3.11の首相式辞と、記者会見コメントへの違和感
3.11の首相式辞と、記者会見コメントへの違和感
3.11から1年目の昨日、全国各地で追悼行事があったが、気になったのは、東京で行われた政府の追悼行事での、首相の式辞と、その後の記者会見でのコメントの乖離ぶりだ。
下記参考記事のように、式辞では、首相は、実に当たり障りのない言葉で、無難なことを述べていた。もちろん、官僚の作文だろうから、その是非は置く。
問題なのは、首相が自身の言葉で語った記者会見コメントだ。
そもそも、式辞では、
「原発事故との戦いは続いています。福島を必ずや再生させ、美しいふるさとを取り戻すために全力を尽くします。」
と、当たり障りのない言い方をしていたが、これは、「原発事故」がまだ「収束」しておらず、「事故との戦い」が続いていることをいみじくも明言したことになる。
それなら、昨年末の「事故収束」宣言は、一体何だったのか？と問いたくなる。
この式辞の前に、「原発事故収束」宣言を撤回するのが先ではなかったろうか。
また、記者会見では、式辞の言葉の意味が、実は文字通りの意味とはいささか違うようにみえる。
「福島の再生は国の責務で、必ず成し遂げなくてはならない。周辺住民が帰還し、穏やかな暮らしを取り戻すまで原発事故との闘いは終わらない。」
と、コメントしたとのことで、これは、
「福島を必ずや再生させ、美しいふるさとを取り戻す」
という式辞での言葉が、「周辺住民が帰還」することを意味していると解釈できる。
問題なのは、住民が帰還することが目的なのか、住民が帰還できるように土地を再生するのが目的なのか、である。
これは、ささいな違いのようで、実は大問題なのだ。
つまり、政府の目的が、「住民の帰還」であれば、現地の放射能汚染がどうあれ、ともかく住民を帰らせることを優先する、ということになる。その証拠に、前は、「除染が済んでから帰還」だった方針が、いつの間にやら、「帰還して除染」と、順番が変わっている。
住民が帰還して、汚染された土地を自ら除染しているのを、「美しいふるさとを取り戻す」姿だと解釈しているのであれば、とんでもない間違いである。
ものの順序として、政府と東電が汚染した土地は、政府と東電の手で汚染を取り除くことが先だろう。もしそれが困難だというなら、住民の帰還よりも、なによりも先に、今現在の、そして将来の避難住民の生活を全面的に保証することが、最優先事項ではないか。
また、
原発再稼働については、
「地元の理解が得られているかなどを政治が判断する。安全委の確認が終わった段階で、私を含め、枝野幸男経済産業相、藤村修官房長官、細野豪志原発事故担当相の４人で集まり、安全性などを議論し、地元に説明に入る段取りだ。理解を得るためには私が先頭に立たなければならない。」
とコメントしている。
これは、ようするに、原発再稼働に向けて、首相自ら地元を説得する、ということだ。
原発事故で深刻な放射能汚染を受けた土地をどうするか、逃げざるをえなくなった住民の生活の保証をどうするか、という問題が全く解決していない現状で、どんな説得を原発立地の地元にするというのだろう？
けれど、
この説得なるものは、
今夏の電力需給についての質問で回答した、
「原発の再稼働がなく、２０１０年夏並みのピークとなれば約１割の需給ギャップが生じる。供給力の積み増しや省エネ促進などの施策を総動員し、最大限の努力をする。」
という答えに、如実に現れている。
ようするに、
電力が足りないから、原発を動かす、という、ただそれだけのことなのだ。
そこには、今回の原発事故への反省も、今後確実に起こる更なる地震や津波、天変地異による原発事故への有効な対策も、なにもありはしない。
こんな短絡的なやり方、考え方で、ひたすら突き進むというのなら、一体、3.11で犠牲になった多くの国民は、なんだったのか。
同じことを同じように続けるなら、また同じ悲劇が繰り返されるのは、自明だというのに。
ついでにいうと、昨日、3.11追悼式典や記者会見で、多くの政治家が、しおらしい顔で、もっともらしいことを話していたが、その舌の根も乾かないうちに、翌日の今日、国会中継をみていると、さっそく審議がストップしているていたらくだ。
この国の政治家は、まったくなにをやっているのだか。
もっとも、だからといって、既成政党がどれも頼りないから、大阪維新の会に国政をまかせよう、という気にもならないのだ。なにしろ、こちらは、既成政党以上に危なっかしいからだ。
国が滅びに向かうときというのは、まさにこういうもどかしい状況なのだろうか？と、思わず昭和初期の日本や、ワイマール共和国のことを思ってしまう。
※参考
3.11の追悼式典での首相式辞（時事2012.3.11）
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2012031100096
野田首相の記者会見要旨（時事2012.3.11）
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2012031100263
