【橋下市長、捏造リスト公表「何の問題もない」】って、大いに問題があるでしょう? | 作家・土居豊の批評 その他の文章

【橋下市長、捏造リスト公表「何の問題もない」】って、大いに問題があるでしょう?

【橋下市長、捏造リスト公表「何の問題もない」】って、大いに問題があるでしょう?

【橋下市長、捏造リスト公表「何の問題もない」(2012年3月27日読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20120327-OYT1T00537.htm?from=main4

大阪市交通局の嘱託職員(31)が、昨秋の市長選を巡り、前市長への支援を求める職員労組名義の職員リストを捏造していた問題で、橋下徹市長は27日、「客観的な証拠から、内部告発者が捏造した高い蓋然性が認められる」と述べ、この嘱託職員が大阪維新の会(代表・橋下市長)市議団に内部告発したとの見方を示した。
 市役所で報道陣の取材に答えた。橋下市長は、事実経緯などから嘱託職員と内部告発者が一致している疑いが強いと維新市議団から報告されたことを明らかにし、「維新は内部告発者と職員が同一だと見ている」と語った。
 維新が捏造されたリストを市議会で公表したことについては、「捜査機関と同じだけの容疑を裏付けてからじゃないと質問もできないなら、役所の追及はできない。維新の指摘で市が調査し、組合のぬれぎぬを晴らした。何の問題もない」と述べ、擁護した。
 問題の嘱託職員はこの日も同市西区の交通局本庁舎に普段通りに出勤。同局の担当者が前日に引き続き、動機面などについて事情聴取を行っている。】



なるほど、さすが弁護士だけあって、「ああいえば~~」という印象だ。
大阪維新の会の市議が、市職員のねつ造した証拠をつかまされ?偽造資料をもとに組合攻撃をした、という事件のはずが、橋下市長の認識によると、「維新の指摘で市が調査し、組合のぬれぎぬを晴らした。何の問題もない」ということになってしまう。
まるで、組合のために選挙協力のぬれぎぬを晴らしてあげたのだ、とでもいいたそうな表現である。
しかし、そもそも、組合の前市長への選挙協力を徹底的に暴いて、組合潰しに熱中しているのは、市長自身である。
これがもし、偽造でなかったのなら、それこそ鬼のクビをとったように、組合の悪事の動かぬ証拠として振りかざしたことだろう。事実、この偽造資料は、見つかった当初は、そういう扱いで報道されていた。
ともあれ、今回の事件で、世間が維新の会、ひいては橋下市長をどう評するか、によって、橋下市長と維新の会が、本当に国政に打って出て、勝ち目があるかどうか、がわかるだろう。
なぜなら、かつて、民主党の偽メール事件の場合、当時の党代表のクビが飛んだのだ。
今回の偽造資料も、民主党の偽メールと、事例としてはほとんど同じようなものだ。
だから、本来なら、橋下市長は、自身の率いる維新の会の市議が偽造資料をもとに組合攻撃をしたことの責任をとらなければならないはずだ。
ところが、市議の責任を問うどころか、逆に擁護し、資料を偽造したとされる嘱託職員の方を断罪しようとしている。
普通に考えれば、書類偽造はこの嘱託職員の単独犯行?だと考えるより、何らかの背景がある、と考える方が妥当だろう。
おまけに、真実がわかったのは維新の会の手柄だ、というような、クロをシロと言いくるめるような言い方で、責任回避をはかっている。
もし、この言動が世間で、これ以上追及されず、なんとなくスルーされておしまいになるようなら、これはもう、今後、世間は橋下市長がたとえどんな悪辣な方法で権力を奪取しようとしても、橋下さんだから、という感じで許してしまうだろう。
それだけ世間から愛される指導者であれば、どんなに条理に合わないことでも、勢いでやってしまうだろうし、まさしく歴史と伝統の破壊者として、某国の某指導者もかくや、という感じで最高権力を手中にしていくかもしれない。
おそらく、後世の歴史家は、日本の21世紀を研究するとき、この偽造事件を大きくピックアップすることになるだろう、と思う。

ちなみに、橋下市長のお膝元の大阪では、すでに、教育改革が進行しつつある。
大阪の未来を担う子どもたちは、このままでは、維新の会の少年団、のような教育を施されていきかねない。
すでに、下記参考記事にあるように、大阪の教育は滅びつつあり、大阪で教師になろうという有為な人材は、減る傾向にある。理念的に維新の会を賛美できない限り、大阪で教育を志すのは辛いことになるだろう。
一番悲惨なのは、維新の会の偏った理念を教育目標に掲げる学校で、義務教育から高校まで教育を受けざるを得なくなるかもしれない、今の大阪の子どもたちだ。
私自身、大阪府民だが、教育に政治が、それも歴史と伝統を軽んじる政治家が権力をかさにきて介入するようなところで、子育てをしたくない。
もしこのまま、大阪維新の会が教育改革を押し進めるのなら、子育てのために他府県に移住せざるをえない、ということになりつつある。


※参考

大阪府の教育・職員基本条例が成立 運用巡り議論も (2012年3月24日日経新聞)
http://www.nikkei.com/news/local/article/g=96958A9C93819A91E0E1E2E0808DE0E1E2E1E0E2E3E09391EAE2E2E2;n=9694E3E4E3E0E0E2E2EBE0E0E4E5



「大阪の先生になりません」相次ぐ辞退 条例案の影響?(朝日新聞2012年2月9日)
http://www.asahi.com/national/update/0209/OSK201202090089.html



上記記事に対する橋下氏の反論ツィート(2月12日)

橋下徹 ‏ @t_ishin
それと大阪府の教員合格者の辞退者が例年よりも増えたらしい。僕の教育改革によって辞退者が増えたのだろうと言うメディアの表題。でも例年でも10%程度の辞退者がいる。今回増えたのは2~3%。僕のせいだと言われればそれまでだけど、裏を返せば、たった2~3%増えただけ。

橋下徹 ‏ @t_ishin
つまり、あれだけ自称インテリやメディア、教育評論家、学者にコメンテーターにぼろくそ言われた教育基本条例だけど、教員志望者は皆分かってくれている。府市統合本部で決定する前は、教員を相対評価する案となっていた。そして2回D評価で免職対象。それでも、若い教員志望者は大阪に来てくれた。