元もじぴったんプロデューサーの生の知恵ブログ -10ページ目

販売手法をライバル会社から学ぶ

僕がプロデューサーになった時は、元々開発しかやった事がなかったのでとにかくモノを売るとはどういう事かをゼロから学ばないといけませんでした。


もちろん最初は、社内で色んな方に聞きまくって、「常識的」なやり方を聞くわけですが、いわゆる「ゲリラ」をやらないとダメなことを覚悟していました。
単に「普通の」販売、販促、宣伝手法を知ってそれをやっても、当初の低予算では大きな効果を出す事は難しい事は分かっていたからです。


これはどんな会社でもそうかもしれませんが、そこそこうまくいっている組織では、そういった新しい、多少奇抜に思える販売手法のようなものに対して「保守的な力」が働きます。

今までと違うやり方でやりたい、と思っていても「前例がない」「これまでのやり方で問題ない」と返されて、社内の壁に阻まれる事があります。

なので、その時に僕がとった「作戦」の一つはライバル会社が何をやっているかを研究する事でした。


この時に一番の情報源になったのは、「店頭」でした。


当たり前の事ですが、店頭では他社の販促物ややろうとしている事が分かります。毎週店頭に行き、新製品のパッケージやPOP、プロモーションビデオ等をずっと観察していました。それに対するお客様の反応も見ていました。
そうすると、「自社はやっていないが他社はやっていて効果を上げていそう」な事を発見する事ができるのです。

その事を持ち帰って、「XXX社はこんな事をやっているが、うちでも出来ないか」という相談をする事によって実現する方法を模索したりしていました。

その一つが名刺型の販促物だったりします。名刺サイズの販促物がある所で配られているのを見て、目立ち具合は劣るけど「持ち帰りやすさ」はある、と思い、WEB体験版のアピールになるのではないか、と考えました。

残念ながらはっきり効果があったかは分かりませんが、後に体験版のページのアンケートでこのカードを見て来た方がいたので多少なりの効果はあったことが分かりました。
(手元に残っていたので画像表裏です)
mojicard1.jpg
mojicard2.jpg
今ならQRコード等を使う手もありますね。
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ある時、ゲームショップで体験版、といいつつPC用のCD-ROMが配られていて、なんだろう、と思ったら「逆転裁判(GBA)」の体験版CD-ROMでした。
(先にWEB版の体験版(FLASH)がある事を知らなかったのですが、多分それが遊べるCD-ROMだったのだと思います)

体験版、といえば普通、その製品と同じプラットフォームで作られるのが当たり前でしたから、この手があったか、と思いました。

後に、これをヒントに「もじぴったん」もWEBで体験版を作れないか、と考え、実際もじぴったんPS2 BESTの際にWEBで遊べるようにするのですが、それは逆転裁判の前例を知っていたからです。

(ご参考)逆転裁判シリーズ最新作「逆転検事2」ページ(体験版公開されてます)
(ご参考)「ことばのパズル もじぴったん」体験版ページ (対戦のおためしもあります!)

今、ある会社が店頭でやっている事を業界全体がマネして欲しいと思う事があるのですが、写真で説明出来るようにしてから紹介するつもりです。

多分お店の人なら分かるかも、ですね。

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さて、まったく余談ですが、毎日.jp で作家の「宮部みゆき」さんが好きなものを紹介していたのですが、その中に「ことばのパズル もじぴったんDS」が!
http://mainichi.jp/enta/book/hondana/news/20101128ddm015070006000c.html

なんだか涙でそうになりました...
宮部みゆきさんのファンなもので(笑)。ありがとうございます。

ことばのパズル もじぴったんDS
ナムコ (2007-03-15)
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取扱説明書は読まない、のを前提にする

結構昔のエピソードですが、共有したいので書きますね。


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GBA版のもじぴったんが発売された数ヶ月後に、たまたま、社内の女性数名と食事をする機会がありました。

バリューセレクション ことばのパズル もじぴったんアドバンス



話題が(僕がいたこともあって)もじぴったんの話題になりました。

その場にいた女性全員がGBA版のもじぴったんを持っていて、早速こうして欲しい、ここが不満、みたいな話になるわけです(まぁ、僕が開発者で特に当時はディレクター&プロデューサーでしたからありがちですね)。