3.11から1年目の昨日、全国各地で追悼行事があったが、気になったのは、東京で行われた政府の追悼行事での、首相の式辞と、その後の記者会見でのコメントの乖離ぶりだ。
下記参考記事のように、式辞では、首相は、実に当たり障りのない言葉で、無難なことを述べていた。もちろん、官僚の作文だろうから、その是非は置く。
問題なのは、首相が自身の言葉で語った記者会見コメントだ。
そもそも、式辞では、
「原発事故との戦いは続いています。福島を必ずや再生させ、美しいふるさとを取り戻すために全力を尽くします。」
と、当たり障りのない言い方をしていたが、これは、「原発事故」がまだ「収束」しておらず、「事故との戦い」が続いていることをいみじくも明言したことになる。
それなら、昨年末の「事故収束」宣言は、一体何だったのか？と問いたくなる。
この式辞の前に、「原発事故収束」宣言を撤回するのが先ではなかったろうか。
また、記者会見では、式辞の言葉の意味が、実は文字通りの意味とはいささか違うようにみえる。
「福島の再生は国の責務で、必ず成し遂げなくてはならない。周辺住民が帰還し、穏やかな暮らしを取り戻すまで原発事故との闘いは終わらない。」
と、コメントしたとのことで、これは、
「福島を必ずや再生させ、美しいふるさとを取り戻す」
という式辞での言葉が、「周辺住民が帰還」することを意味していると解釈できる。
問題なのは、住民が帰還することが目的なのか、住民が帰還できるように土地を再生するのが目的なのか、である。
これは、ささいな違いのようで、実は大問題なのだ。
つまり、政府の目的が、「住民の帰還」であれば、現地の放射能汚染がどうあれ、ともかく住民を帰らせることを優先する、ということになる。その証拠に、前は、「除染が済んでから帰還」だった方針が、いつの間にやら、「帰還して除染」と、順番が変わっている。
住民が帰還して、汚染された土地を自ら除染しているのを、「美しいふるさとを取り戻す」姿だと解釈しているのであれば、とんでもない間違いである。
ものの順序として、政府と東電が汚染した土地は、政府と東電の手で汚染を取り除くことが先だろう。もしそれが困難だというなら、住民の帰還よりも、なによりも先に、今現在の、そして将来の避難住民の生活を全面的に保証することが、最優先事項ではないか。
また、
原発再稼働については、
「地元の理解が得られているかなどを政治が判断する。安全委の確認が終わった段階で、私を含め、枝野幸男経済産業相、藤村修官房長官、細野豪志原発事故担当相の４人で集まり、安全性などを議論し、地元に説明に入る段取りだ。理解を得るためには私が先頭に立たなければならない。」
とコメントしている。
これは、ようするに、原発再稼働に向けて、首相自ら地元を説得する、ということだ。
原発事故で深刻な放射能汚染を受けた土地をどうするか、逃げざるをえなくなった住民の生活の保証をどうするか、という問題が全く解決していない現状で、どんな説得を原発立地の地元にするというのだろう？
けれど、
この説得なるものは、
今夏の電力需給についての質問で回答した、
「原発の再稼働がなく、２０１０年夏並みのピークとなれば約１割の需給ギャップが生じる。供給力の積み増しや省エネ促進などの施策を総動員し、最大限の努力をする。」
という答えに、如実に現れている。
ようするに、
電力が足りないから、原発を動かす、という、ただそれだけのことなのだ。
そこには、今回の原発事故への反省も、今後確実に起こる更なる地震や津波、天変地異による原発事故への有効な対策も、なにもありはしない。
こんな短絡的なやり方、考え方で、ひたすら突き進むというのなら、一体、3.11で犠牲になった多くの国民は、なんだったのか。
同じことを同じように続けるなら、また同じ悲劇が繰り返されるのは、自明だというのに。
ついでにいうと、昨日、3.11追悼式典や記者会見で、多くの政治家が、しおらしい顔で、もっともらしいことを話していたが、その舌の根も乾かないうちに、翌日の今日、国会中継をみていると、さっそく審議がストップしているていたらくだ。
この国の政治家は、まったくなにをやっているのだか。
もっとも、だからといって、既成政党がどれも頼りないから、大阪維新の会に国政をまかせよう、という気にもならないのだ。なにしろ、こちらは、既成政党以上に危なっかしいからだ。
国が滅びに向かうときというのは、まさにこういうもどかしい状況なのだろうか？と、思わず昭和初期の日本や、ワイマール共和国のことを思ってしまう。
※参考
3.11の追悼式典での首相式辞（時事2012.3.11）
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2012031100096
野田首相の記者会見要旨（時事2012.3.11）
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2012031100263