負け惜しみですが「村上春樹ノーベル文学賞受賞時の予定コメント」アップします。 | 作家・土居豊の批評 その他の文章

負け惜しみですが「村上春樹ノーベル文学賞受賞時の予定コメント」アップします。

負け惜しみですが「村上春樹ノーベル文学賞受賞時の予定コメント」アップします。

関西の新聞社数社に取材されましたが、おおむね以下のようなコメントを預けました。
もし昨日、村上氏が受賞していたら、今朝の新聞にコメントが載るはずだったのです。
残念!

「村上春樹のノーベル文学賞受賞について(予定)
村上春樹はとるべくして受賞した。すでに日本人は小澤征爾が音楽で世界の頂点にたっている。遅れること数十年、やっと文学でも世界の頂点を極めたといえる。
わかりやすくいうと、世界中どこのCDショップにもセイジ・オザワのCDがあるように、いまや、世界中どこの書店にもハルキ・ムラカミの本がある。オザワがなぜ世界中で聴かれているかというと、もちろん演奏のすばらしさは折り紙付きだが、なによりオザワの指揮が、難解に思われがちなクラシック音楽の間口を広げたからである。
同じように、ハルキの小説は、深遠なテーマをわかりやすく噛みくだいて、誰でも読めるよう間口を広げたところに、世界で愛読される理由があるのだ。
つけくわえると、日本の小説家で、特に阪神間文化が育てた作家は、欧米で読まれやすいという特徴がある。古くは谷崎、川端、井上靖がいる。村上春樹もまた、阪神間が育てた作家の一人であり、その小説は、文体にも描写にも、阪神間独特のスタイリッシュな空気感が漂っている。
阪神間モダニズムの文化から、戦前にはすでに貴志康一、大澤寿人という作曲家/指揮者が、ベルリンやパリで活躍していた。戦後は、朝比奈隆から最近の佐渡裕まで、関西の音楽家が欧米で第一線の演奏を繰り広げている。近代日本で唯一、本当のブルジョワ文化が華ひらいた阪神間文化の、最後の生き残りといえる村上春樹が、文学の世界で国際的な第一人者となったのは、その背景を考えると、むしろ当然のことに思えるのだ。(作家・文芸レクチャラー 土居豊 談)」

※参考:村上春樹による小澤征爾インタビュー
モンキービジネス2011Spring vol13 ポール・オースター号
http://www.amazon.co.jp/dp/4863323182

※写真は、村上春樹の育った阪神間の風景
作家・文芸レクチャラー土居豊ブログ「震災後の文学・芸術」
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