2025年2月1日(土)14時開演 新国立劇場

ワーグナー/歌劇「さまよえるオランダ人」<新国立劇場>

ダーラント:松位 浩

ゼンタ:エリザベート・ストリッド

エリック:ジョナサン・ストートン

マリー:金子美香

舵手:伊藤達人

オランダ人:エフゲニー・ニキティン(1月19日・22日・29日・2月1日河野鉄平

 

指  揮:マルク・アルブレヒト

演  奏:東京交響楽団

合唱指揮:三澤洋史

合 唱:新国立劇場合唱団

演 出:マティアス・フォン・シュテークマン

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 今年のワーグナーの聴き始めです。今年の春の上野は「パルジファル」ですので男性合唱の真髄が2回も聴けます。

 今回のオランダ人の舞台は初演出以来2回目のものですね。昨年のバイロイトの演出もなかなか変わったものですが、オランダ人は僕にとって「おとぎ話風」のオースドックスなものが好きです。ですから今回の演出・舞台は個人的にとても好ましいものです。

 

 中央に船があり、沈んでいく姿いつも感動します。舞台に船が絶対欲しいです。

 今回のプロダクションと次のツェムリンスキー、プッチーニの2演目のプロダクションはともにオーケストラ・ピットに東京交響楽団が入ります。最近東京フィルの回数が減少していますね。3月の「カルメン」も東京交響楽団ですしね。

 ワーグナーに東京交響楽団は弦の厚みからするとありなのですが、オランダ人は弦がうなるよりもオーケストラ全体が鳴るといった感じですから東京フィルでもと思います。特にトランペットの安定感は、今は東京フィルの方があるような気がします。

アルブレヒトの指揮はまずまずだったのではないでしょうか。自然体の演奏だったように思います。

 

 さて、舞台ですが、ずっと暗がりで展開します。陰々滅々とした感じを出します。歌手の表情がほとんどわからず、「声ですべてを表現」しなくてはならない演出です。

糸紬部分、オランダ人とゼンダの父の取引気部分、船乗りと糸紬女性の合唱以外はずっと暗い物語ですから明るいより良いでしょうね。

 演目ですが、舞台冒頭に新国立劇場からエフゲニー・ニキティン氏が出演できないお知らせがありました。河野鉄平さんが代演をつとめられることになりました。

 

 ゼンタがエリザベート・ストリッドさんなので大丈夫かなとちょっと不安になりました。

彼女はワーグナーの歌い手としては明るめの声で張りがあります。ワーグナーを中心に歌いますが、イタリアオペラでも歌えるイメージがあります。

 2019年3月に同劇場で「ワルキューレ」を予定した時のジークリンデを歌うのが彼女だったのですが外国人の入国制限で流れてしまいました(ちなみにこのときブリュンヒルデはイレーネ・テオリンが歌うはずでした)。

 

 実際幕があくと、ダーラントとオランダ人のやりとりで、オランダ人がもごもごと歌っているようにしか聞えませんでした。歌というよりも「音にした声」でした。

当然に2幕のゼンタとオランダ人の二重唱はゼンタの歌ばかり目立ち、引っ込み思案のオランダ人が独り言のように自分の思いを出していました。

 ゼンタの独壇場で「あなたに関係なく私はこうするの」的なのりでした。

 さらに言えば、エリックも高音の歌がかすれかけており、ひ弱な男二人の中に女傑が舞台を一手に引き受けていました。

合唱は手慣れたもので、本当に素晴らしかったです。演劇部分もしっかりしていて、統一感があるものでした。新国立劇場の合唱団は本当に良い仕事をしていました。

 

 最後ゼンタとともに船が沈む部分は今回も圧巻でしたが、ひ弱な男性2人に加え最後のところでトランペットの響きに影ができてしまい、感動が阻害されてしまいました。

せっかく良い舞台でしたが、ちょっと残念な公演でした。