2015.03.30
三木谷 浩史(みきたに・ひろし)氏
[楽天会長兼社長]
最大のポイントは、単品の強さではない、という点なんですね。
1つのサービスだけでなく、複数のサービスを利用してもらう
ことで様々な相乗効果が生まれる。例えば米グーグルも、検索
エンジンのほかにメールなど複数のサービスを抱えています。
単品ではなく複数にすることで、利用する頻度を上げたり、
ロイヤルティー(忠誠心)を感じてもらったりできる。逆に言うと、
こういう時代の中で単品サービスだけをやっている企業は厳しい
のではないでしょうか。
海外に出て行く際の戦略は2通りあります。一つは、国ごとの優先
順位を決めず、網をかけるよう一気に世界へ広げていく戦略。
意図的に何かをしなくても、知らない間に爆発的にヒットしている。
バイバーはまさにこの方法が使えます。
2つ目は一国また一国と広げていくやり方です。例えば電子書籍
の「kobo」などは、国ごとに進出する優先順位を決めています。
電子書籍のコンテンツを集めなくてはいけないため、そのエリア
ごとに、強固なネットワークが必要だからです。
(「EC(電子商取引)サイトでは米アマゾン・ドット・コムがある
ように、各分野にはそれぞれ巨人がいます。彼らとはどう戦って
いくのでしょうか」という田村俊一編集長の質問に対して)
こちらも主に2つですかね。1つ目は、既存のフィールドで差別化
すること。
2つ目は進化を先取りし彼らにない全く別の魅力を打ち出すこと
です。
そもそも、楽天とアマゾンの戦略って似ているようで大きく違うん
です。
我々は数兆円のオンライン市場を目指しているわけではなく、
200兆円の全体小売り市場に入っていこうとしていますから。
(無料通話メッセージングアプリ「バイバー」の)アクティブユーザー
3億人弱、会員登録数は現在8億人です。まもなく10億人に達する
でしょう。
つまり、10億人に対してコンテンツを配信するプラットフォームを
手にした。これはむちゃくちゃ強いですよね。
競合と言われることはよくありますが、アプリの世界って、いくつか
主要なサービスは併存して残っていくんだと思います。必ずしも全て
が淘汰される必要はありません。複数の競合プレーヤーがいる
中で、どんな付加価値をつけることができるか、どういうユーザー
体験を顧客に提供できるかが重要だと考えています。
今僕が最も興味あるのは、配車サービスの「Uber(ウーバー)」や
「Lyft(リフト)」に代表されるような「シェアードエコノミー
(共有型経済)」です。
特にこの配車サービス関連は面白いですね。マイカーの1日の平均
稼働率ってどのくらいだと思いますか? 24時間で換算した場合
ですが、平均2%程度だそうです。1回の運転時間は長くないし、
1人で乗るとき他の座席は空いている。9割以上は使用されていない
んです。
この配車サービスに関しては、出資を含め様々な戦略を考えていま
すが、まだ詳しくは言えません。でも、とにかくバカデカイ市場だ
と思っているので何らかの形で関わっていきたいと思っています
(編集部注:インタビューの2日後、リフトへ3億ドルの出資を発表)。
ネット社会が広がる中で、今後通貨の概念は変わっていくと思い
ます。価値の保存ができて信用力があり、複製ができなければ必ず
しも国の保証がなくても通貨として認められる時代になるかもしれ
ません。価値の創造が通貨だけに頼っていた時代は終焉を迎える
ことになるでしょう。そうなると、では国は何のためにあるのか
という話になる。
今年の10月には、シリコンバレーに初のオフィス拠点を開設
します。
稼働するのは6月からなのですが、段階的にかっこいいやつに
しようと思って。
これまでの度重なる買収で米国には10何個の拠点が分散して
あります。しかし、経済圏を作っていくにはロケーションが
一緒でなければダメ。このシリコンバレーオフィスを米国の
統括拠点と位置付け、今後機能を集約させていきたいと考え
ています。
この業界はまだまだゴールドラッシュが続いています。
すさまじい埋蔵金がたくさん埋まっている。ビジネスモデルで
言えば、シェアードエコノミーやオプティマイゼーション
(最適化)などがこれ(埋蔵金)に当たるのではないでしょうか。
そんなゴールドラッシュの市場で踊り場はあり得ないし、競合を
気にしているのもおかしい。ネットビッグバンはまだまだ続き
ます。

楽天会長兼社長 三木谷 浩史 氏
(『日経ビジネス』 2015.03.30 号 P.085)
「日経ビジネスDigital」 2015.03.30
キーワードは、日本から世界へです。
楽天は国内でNo.1のネット通販サイトです。
ですが、世界に目を向けると「アマゾン」や、先ごろ米株式
市場に上場した中国のEC(電子商取引)サイト「アリババ」
があります。
無料通話メッセージングアプリを例にとれば、国内では
「LINE」、海外では米フェイスブックが買収した「「WhatsApp」と、
中国テンセントが運営している「WeChat」という巨人がいます。
楽天の「バイバー」が、今後どこまでやれるかということが注目
されます。
ただ、三木谷氏は、「1つのサービスだけでなく、複数の
サービスを利用してもらうことで様々な相乗効果が生まれる」
(P.084)と語っています。
三木谷氏は自信に溢れた表情で、次々に、田村俊一編集長の
突っ込んだ質問にてきぱきと答えています。
「我々は数兆円のオンライン市場を目指しているわけではなく、
200兆円の全体小売り市場に入っていこうとしています」(P.086)
という発言は凄いことですね。
大言壮語は、ソフトバンクの孫正義社長の「18番」かと思って
いましたが、孫社長だけではありませんでしたね。
三木谷氏のインタビュー記事の一つ前の記事のタイトルは、
「正念場の楽天経済圏」というものです。全6ページにわたって、
シリーズ「企業研究」の事例として扱っています。
この記事からグラフ等を含め、少しだけ内容をご紹介しましょう。
まず、国内と海外の売上高構成比率を示す円グラフから。

・売上高構成比率
「日経ビジネスDigital」 2015.03.30
海外の売上高構成比率は14%。成長余地はあると考える
べきでしょう。
次は、流通総額(取扱総額)の推移です。

・楽天の流通総額推移
「日経ビジネスDigital」 2015.03.30
毎年、高成長していることが分かりますね。
最後は、カギを握る2大事業のイメージ(概念)図です。

・バイバーの「プラットフォーム化」イメージ図
「日経ビジネスDigital」 2015.03.30

・イーベイツ経由で競合データの取り込みも
「日経ビジネスDigital」 2015.03.30
イーベイツの注目点は、「イーベイツは米アマゾン・ドット・
コムなどのEC大手やリーバイスなどのメーカー、2600以上
のECサイトと連携済みだ」(P.082)ということです。
競合のデータを取り込めるという点は、大きな優位性を持って
います。
「楽天は今後も、海外展開の拡大に役立つ優良なベンチャー
企業の発掘に力を入れていく方針だ」(P.082)ということです。
今回は通常より長くなりましたが、ぜひお伝えしたい内容だ、
と考えたからです。
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