全員一番不満を持っていたのが「沢山ある文字の下のほうを選ぶのが時間がかかる、面倒」という事でした。



正直僕は「あれ?」と思ったのです。


GBAの場合、L,Rボタンを押すといわゆる文字の「早送り(ページ送り)」が出来るようにしていました。

取扱説明書にももちろんその事は書いてあります。

だけど、その場にいた全員はその仕様を知りませんでした

で、僕が教えて「こうするんですよ」と言ったら、全員驚いていました。


みんな、発売から時間がたって結構もじぴったんをやりこんだ後だったのにも関わらず。


他にも皆が口を揃えてクリアできない、といっていたタイム制限のきついステージは、実はその早送りを活用しないとクリアが難しいステージでした。

そのメンバーに聞いてみたら、全員、取扱説明書は一度も読んでいなかった事がわかりました。


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その時は3人でしたので、後日、もじぴったんをやっている人を社内や社外で見つけたら、説明書を読んだか、という話を聞くようにしました。

結果、殆どの人が一度も読んでいませんでした。そして同様に製品では既に解決してあるはずの問題に皆不満を持っていました。


後に、PSP版では、チュートリアルプレイにその早送り操作が分かる仕様を別途入れました。

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お客様は「購入したらすぐにでも遊びたい」という気持ちを持っており、多くの人は説明書を読まずにゲームを始める事が分かりました。


他のゲームでも読まない、という人が大半でした。多かったのは分からなくなったら、読む、というパターン。

特にもじぴったんのようなシンプルなゲームは、見なくても分かる、と思いこまれてしまう事が後に分かりました。

よって、不満に感じるであろう事を製品では実装して解決していて、説明書に書いてあるにも関わらず、お客様は分からないまま不満を残してしまう事があるのです。


作る側から言うと、手間的問題、コスト的問題、色々あって何かの問題がある事を解決する仕様や操作を「取扱説明書に書いてあるから大丈夫」としがちなのですが、それでは効果がないばかりか、せっかく知っていれば不満を感じない事を「できが悪い」とお客様は思い込んでしまいます。


お客様は説明書は読まない、という前提のモノ作りが僕は(実はゲームに限らず)必要だと思っています。


(ちなみに、単純にオンラインマニュアルにしても、見ないのは変わらないですよ。むしろ読みにくいので、見ない可能性があがるかもしれません(仮説))



TV番組の仮面ライダーシリーズが応えているニーズは?

昨日に出したお題「TV番組の仮面ライダー(シリーズ)は誰のどんなニーズ(必要性)に応えたのか」の僕なりの解答編です。


仮面ライダーという番組そのものだけを見たら、小さい子供か、ヒーローものが好きな大人が好きだから見る、と考えるでしょう。


これを「お客様の生活」という視点で考えてみたいと思います。

ちょっとリアルな生活を想像してみましょう。



仮面ライダーを見ている主な層は誰か、というと3歳位から幼稚園の年中さん位までの男児が中心。

仮面ライダーは日曜日の朝早い時間(7:30~8:00)に放映されている。7:00~7:30は戦隊モノで、あわせて「スーパーヒーロータイム」と呼ばれている。


土曜日の夜、子供はいつもの時間に寝る。親は明日が休みだと少し夜更かししたくなる。

日曜日の朝、子供はいつもの時間(7:00頃)に起きる。規則正しく。


親はというと、まだ眠い。前の日遅く寝てるし...平日なら仕方ないけど日曜日の朝位ゆっくりさせてくれ...と思う。

そして親はテレビをつけ、チャンネルを某局にあわせる。そしてスーパーヒーロータイム(7:00~)が始まる。


子供はテレビに釘付けになる。


親はまたベッドに戻ってもいいし、ゆっくりしてもよくなる。
7:30頃にはむっくり起き上がってきてゆっくり朝食の準備とか。新聞読んだりすればいい。子供には邪魔をされない。

