12月14日(土)14時開演 NHKホール

第2027回Cプログラム(2日目)

 

リスト/交響詩「タッソー」

リスト/ファウスト交響曲*

テノール:クリストファー・ヴェントリス* 

男声合唱:東京オペラシンガーズ*

指揮:ファビオ・ルイージ

演奏:NHK交響楽団

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 NHK交響楽団は放送局オーケストラだけあり、一定の予算額を確保しているのか他のオーケストラと比較すると大曲を比較的頻繁に演奏できる環境にあります。

 他のプロオーケストラが常に寄付金を募る中で、そのような弱音(?)をはかず企画をうってきます。

 各公演ともテレビ、ラジオで提供をされていますが、入場料も決してお安くはありません。

 この日の演奏の定価は「S席13,000円 A席11,000円 B席8,500円 C席 7,000円 D席5,600円 E席 3,500円」です。

ちなみに前の週の合唱がない場合は

それぞれ「10,000円 8,500円 6,500円 5,400円 4,300円 2,200円」となっています。
 
 
 前年はマーラーの第8番を演奏し、6年はファウスト交響曲ですが、首席指揮者のオーダーに対応する事務局も大変だと思います。
 デュトワ、パーヴォ、ルイージと続く指揮者はそれぞれプログラムでコストのかかるものを要求しているでしょうから。
 日本のオーケストラと指揮契約をするにあたり、指揮者はどういう気持ちでいるのか気になりますが、それなりのメリットはあるんじゃないかと思います。
 
 N響との契約のメリットは潤沢な資金があるということです。
 放送局オーケストラとして、曲目選択をする際、比較的制約を受けにくい上、水準も高いことは指揮者自身のキャリア・アップあるいはキャリアの中で十分に指揮できなかった大曲を指揮する機会が得られるということです。
 マーラーの交響曲第8番は上の三指揮者皆さんがN響の定期公演で取り上げています。この曲は大部分の指揮者が一生のうち1回は指揮したい思う曲だと思いますが、オーケストラに財力がないと振るチャンスに巡り合えない曲でもあります。
 
 この大曲ではないですが、昔、12月に日本のオーケストラ客演に来た指揮者「今回の来日で一生分の第九を振らせてもらった」と発言されたそうです。
 日本では12月中に、全国で100以上の第九演奏会が毎年のように行われています。
 
 指揮者にとって大曲を演奏することが舞い込むことは大変なことではあるが自分の経験に大切なものになるのは間違いないでしょう。それが高水準のオーケストラで実現するのはなおさらです。
 財政力の低いオーケストラにおいては興行的に成功させなくてはならないので限られた指揮者にしか演奏できない曲目は存在するでしょうね。
 
 ルイージがN響の常任指揮者に指名されたことは観客としても望ましいことです。メトロポリタンやドレスデンでも指揮を続けてきたこのマエストロの声楽曲のアプローチは非常に安心して聴くことができます。
 既にヴェルディのレクイエム、マーラーの第8番で卓越した合唱処理をこなしてくれていたので、リストのファウスト交響曲も万全に演奏してくれていました。
 
 オーケストラ、合唱に必要以上に圧力をかけず、静寂さと大きく鳴るメリハリをつけながら一気に曲を作り上げてくれました。
 もともとリストの管弦楽曲の多くは、奇をてらすこともなく、同じメロディーを何度も使用しわかりやすいこともあり音楽ファンにとっても格好のレア・コンサートでもあります。
 
 頻繁に実演される曲ではないので比較対象がないのですが、この日の仕上がりの絶対値はやはり優れたものだと感じられました。
 年末の第九は昨年は演奏していないので、そちらも楽しみにします。