2025年11月16日(日)17時開演 ミューザ川崎

ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団来日公演 

 

R・シュトラウス/交響詩「ドンファン」

マーラー/交響曲第5番

クラウス・マケラ指揮

ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

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 前日、ウィーン・フィルの演奏会に行き、来週土曜日は「ヴォツェック」を観劇し、ノットさんのマーラー第9番を聴き、日曜日はベルリン・フィルの演奏会に行きます。

 この日はコンセルトヘボウでした。本当に贅沢な時間です。

 

 円がとても弱くなり、近い将来これらのオーケストラが来日してくれなくなるかもしれません。毎回言いますが、近年これらのビッグオーケストラが来日する際、中国人、韓国人、台湾人の音楽ファンが聴きに来られます。

 この日も開演前、2階会場で中国語で大きな声を張り上げる「下品な客」がいました。

 

 いつか仕事をリタイヤする年齢になり、海外公演に贅沢三昧(冗談です。普通で十分です)で行けるよう今後も投資は続け、「小金(こがね)」をしっかり貯えたいと思います。

 

 マケラは今年二回目の来日ですね。パリ管弦楽団と来ましたね。ひっぱりだこの指揮者ですが、よく日本に二回も来れたと感心します。

 29歳にしてこの状況に驚きます。

 2年後はシカゴ交響楽団の音楽監督です。米国最高峰のオーケストラということは「機能的」には世界一のオーケストラです。もう頂点です。

 古いですが「のだめカンタービレ」の千秋真一どころの話ではないです。

 

 コンセルトヘボウは2年ぶりです。来日機会の多い故マリス・ヤンソンス氏のおかげで頻繁にこの素晴らしいオーケストラの音を聴き続けることができました。

 今後も来日を続けて欲しいオーケストラの一つです。

 しかし、チケット確保には大変に苦労しました。

 

 今回の演目2つはオーケストラ機能を評価するのも打ってつけの曲です。

 音出しのむずかしさ、ハーモニーのむずかしさの両方です。

 マーラーの5番は昨年ネルソンスがウィーン・フィルで演奏しましたが、ゆったりとしたテンポのせいか後半になり結構音をはずしていました。

 やられるときに痛い目にあう曲です。

 

  2曲とも共通したのが爽快に仕上げられていたことです。

 マーラーでは健康的に構成されていました。癖がなくスムーズな音にできていました。オーケストラの音の良さをきちんと引き立てていました。

  マーラーの音楽は病的なものが多く、このあたりの部分を出す方が良いとおっしゃる方もおいででしょうけど、第5番については、一気呵成に進めても問題ない曲のように思います。マケラの解釈はマーラー指揮者ではないですがデュトワの解釈に似たまっすぐな音楽作りのように感じます。

 

 オーケストラについて弦はビロードのような音と言われることがありますが、このオーケストラがまさにそのビロードの音です。ヤンソンスが指揮すると、中庸な音を出させ、微妙な音のつながりと間合いを大事にしていましたが、マケラは抑制せず、弁を開放させました。

 

 印象としては徹底して健やかな音を展開していました。特筆されるのがコンマスのヴェスコ・エシュケナージさんのヴァイオリンの音色とホルンの首席ケイティ・ウーリーさんです。

 エシュケナージさんはN響の特別コンサートマスターもつとめてくれましたが、柔らかく艶やかな音色を出していました。他のヴァイオリンもこの音で合わさっているわけですから本当に美しいものでした。前日ウィーン・フィルの弦も聴いたところですが、ねっとり感の弦ではなく、相変わらず美しさを追求したすきっとした苦みのあるマンデリン(コーヒー)のような弦ですね。

 

 一方、ウーリーさんのホルンは攻撃的で一点の曇りもないスパーンとした飛ぶような音がします。弱音も全く震えず完璧な音です。

 以前も書いたのですが、コンセルトヘボウのホルンの音は特別です。日本のオーケストラだけでなく、ヨーロッパの名門オーケストラでもこの厚みのある音を出してくれるところはありません。これらの音が聴きたいためにこのオーケストラを聴きにきれいるわけです。

 

 

 演奏後、マケラはオーボエに続き、ウーリーさんも立たせましたが、この時の拍手喝采は異様な盛り上がり用でした。

 終演後舞台のそでに入る際も、観客の多くが「やんや」とウーリーさんに声をかけると、彼女もそれにこたえていました。

 

 

    コンセルトヘボウoはハイティンク、ヤンソンス、ガッティとマーラーを得意とする指揮者が演奏し続けていたのでツボを心得ているは間違いないですし、楽団員も皆得意にし、聞かせどころ、音出しの限界も肌で感じているだろうと思います。

 近年、ウォンさんが日本フィルを振って素晴らしいマーラーを演奏し続けていますが、彼がコンセルトヘボウを指揮したらどうなるかなとふと思いました。