適切なガバナンスは
経営スピードを上げる
松崎 正年(まつざき・まさとし)氏
[コニカミノルタ取締役会議長]

今だから打ち明けますが、私は社長時代に2度、
役員報酬を自主返上しています。
隠していたわけではありません。対外的に開示
が求められるケースではないため、発表して
いないだけです。
私は社長を退任した後、執行から離れて取締役会
議長という立場になりました。
「監督される側」から「監督する側」に回ってみて
改めて気付かされたのが、適切な企業統治システム
は経営者の自律的な行動を促すという事実です。
現在4人の社外取締役がおり、その全員が企業トップ
経験者などの独立役員です。
さらに指名と監査、報酬の3つの委員会では、委員長
は社外取締役から選定します。そのうえ、委員会の
過半数は社外取締役で占める必要があります。
その結果、当社においては「社長の友達」を社外取締役
に連れてくるのは、限りなく難しくなるのです。
ある意味で、米国の企業統治システムより厳しいかもしれ
ません。
監督機能が強化されると、問題点を放置できなくなります。
社外取締役が痛いところを突いてくるので、社長が自律的
に動くようになるのです。
『葉隠』に「武士道と云ふは死ぬ事と見付けたり」という言葉
があります。私は社長を務めた5年間、常にそういう心境
でした。もし問題が起きたら、指名委員会などに指摘される
前に自ら腹を切ろうと決めていました。
適切なガバナンスの仕組みを構築することで、社長が真剣
勝負をするようになる。それは、企業全体にとって大きな意味
を持ちます。
(2015.08.03 号から)

コニカミノルタ取締役会議長 松崎 正年 氏
「日経ビジネス」 2015.08.03 号 P.001
「日経ビジネスDigital」 2015.08.03
「日経ビジネスDigital」 2015.08.03

キーセンテンスは、
私は社長時代に2度、
役員報酬を自主返上しています
です。
企業業績が悪化すると、すぐにリストラしたり、
社員の賃金を下げることが実施されます。
ところが、経営のプロであるはずの経営陣は
全く責任を取らない、役員報酬は据え置くこと
が常態化している企業があります。
役員報酬も業績連動型にすべきですが、
なかなか実行されません。
まず、経営陣が率先垂範すべきです。
業績が向上すれば、堂々と役員報酬を増額
してもらえばいいし、業績が低下したら、
役員報酬を減らしたり、返上するくらいの潔さ
を社員の前で示すべきです。
そうでなければ、社員からの信頼は得られない
でしょう。
その点で、松崎(崎は正確には大が立)さんは
社長時代、役員報酬の2度自主返上しています。
率先垂範しています。
立派だと思います。

ポイントは、
真剣勝負をする
です。
松崎さんは『葉隠』から引用していますが、
「切腹する」という言葉は時代がかった言葉
と捉えがちですが、それくらい経営者は真剣
に勝負しなくてはいけない、という心意気を
語っています。
ガバナンス(企業統治)は、経営陣の力量に
左右されます。取締役は決して「あがり」では
ありません。権限と責任は不可分のものです。
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