お母さんはイケメン使ってる仮面ライダーは子供と一緒に見てもいいかもしれない。普段ならバタバタ朝の準備をしなければいけないけれども。





つまり、「幼稚園位の男児を持つ親」の「日曜日の朝位はゆっくりしたい」、というニーズ(必要性)にあの番組は主に応えていると考えられるわけです。



正直、このことは、リアルに自分が2人の男児を抱えてから理解しました。

スーパーヒーロータイムのなんとありがたいことか(笑)。

テレビをつけるだけ。で、あと30分は眠れ、30分はゆっくり出来る。

TV番組は無料で、素晴らしく助かるのです。代わりに後で子供連れでオモチャやさんに行くのはちょっと面倒な気持ちにはなるのですが。


こういう構図があるから、日曜日のあの時間帯に流されている事が実は肝なのです。

もしあれが日曜日の昼に流れている番組だったら、まったく見せないで済みます。 日曜日の昼は多分ショッピングモールなどにでかけて買い物していたりしますからね。

後、日曜日の朝はNHK教育が大人向け番組をやってるのがでかいです。そうじゃなければNHK教育を親は選びそうな気がしますね。


なるほど、と思いましたか?なんだか騙されたような気分ですか?


でも、もしそうなら、ゲーム(商品)を研究する視点、でなくて「お客様の生活」を研究するという視点が足りなかったのかもしれません。


ゲームならどうかを考えてみませんか?どんな人が、どんな場所で、どんな時間に、誰と一緒に、遊んでいるのか、遊ばないけど、関係している人が周りにいないか、と。

本当に研究していくと、商品作りのヒントになる新しい発見が絶対にありますよ。

ゲームでなく「お客様の生活」を研究する

ゲーム開発者は、無意識に「お客様」=「プレイヤー」=「ユーザー」=「購入者」と考えがちです。


以前のエントリーでも言った通り、そうなるケースもありますが、基本的にはそれらは違うものです。


そしてもう一つ、ゲームの開発者は「ゲーム」を研究する事で満足しがちです。

確かに、他社が作ったゲーム、売れているゲーム、そういうモノを研究する事は大事かもしれません。


それらの良い所をうまく盗むという事で、商品を改良していく事は出来るでしょう。




しかし、僕はそれ以上にお客様、あえて言えば「お客様の生活」を研究する必要があると考えます。
  • ゲームを遊ぶのはどんな時なのか、遊ばないのはどんな時なのか。
  • どんな姿勢で遊んでいるのか。( 寝転がって?ソファに座って?立って?両手で?片手で?歩きながら? )
  • どんな場所で遊んでいるのか。(自分の部屋?リビングで?電車の中で?待合室で? )
  • ゲームが嫌い、と思っている人はどんな生活をしていて、どんな理由で嫌いなのか。
  • ゲームの話題をするのはどんな時か。どんな話題か。
  • 生活する上で、困っている事はないか。それをゲームで解決できないか。

残念ながら、今の世の中に出ているゲームの殆どは、お客様の生活に着目して作られたのではなく「ゲームを見て」作られたゲームだと僕は思います。



お客様の生活に着目しなければ、本当の意味でお客様が何を必要としているかを見失います。


それにより、客離れ、新しい顧客を得られない、という事に繋がります。



お客様の生活、という視点を持ってもらうために、少し皆様にも考えてもらいたい事例があります。

質問:TV番組の「仮面ライダー(シリーズ)」は誰のどんなニーズ(必要性)に応えているでしょうか。


明日、この事例についての中村の考えをブログのエントリーにしようと思います。

お楽しみに。

アーケードゲーム開発の良さ(2)

前回のエントリーで、アーケードゲーム(ゲームセンター等に置かれるゲーム機)開発の良さについて、お客様が自分達の商品で遊ぶところを企画開発する人が直接見ることができる事を挙げました。

それによって、商品を生み出す人のモチベーションが高くなる事が一つの良さだと思います。


もう一つ、今こそアーケードゲームの開発の文化の良さを見直すべきと考える理由があります。

それについて少し説明しましょう。



アーケードゲームがヒットする条件の基本は下記のような事です。

  1. 見ているだけで、最初に100円をお客様が入れたくなる事。
  2. 一度遊んだら、また100円をお客様が入れたくなる事。
  3. 日を変えてもまた繰り返し遊びたい、と思わせる事。
100円で1ゲーム、というコインオペレーションの場合、おおよそ目安があって、100円1プレイ、およそ3分が適当とされていました。

