🔷「結婚前」の中の「デートを重ねる」を掲載します。🔷
タイトルは『由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い』
(ハードカバー 四六版 モノクロ264ページ)です。
2016年1月25日 発行
著者 藤巻 隆
発行所 ブイツーソリューション
✍『由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い』(第19回)✍
「結婚前」の中の「デートを重ねる」を掲載します。
結婚前(4)
デートを重ねる
初デート以来、週末になるとデートを重ねました。由美子に夢中になっている自分がいました。交際するようになってからも、由美子は当社に派遣社員として通っていました。私たちが仕事中に目配せしていることが周囲の人たちに明らかになり、噂になっていました。私たちの交際が公然の秘密となっていました。周囲には、私たちが結婚するのは、時間の問題と見られていました。
私は、そろそろけじめをつけないといけないな、と自分に言い聞かせていました。そして、由美子のご両親にきちんとご挨拶に行かなくてはいけない、と決断しました。年の瀬が押し迫る平成二年(一九九〇年)十二月のある日のことでした。
人生には三つの「さか」があるとか。「上り坂」「下り坂」そして「まさか」です。
今までの人生を振り返ってみますと、進学や就職、昇進といった「上り坂」を経験した後、リストラという「下り坂」も経験しました。そして、人生後半に、最愛の妻を失うという「まさか」も経験することになりました。夢にも思わない衝撃的な「出来事」でした。あまりにも過酷な運命でした。
他人事(ひとごと)と思っていた「まさか」を体験したことに、今、深く、重い痛みを胸に感じています。出てくるのは、繰り返される涙と深いため息です。耐え抜くことは決して容易なことではありません。文字で表現すれば、「耐え抜く」とわずか四文字に過ぎませんが、耐え抜くことは精神的にも肉体的にもハードです。耐え抜けば、その後に良いことがあるはずと確信できるなら、一時的なもので耐えられるかもしれません。
しかし、亡くなった最愛の妻は、この世に二度と戻って来ません。しかし、私の心の中で、ずっと生き続けています。ただ、最愛の妻を護り抜くことができなかった最低の夫は、私であることに変わりがありません。その気持ちが自分を責め続け、苦しめています。その責めに耐えきれず、泣いてしまうのです。
(PP.50-51)
➳ 編集後記
第19回は「結婚前」の中の「デートを重ねる」を書きました。
デートを重ねていた過去を振り返ると、楽しい思い出がたくさんあります。それだけに妻に先立たれた喪失感は筆舌に尽くしがたいものでした。
