<福島第1原発>循環注水再び一時停止 | 作家・土居豊の批評 その他の文章

<福島第1原発>循環注水再び一時停止

日本の誇る科学技術、このギャップはなに?

【<福島第1原発>循環注水再び一時停止 弁の工事原因か(毎日2011年7月1日)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110701ddm002040086000c.html

東京電力は30日、福島第1原発の循環注水冷却のシステムが一時停止したと発表した。汚染水の浄化装置で排気管の逆流防止弁の取り付け工事が原因とみられる。27日に浄化した処理水を原子炉に注入し始めてから、ポンプやタンク、ホースからの水漏れなどで運転が止まるのは6回目で、不安定な運用が続いている。
東電によると、29日午後9時に運転を再開したが、30日午後2時36分に再びシステムが止まった。同6時50分に試運転を開始し、異常がみられなかったため、同7時40分に本格再開した。
また3号機の使用済み核燃料プールの安定冷却のため、循環式冷却装置が同日稼働し始めた。】



それにしても、もはやこの循環ポンプ、だれも期待していないのでは?
だいたい、パイプの継ぎ目がはずれて水がもれたっていうのは、技術とかいう以前の問題ではないかと感じるのです。
原子力発電の技術力、という前に、基本的な工事のクオリティの問題だと思います。
もちろん、放射線量が高くて、過酷な作業環境だということは、頭では理解しています。しかし、あまりにもおそまつな話だと感じてしまうのは、高度な日本の技術、というこれまでのイメージが、がらがらと崩されてしまったからではないでしょうか。
しかし、その一方で、以下のように、日本には高度な技術が存在することも確かなのです。


【あかつき、4年後に金星再挑戦 宇宙機構が報告(朝日2011年7月1日)
http://www.asahi.com/science/update/0701/TKY201107010001.html
宇宙航空研究開発機構は2015年11月、探査機「あかつき」の金星軌道投入に再挑戦する。30日、文部科学省宇宙開発委員会の調査部会に報告した。
宇宙機構は昨年12月にもあかつきの軌道投入を試みたが、配管の弁が詰まって燃料が十分に噴射せず、異常な高温になってエンジンが破損、失敗した。
エンジンは7割程度の出力で稼働できる可能性があり、今年9月に試験して調べる。致命的な破損なら、出力の小さい別のエンジンを使うことになるが、この場合は予定の軌道に乗せることは難しくなるという。】


この両者のギャップはなんでしょう?
一方の原発事故の終息は、もはや誰もうまくいくとは期待していないような惨状を見せています。
一方で、あかつきという小さな宇宙船が、金星の軌道にのれるかどうか、過酷な状況の中で再挑戦する姿は、あのはやぶさの勇姿と重なり、思わず喝采を送りたくなります。
また、下世話な話ですが、あかつきの開発と打ち上げの予算は約250億円だそうです。
一方、原発関連の予算は年に4500億円、今回の福島原発事故対応について、二次補正では2500億円が計上されました。さらに、原発事故終息までいったいどのくらいの費用がかかるのか、見当もつきません。
この両者の間に、ゼロ一つ違う予算の差があることを考えると、一体原子力発電とは何なのか、疑問を抱かざるをえません。
片や少ない予算、少ない陣容で宇宙にチャレンジする技術力と、一方では厖大な予算と人員、国家的バックアップを受けながら、パイプ一つつなげない原発の現状。
このギャップを、だれか説明してくれるとうれしいです。
ともあれ、どちらも日本の技術の粋をこらしたものであるなら、両方、成功を祈ります。
もちろん、あかつきには悪いですが、原発事故の終息の方を第一に願います!