長く遊べたほうが満足してもらえるかもしれませんが、ゲーム機の元を取るためには3分程度でもう一度100円を入れてプレイしてもらうというスタイルです。


この事がゲームデザインに大きな影響を与えています。


「お客様は理解できないものは買わない」というエントリーを書きましたが、最初にお客様に100円を入れてもらうためには「理解」してもらわないとダメなので、複雑でない、ルールや遊び方はすぐに理解できる事が求められました。


何をするゲームなのか、どういうルールなのか、どう操作すればよいのかは、100円を入れる前に理解できる必要性がありました。


同時に、プレイを始めたら、1分で面白さが分かり、3分程度でゲームが終わる頃にはもう100円を入れたくなっている、という事が求められます。


しかも、遊ぶたびに新しい発見があり、またやりたい、と思わせる必要がありました。

多くの人に遊んでもらい、なおかつ何度も遊んでもらうという事が基本です。



結果的に、シンプルで分かりやすく、すぐに面白さが伝わる上に、何度も遊びたくなる奥深さ、がゲームデザインの中心となるようになっていました。




そんなのは昔の話でしょ、と思うかもしれません。



しかし、今は例えばiPhoneのアプリのゲーム等で求められている事は同じ条件ではないかと思うわけです。

シンプルで分かりやすく、すぐに面白さが伝わる上に、何度も遊びたくなる奥深さ。

無料や100円程度のゲームがあふれている状態では、この条件を満たす事は非常に大事です。


ルールや遊び方を理解するだけで何十分もかかっていては、仮にそれを覚えればものすごく面白かったとしても、多くの人はその前に遊ぶのを止めてしまいます。


無料のゲームがあふれている現状では、最初1分触った時点で「容量の無駄」と思い、パッと削除、そして二度と遊ばない、という事が普通になります。





家庭用ゲームの場合、アーケードとは遊ぶ時間が違うのだから、同じ事は要求されていない、と思うかもしれません。


確かに重みは多少違うかもしれませんが、僕自身は「もじぴったん」の経験からも、シンプルで奥深い、すぐに楽しさが伝わる事がヒットの要因の一つになると思っています。(詳しい話はいつか別のエントリーでするつもりです)




アーケードゲーム開発の良さ(1)

前のエントリーで商品を企画開発する人が上流、と呼ばれていてお客様から遠い存在になっている、という話をしました。


僕のナムコに入ってから後のしばらくのお仕事はアーケードゲーム(主にゲームセンター等に置かれるゲーム機)の開発の仕事でした。

その後、もじぴったんの家庭用版(PS2,GBA)の開発をきっかけに初めて家庭用ゲーム機の開発に取り組んだわけです。


その経験から感じた事は、家庭用ゲーム機向けのゲーム開発に比べて、アーケードゲームの開発のほうがよりお客様の観察をしやすかった、お客様の事を知りやすかったという事です。

ゲームセンターに行けば、実際に直接お客様が遊ぶところ(遊ばないところも!)を見ることが出来ます。

足で稼いで、色んなお店を色んな時間に見て回れば、製品の問題も、お客様が何に喜んでいるのか、それはどんなお客様なのか、という事も分かります。行動をよく見ていれば、理由もなんとなく想像できます。

製品も発売前に実際にお店に設置してテスト(ロケテスト)されてから実稼働させるのが普通です。

ロケテストの結果で製品の改良ポイントをつかんで改良しますが、実際、これによって製品の大きな問題が解決される事も少なくありません。




対して家庭用ゲーム機の場合は、お客様のゲームソフトの使用実態、遊んでいる所を直接見ることはかなり難しいです。

家庭用ゲーム機向けの仕事しかしたことがなければ、自分が開発した商品が実際にお客様に遊ばれている所を一度も見たことがない開発者のほうが実の所多いのではないかと思います。



僕は、このお客様が遊んでいる所を見られるという良さは、単純に自分たちが開発した商品の改善改良のため、というだけではないと考えています。

開発者のモチベーションは、お客様が喜んでくれている所を実際に見る事で生まれてくるものです。

それはお金に換えがたい喜びだし、その事が次の商品をもっといいものにしよう、という意欲を生むんです。
仮にお客様が狙い通りに喜ばなかったとしても、それは悔しさとなって次に繋がるでしょう。



