吹奏楽日本一の大阪が、貴重なプロ吹奏楽団を潰すとは! | 作家・土居豊の批評 その他の文章

吹奏楽日本一の大阪が、貴重なプロ吹奏楽団を潰すとは!

吹奏楽日本一の大阪が、貴重なプロ吹奏楽団を潰すとは!

【橋下市長、音楽団解散を示唆…財源は習い事券に
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20120120-OYT1T00297.htm
大阪市の橋下徹市長は19日、市役所で報道陣に対し、交響吹奏楽団「大阪市音楽団」の存廃について、「一から考える。存続の結論ありきでは考えない」と述べ、解散を検討することを明らかにした。同楽団は1923年に創設され、園児や児童向けの鑑賞会、中学高校での吹奏楽の指導などを行っている。市は運営費の約9割に当たる約4億3000万円(2010年度)を負担している。橋下市長は同日の市議会決算特別委員会で「(行政が)音楽団を抱える必要はない」と述べ、助成を打ち切る意向を表明。代わりに、浮いた財源などを原資に、子どもが学習塾代や習い事などに使えるクーポン券の支給制度を新設する考えを示した。(2012年1月20日10時54分 読売新聞)】

吹奏楽日本一の大阪が、貴重なプロ吹奏楽団を潰すとは!
大阪市長は、音楽に疎いのかもしれないが、大阪市の音楽団は、吹奏楽の世界では、非常にユニークかつ重要な存在である。日本にはプロの吹奏楽団というのは数えるほどしかないが、その中で、東京佼成ウィンドオーケストラやシエナウィンドオーケストラと並んで、稀有な楽団である。
その一つのあらわれとして、世界で活躍中の吹奏楽作曲家の新作を、初演してきた。

ヴァンデルロースト-交響詩「スパルタクス」-大阪市音楽団
http://www.amazon.co.jp/dp/B00006LF5I

スパーク-宇宙の音楽-世界初演ライヴ-大阪市音楽団
http://www.amazon.co.jp/dp/B000BKTDPM

日本が世界に冠たる吹奏楽大国だというのが、最近、ようやく知名度が上がってきた。特に昨年、3.11で被害を受けた東北の高校の吹奏楽部が、全日本吹奏楽コンクールで活躍をみせた話題などで、吹奏楽コンクールが野球の甲子園に匹敵する青春の大きなイベントであることも、全国に知られるようになった。
知る人ぞ知る、大阪の吹奏楽は、全国一である。吹奏楽コンクールの常勝高である大阪府立淀川工科高校の吹奏楽部は、指導者の丸谷先生の魅力も相まって、何度もテレビで紹介されてきた。
大阪の誇る吹奏楽の伝統を、大阪市自ら破壊するというのは、全く理解しがたい。
吹奏楽などの音楽文化というのは、一朝一夕に出来上がるものではない。日本が吹奏楽大国になり、子どもたちが音楽に身近に接することができるようになったのは、戦後の音楽教育、吹奏楽演奏の歴史の上に築かれてきた貴重な伝統なのである。
子どもたちの吹奏楽活動の目標として、日本の誇るプロ楽団があるのは、いうまでもない。
いいお手本があって、はじめて子どもたちは、いい演奏を目指してがんばるのである。
世界で活躍する売れっ子作曲家の新曲を、大阪市音楽団が初演できるのも、日本で一番古いプロ吹奏楽団という伝統と実力があってのことなのだ。
残念ながら、吹奏楽団というものは、オーケストラ以上に、独立採算が難しい。
それでも、吹奏楽団が、日本中の音楽好きの子どもたちや、吹奏楽ファンに愛されていることは、間違いのないところだ。
行政の文化政策は、音楽文化を切り捨てるのではなく、さらに育成していくことにお金を使ってほしいと思う。