大阪も、歴史的建造物の保存を進めてほしい(その1) | 作家・土居豊の批評 その他の文章

大阪も、歴史的建造物の保存を進めてほしい(その1)

大阪も、歴史的建造物の保存を進めてほしい
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今朝のニュースで、アニメ『けいおん!』の舞台とされる豊郷小学校校舎が有形文化財として保護されることになったということが報じられた。


「けいおん!」の旧豊郷小学校も文化財答申(2012年9月22日09時12分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20120921-OYT1T01111.htm

これは、もちろん、アニメの舞台だから保存されるのではなく、この建物が、かのヴォーリズ建築の代表作の一つであり、地元の長年の保存運動が実った成果であろう。
かたや、大阪では、ここ数年、片っ端から、歴史的建造物が破壊されてきている。
その代表例が、モダニズム建築の傑作とされる、大阪駅前の中央郵便局跡である。


作家・文芸レクチャラー土居豊ブログ「震災後の文学・芸術」


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この建物は、大空襲を奇跡的に生き延びて残った、貴重な近代建築である。
その建物は、保存運動があったにも関わらず、あっけなく破壊されている。
思うに、大阪駅の再開発は、
現状のような高層ビルばかりではなく、せっかく駅前にあった近代建築の傑作を、商業利用の形で、あるいは芸術文化の拠点のような形で、うまく活かすことを考えるべきだった。
今のような、いわば味気ない現代建築ばかりになってしまっては、これは大阪のキタそのものが、ただの東京のコピーに成り下がってしまっている。


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おりしも、近代大阪の象徴的建築の一つである、阪急百貨店も、重厚な本店が取り壊され、あじけない高層ビルに成り果ててしまった。
松田優作の遺作となったハリウッド映画『ブラックレイン』にも美しく描かれた阪急のコンコースも、あっけなく壊されてしまった。


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どうしてこう、日本人は、自分たちの近代以来の建築的美学を、自ら信じないで、自分で破壊するようなことばかりするのだろう?
そんなことだから、いつまでも、日本の都市は、明治以来百年を経ても、成熟した街にならず、美しくないのだと思う。
大阪市だって、せっかくの「大大阪」の近代建築の遺産を、壊して、味も素っ気もない現代ビルに作り替えるだけではなく、いまからでも、生き残った建築を保存する努力をしてほしい。
ヴォーリス建築だけでなく、美しい近代建築はまだ市内に残っているのだから。
いっそ、大阪市内の近代建築を、アニメの舞台に使ってもらって、それが大ヒットしたら、保存してくれるかも?などと、本末転倒のことまで訴えたくなる。
(この稿、続く)