だからアーケードがいい、といいたい訳ではありません。


家庭用ゲーム機(やそれ以外)の開発では難しいとしても、僕は商品企画者、開発者がお客様が実際に商品を使っている、遊んでいる所を見る機会を作るべきなんだと思います。

難しいなら、それこそ知恵の絞りどころだと思いますね。

ゲーム開発が「上流」と嫌みを込めて言われる訳

プロデューサーになってから、小売店の方と直接お話ができるチャンスが何度かありました。僕としては知らない事だらけでしたから、話は本当に新鮮でした。


その最初の頃に、あるゲーム専門店を経営している方に僕が言われたのはこんなことでした。

「現場(小売店)では、ある種嫌みを込めて開発の方を『上流』というんです」


何故「上流」なのでしょうか。


川の上流から濁った水を流されたら、下流も確実に濁ってしまうように、上流の開発が売れないゲームを作って流通に流されても、下流の小売店ではどうしようもない、という意味なのだそうです。

売れないものは、残念だけどお店でどんなに努力しても売れていかない。お店としては同じ努力をするなら売れる商品がより売れるように目立たせたり、ディスプレイを作ったり、PVを流したりして仕掛けたほうが断然お店の売り上げ利益はあがる訳です。
そして、売れないものばかりを流されたら、小売店は無策、苦しくなるだけです。


そして、もう一つ、嫌みを込めて上流、という理由は、上流である「開発」が一番お客様から遠い、という事なのです。

開発者はゲームのことは自分達が一番よく知っている、と思っているかもしれませんが、直接お客様に接して、お客様の買う、買わないを直接そばで見ているお店からすればお客様の事を知らなすぎるように「上流」にいる開発者の事が見えているのだと思います。

その後も、小売店の方と直接お話ができるチャンスが何度かありましたが、その度に重要な示唆を頂きました。

言われた事を確かめるために店頭観察を続けて、知らなかった事実を沢山発見して自分達がいかにお客様から遠い所にいるかと言う事を思い知らされました。


ゲームを企画開発する僕らが、実のところ一番お客様の事を知っているのが本来の姿だと思います。


そこに大きなギャップがあると僕は考えています。

お客様は理解できないモノは買わない

DSで脳トレが爆発的に売れてからDSのソフトのパッケージは脳トレと同じように帯がつくデザインばかりになりました。




東北大学未来科学技術共同研究センター 川島隆太教授監修 脳を鍛える大人のDSトレーニング


ところがDSと似たような層が購入したと考えられるWiiのソフトだと帯をデザインに入れてパッケージ表で内容をアピールするものは殆どなくなりました。



多分発売後一番売れたWii Sportsのパッケージを真似たのでしょうね。もしくはPS2時代と同じ事をしたか。おかげでパッケージ表面だけで何のソフトか、何がウリなのか分からないソフトが増えてしまったように思います。



Wii Sports





PS3やXbox360にいたっては、似たようなパッケージばかり。タイトルは横文字で意味不明。何語なのかも不明。そもそも読み方もよく分からないものも多数です。



Torneで地デジが録画できるならPS3買おうとゲーム売り場にやってきて、どんなゲームがあるんだろう、と棚を見にきた普通のサラリーマンを想像してみて下さい。



タイトルがなんと読むか、意味も分からないで7000円も8000円もするゲームを予備知識もないお客様が買うか、と言われたらそりゃ買わないのでは?と思う訳です。



パッケージソフトをもっとお客様に買って欲しいのなら、もっとタイトルやパッケージに気を使う(ついでに手間隙もかける)必要があるのです。





極めて当たり前ですが、お客様は理解出来ないものは買いません。





理解できない商品を店頭に並べておいて、売れないのは市場が悪い、というメーカーやパブリッシャーさんは如何なものか、と思うのですがどうでしょう。



お客様目線が当たり前にできるプロデューサーが足りていないのを残念ながら感じています。



そういうプロデューサーになれる人を育てるのが僕のこれからの役目の一つと思っています。



ゲームソフトでのパッケージの重要性

パッケージのゲームソフトは、


遊んでから買う訳ではなく、買ってから遊ぶ


のが基本である。


もちろん一部体験版を遊んでから購入したり、知人友人に貸してもらって遊んでから購入を決める例もあるだろうが、それは実のところ一部である(体験版がダウンロードで無料で配られている昨今でも、お客様は興味があるタイトルしかダウンロードしない)。


