があって、「カナリア諸島いいなー」とずっと気にはなってて》

※土居豊の小川国夫関連記事

http://ameblo.jp/takashihara/entry-12011921413.html

http://ameblo.jp/takashihara/entry-11816772301.html

http://ameblo.jp/takashihara/entry-11507605937.html

http://ameblo.jp/takashihara/entry-10855093074.html

※大阪・シネヌーヴォでの小川国夫原作映画『デルタ』上映&トークイベント報告
http://ameblo.jp/takashihara/entry-10744125843.html

※小川国夫最晩年、藤枝市文学館開館記念の席上にて



※小川国夫を記念した藤枝市文学館の文学碑



※小川国夫がよく面会に使った藤枝駅前の喫茶店



※土居豊のデビュー小説『トリオ・ソナタ』刊行記念会での小川国夫(となりは土居豊)





※土居豊『トリオソナタ』

http://www.amazon.co.jp/dp/B00AV76A5G/ref=la_B00491B5TQ_1_4?s=books&ie=UTF8&qid=1415499135&sr=1-4

2013年に、デビュー作『トリオ・ソナタ』(改訂版)を大幅改稿して、小説『トリオソナタ』としてKindleストアから刊行しました。

グッドタイム出版からPODの紙書籍版でも刊行されています。内容はKindle版と同じですが、やはり紙の本で読みたい、という方にぜひ!

土居豊『トリオソナタ』(AmazonPOD版 グッドタイム出版刊)
http://www.amazon.co.jp/トリオソナタ-土居-豊/dp/4906883923/ref=la_B00491B5TQ_1_12?s=books&ie=UTF8&qid=1415499135&sr=1-12


※土居豊のAmazon著者ページ
http://www.amazon.co.jp/-/e/B00491B5TQ