秋田臨海鉄道の事業終了決定の報に接して | 模工少年の心

「秋田臨海鉄道、来年3月で事業終了 貨物落ち込み収入減」

2020623日の秋田魁新報の記事です。

 

   数週間前、私鉄戦後型電気機関車のことをブログに書きました。私鉄による一般貨物の輸送はすでになく、鉱山やセメントの輸送は、本来鉄道輸送が適しているはずですが、トラック輸送に切り替えられる傾向が止まりません。

   それに対して、臨海鉄道、臨港鉄道と名づけられている専用鉄道は、外国からの原材料の輸入品の輸送需要があり、何となく、見通しも良好ではないかと思い込んでいました。

 

   秋田臨海鉄道は、奥羽本線貨物支線の終点秋田港駅から分かれる、向浜駅を結ぶ路線(通称・南線)と、秋田北港駅を結ぶ路線(同・北線)からなる第3セクターの地方鉄道です。

 

秋田港線の路線  (yahoo!JAPAN地図に表示)

 

   北線は、秋田港を起点に、本港地区の石油基地、中島埠頭駅を通過し、大浜地区の秋田北港駅までの2.5km。秋田北港駅は、硫酸輸送の廃止により、平成20年から保安設備確認運転のみになっていました。

   一方、南線は、秋田港駅から向浜駅までの5.4km。向浜駅は、日本製紙株式会な社秋田工場の工場敷地内に敷設されている専用線と連結しています。この製紙工場関連の貨物輸送がトラック輸送に切り替わることにより、来年3月の事業終了につながってしまいました。

 

   この決定に際して、JR貨物の見解も掲載されていました。

「秋田港駅はクルーズ船寄港時に運行する臨時列車『クルーズ列車』の発着駅にもなっているが、JR秋田支社がJR貨物の奥羽線貨物支線で運行しているため、影響はない。また、北線の利用を盛り込んだ「秋田港シーアンドレール構想」もトラックの活用で影響はない。」

ということだそうです。

   臨港線としての使命はJR貨物線で賄えるといっても、廃線は寂しい限りです。

 

   日本の鉄道は、赤字路線の廃止が続くばかりで、北海道では、もはや鉄道網とは呼べないほどの様相です。

    競争力を失えば、撤退せざるを得ないのが、自由主義経済の原則ですので、やむを得ないことではあります。

 しかし、それで本当にいいのでしょうか?

 

大河は、多くの支流を集めて、初めて大河たり得るのです。

 

 今の状況は、1984年のヤード集結型の貨物輸送が終了した時点で、すでに想定できたことでした。

 そうした中で、秋田臨海鉄道は、地元の期待を集め、考えられるだけの経営努力をされてきたことでしょうが、跳ね返すのは並大抵のことではなかったのですね。

 

 返す返す残念ですが、この会社の事業継続に向けた努力を無駄にすることなく、これ以上の貨物輸送縮小を ここで止める転換点にしてほしいものです。

 少子化問題の解決をみることができず、トラック運転手の確保の困難、働き方改革、CO2の節減、コロナ後の企業の国内回帰。

 こうした複雑な要因を踏まえて、鉄道インフラを有効利用する観点から、国内の物流全般を今一度、見直しすべきではないでしょうか