映画でいうと、映画はお金を払ってから見るわけで、映画を見てからお金を払うわけではないのと同じだ。
ゲームを作っている人は、そのゲームの中身の事を知りすぎている。どんなモードがあって、どう面白いかも知っている。
しかし、それはゲームを体験しているからであって何も知らないお客様にとっては、その商品を買うとどんないい事があるのか、どう楽しいのか、そしてお客様がそれを魅力的に感じるかで購入される可能性が初めて出てくるのである。


パッケージは、購入される場合は殆どのケースで、お客様が購入直前に見るものであり、購入を迷っている場合等には、それが購入の大きな決定用意になる事もある。
また、店頭で、知らなかったタイトルに触れるきっかけにもなる。

パッケージで商品の魅力を購入前にちゃんと伝えられていなければ、当然だけどお客様に購入される可能性が大きく落ちてしまう。仮に遊んでさえもらえれば魅力的が伝わって、口コミでさらに売れる可能性があったかもしれなくても、それさえ潰してしまうのである。

もじぴったんで、(中身はまったく変えなかったのに)パッケージ、広告、価格を変えただけでまったく売れ行きが違ったし、店頭で手に取られて購入に直接結びつくのも自分の目で見た僕は、家庭用パッケージソフトでのパッケージの重要性を再確認した。

ことばのパズル もじぴったん
(発売後1年半で5万本出荷)

    ↓

ことばのパズル もじぴったん PlayStation 2 the Best

(発売後1年半で30万本出荷)



同時に多くのソフトがゲームの中身の開発は頑張っているのに、明らかにパッケージには無頓着である事は残念に感じる。売れ行きを決めるのはいかに購入前に知ってもらい魅力的に感じてもらうか、だから。


中身をいくら作り込んでも購入して遊んでもらえなければ意味がないのだ。





お客様は何も知らないという前提で考える


ゲームのパッケージに帯をつけるというアイデアを実行に移したきっかけになった出来事がある。



10年以上前の事だが、彼女(今の妻)を連れて、ゲームショップに行った時の話だ。

ちなみに妻はゲームにはまったく興味がなく、ゲームショップに自発的に来る事もない。


当時のPS2の棚(100以上のタイトルを展示)の前で、妻に「興味あるとかやってみたいと感じるゲームある?」と聞いてみた。

妻はうーん、と悩んだ後、「ボクは小さい」というタイトルを選んだ。しかも、だいぶ消極的に。



ベストコレクション ボクは小さい



棚の下の方にあって売れていそうな感じではなかったし、僕自身も一応知ってる、位のタイトルだった。

妻にどうしてこれを選んだの?と聞いてみたら、

「これ以外は、何のゲームだかさっぱり分からない。見当もつかない。」

と答えた。

改めて棚を見ると、タイトルは横文字、しかも意味がよく分からないタイトル、デザインはアニメ絵のキャラクターが勢ぞろい、的なものばかりだった。


もちろんその棚にはゲームの世界では有名なブランド、誰もが知ってるようなタイトルももちろんあった(有名すぎて白地にタイトルだけというパッケージだったけど)。


しかし唯一、このゲームだけは「小さい主人公が家の中で活躍するゲーム」とタイトルと絵で中身が理解できたから消去法的に選んだ、という事だったらしい。





僕がこの時に学んだ事は、自分は知り過ぎていて、お客様は「何も知らない」という事を前提に考えないといけないということだった。

お客様視点になる、という事の一つは「何も知らない人の立場で見たらどうか」という事である。

業界に入っていろんな事を知ってくると、実はこの「知らない人の立場になる」という事は訓練をしないと難しい

ゲームの続編を作る時に、「前作はお客様は知っている」という前提で全部もの作りをしてしまったりするのだ。

パッケージに「前作よりXXがパワーアップ!」とかパッケージに書くけど、知らない人は何の事か分からないという事を普通にしてしまう。

自分達の作っているものがそうなっていないか、今一度見直して見てはどうだろうか。