5月20日(土)18:00サントリーホール

東京交響楽団第710回定期演奏会

5月21日(日)14:00ミューザ川崎

東京交響楽団ミューザ名曲全集第187回

 

 

リゲティ/ムジカ・リチェルカータ第2番(ピアノソロ=小埜寺美樹)

マーラー/交響曲第6番イ短調「悲劇的」

指 揮:ジョナサン・ノット

演 奏:東京交響楽団

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日本にはマーラーが大好きな聴衆者が本当に増えました。クラシック・ファンというカテゴリーでなくマーラー・ファンというグループが明らかに存在します。

かくいう僕も中学生時代から数十年マーラー・ファンになっています。

いろんな「〇〇を知らずして死ぬのは惜しいこと」という文句がありますが、クラシック・ファンとしてではなく、音楽ファンとしてマーラーを聴かずして、さらにいえば、マーラーを演奏会で聴かずして死ぬことは「絶対に」残念なことであると思います。

 

 僕も地上に生を受けて長く過ごしてきました(端的に言うと齢を取ったということ)が、これほど頻繁にマーラー演奏が聴ける時代になったことに感謝します。

 さらに日本のどこのオーケストラも飛躍的に水準が上がっただけでなく、マーラー演奏の機会が増えたことで、かなり思い切った表現を展開します。

 たとえば、1970年代、80年代などはもっと恐る恐る演奏していたのではないかと思います。興業的にも経費(人件費)がかかっているので失敗したくないということもあったのではないでしょうか。これは推測なので事実かどうか言えませんが、90年代にはインバルやベルティーニなど巷ではマーラー指揮者と呼ばれる優秀な指揮者を呼び、日本のオーケストラでもマーラー演奏を展開するようになったと思います。

 

 その後の海外指揮者は日本のオーケストラの常任になると、マーラーをメインに展開するようになりました。

 比較的最近もパーヴォ・ヤルヴィやハーディングなどが全曲(「大地の歌」は除き)を演奏会で実施しており、新たな常任指揮者が着任したときにマーラー演奏を「行えるかどうか」は重要なファクターとなっています。

 このマーラーについては曲を否定していた指揮者もあります。僕も尊敬するマエストロでヘルベルト・ブロムシュテットもその一人で、以前マーラーの曲に対して大変にネガティブな発言をしていました。しかし、9番は彼の十八番ともなっており、昨年N響で屈指の名演を展開しています。彼はそれ以前にも同曲を定期公演で扱っており、演奏機会の増加により市民権を得ています。

 現在、東京交響楽団のシェフをつとめるノットもマーラーを順に扱っています。第6番に至るまでは時間を要していますがここまで来ました。彼はバンベルク交響楽団と既に全集を仕上げており、マーラーの譜読みはきちんとなされた中で現在の演奏に至っています。2003年から2011年ということで全集を完成してから今現在では12年経過しています。今回取り上げた6番は2008年に録音していますから15年経過しています。

 

 そこからこの指揮者がどのような変遷を遂げているのかも楽しみにしました。

 ムジカ・リチェルカータ第2番から始めましたが、趣向を凝らした演出でした。照明を暗くして、ピアノにスポットを与え、2分余りのソロ演奏を終えるとそのまま照明を明るくしてマーラー演奏に入りました。

 今回は、サントリー・ホールだけでなく翌日のミューザ川崎の演奏会にも足を向けました。

 2日間の演奏の解釈はどちらも変わりません。ゆったりとした演奏で90分程度の演奏です。通常80分ぐらいで演奏されるのが常ですから、テンポは体感通り遅かったです。

 先に記載したCD録音では82分ですから10分近くテンポが遅くなっています。

 2楽章以降は両日とも演奏が変わりませんでしたが、1楽章の前半は初日の演奏はかなりゴツゴツした感じが否めませんでした。楽器間の関係性が希薄で、それぞれの楽器が独立して音が出ているような感覚がありました。多分このテンポに起因しているのではないかと思います。

 それはすぐに修正されました。

 ノットの解釈は自然でテンポを大幅に揺らすことなく、バーンスタインのようなねちっこい演奏ではないですが、間延びした感じもまるでありません。

 

 演奏者の皆さんにはかなりこたえていたようです。トランペットのトップも冒頭から大幅に音をはずし、「やっちまった」状況でしたが、あれだけのチャレンジをされているので仕方ないことでしょうね。それは2日目でも傷を出す結果となりました。

 あそこの旋律は危険いっぱいですね。

 5番の演奏でも冒頭にやってらっしゃるので、そのことが御本人のトラウマになっているかもしれません。

 終演に奏者を立たすところでノットが比較的早めにトランペットを立たせた時も「エッ、自分が?」という顔をされたことも、向上心高く演奏されていることを感じました。

 かなり、シビアな状況で今回の演奏に臨まれていたと推察します。

 

 この6番は昨年11月に来日したネルソンスとボストン交響楽団のすさまじい演奏でも最終楽章はあの金管が傷だらけになって演奏されていました。

 この2日間の演奏はこのような傷はかすり傷だとしっかり認識しました。

 さらりと流した演奏でなく、追い込んだ演奏が聴けたことは本当に幸せなことです。

 

 ハンマーの気になる4楽章ですが、演奏冒頭からハンマーが振り下ろされ、合計5回も叩きつけていました。通常は2回か3回かということで気にかけながら聞くわけですが、2日間で10回のハンマーを「聞かせて(見させて?)いただく」ことになりました。

 今回のノットの来日でも「エレクトラ」やこのマーラー6番の演奏を聴かせてもらえたことは「感謝」しかありません。ノットさん並びに東京交響楽団の皆さんには深く敬意を表します。

 まだまだ、定期会員を続けさせてもらい東京交響楽団の応援団でいたいと思ったところです。

 

 ちなみに新日本フィルと東京フィルの定期会員でもありますが、東京フィルの定期会員は辞めたい気持ちになっています。だってヴァイオリン群がひ弱なんですもの。もっとゴリゴリ弾いてください。サラサラでなくゴリゴリです!!

この日の東京soのやる気のある演奏を聴くとさらにそのように思います。

 

<今の僕の感覚>

NHKso(ルイージ、ブロムシュテット指揮>東京so(ノット指揮)>NHKso(ルイージ、ブロムシュテット以外)>>東京so>新日本po>>>>>>>東京po