社員の意識を変える
変化はそこから始まる
矢野 薫(やの・かおる)氏
[NEC会長]
2006年4月に社長に就任してすぐ、難問に
直面しました。当時、NECは国内の証券
取引所とともに米ナスダックにも上場していた
のですが、コンピューターシステムの売上高
計上の仕方を巡って、米国の監査法人と意見
が対立し、上場廃止の危機にさらされたのです。
日本の会計基準では一般的な計上方法が、
米基準では認められないようになったという
問題が、その背景にありました。結局、米国の
監査法人とは最後まで折り合えず、最終的に
ナスダックを上場廃止となったのですが、
これは重い問題でした。
市場の信頼を失うことになりますし、社員の間
には動揺が広がりました。
私がやったのは、会社の理念が社員の行動に
つながるように改めて分かりやすくすることでした。
「ビジョン」と「バリュー」。そう名付けた考え方の
指針です。
私が考えたのは、社員に持ってもらいたい価値観
や行動原理を分かりやすく示すことでした。
それまで長い間成長できずに伸び悩んだ原因の
一つを私は大企業病だったように思いました。
だからこそ、私は、それを変えるために社員がなす
べきことを価値観や行動原理として表したのです。
イノベーションが会社のビジョンだと頭に焼き付く
ほど思い込ませ、自助が大事だと唱えるからこそ、
意識が高まるというようなことが、そんな時に効果
を表すのだと思います。
分かりやすい言葉を掲げ、社員がそれを咀嚼して
考えるようにする。意識改革はそんなところから
始まるのではないでしょうか。
(2014.11.24号から)
小難しい言葉を掲げても、社員が理解できなければ、
絵に描いた餅になります。
分かりやすく、行動に移しやすい言葉が大切なことは、
誰でも理解できるでしょう。
ですが、そうしたスローガンを作ることは、決して易しい
ことではありません。
内容を十分に理解し、社員が共通意識を持てるように
するには、一工夫もふた工夫も必要でしょう。
私の経験をお話しますと、ある会社で「クレド(Credo)」
を作成しました。
ですが、結果的に根付きませんでした。
私はクレドの真意を十分に理解していなかったことと、
クレドを浸透させようと焦って、押し付けようとした
ためでした。
クレドとは、「志」「信条」「約束」を意味する言葉です。
「企業の信条や行動指針を簡潔に記したもの」です。
まさに、矢野さんが目指したものと同じです。
クレドには具体的な行動は書かれていません。
抽象的な言葉で書かれています。
クレドをいつでも確認できるようにするため、
小さな紙に印刷し、いつも身につけている必要が
あります。
なぜなのか?
それはマニュアルとは違い、書かれたことしかしない、
固定化された行動を示すものではないからです。
その都度、自分で判断し、行動するための指針を
示すだけだからです。
クレドで有名な企業には、リッツ・カールトンや、
ジョンソン・アンド・ジョンソン、P&Gなどがあります。
「意識改革」を行なうには、長い時間をかけて、
じっくり浸透させる必要があります。
熟成期間が必要なのです。
焦りは禁物です。
私は自らの体験を通じて、そのことを学びました。
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