サンタバーバラ校教授の著書から(1)
昨夜は、3人(赤崎勇・名城大学終身教授、
天野浩・名古屋大学大学院教授、
中村修二・米カリフォルニア大学
サンタバーバラ校教授)の日本人研究者が、
ノーベル物理学賞を同時受賞したことで、
今日まで日本中は、この話題で持ちきり
だったのではないでしょうか。
日本中に大きなパワーを与えた、
と考えています。
今日に至るまで、日本で世界に通用するものは、
アニメとコスプレなどのサブカルチャーと、
ゲーム機・ゲームソフトしかない、
と海外から揶揄(やゆ)されることが多く
ありました(今では「クール」と評価され、
ポップカルチャーとなりましたが)。
今後は、そのような侮蔑的評価は少なくなる、
と思っています。
といいますのは、3人の研究者が受賞したのは、
世界中に大きく貢献する発光ダイオード(LED)
の開発で、中心的役割を果たしたからです。
既に実用化という実績があります。
その上で、ノーベル物理学賞を受賞したからです。
前回の記事と一部重複しますが、光の三原色は
ご存じの通り、赤・緑・青(RGB)です。
赤と緑のLEDは既に開発されていましたが、
青は世界中の研究者や企業が開発にしのぎを
削っていたのにもかかわらず、開発できず、
「20世紀中には不可能」
と考えられていました。
ところが、20世紀末までに日本人研究者に
よって開発されていたのです。
この事実は、非常に重かったと思います。
LEDは今や、至るところで使用されています。
信号機や白色蛍光灯の代替品としての室内灯、
イルミネーション、電光掲示板など用途は拡大の
一途をたどっています。
ただし、懸念すべきこともあることを忘れては
ならないと思います。
山中伸弥・京都大学教授も語ってたことを、
もう一度、振り返ってみましょう。
(『日経ビジネス』(2011.10.10号)の編集長インタビュー から)
理系離れは深刻です。日本では研究者の地位
があまりに低い。若い人たちに研究者が魅力的
な仕事に見えていません。このままでは担い手
がいなくなってしまうと懸念しています。
さて、本題に入ります。
私が読了した中村さんの著書3冊のうち、
2冊の著書の中から、中村さんの特に強い思いが
伝わってくる言葉をご紹介していきます。
次回には、12年前に自分のサイト
本当に役に立つビジネス書
に掲載した書評をご覧いただきます。
残りの1冊の書評です。
最後までお付き合いください。
これ以上一気に読むのは辛い、と感じられましたら、
二度、三度に分けて最後まで目を通していただき
たい、と願っています。
2冊を先に、ご紹介しておきましょう。
1.『負けてたまるか! 青色発光ダイオード
開発者の言い分』 中村修二 朝日新聞社
2004年3月25日 第1刷発行

2.『ごめん!』中村修二 ダイヤモンド社
2005年7月14日 第1刷発行

今回はまず、『負けてたまるか!』から中村さんの
考え方がよく分かる言葉をご紹介していきます。
次回は、『ごめん!』から同様にお伝えしていきます。
中村さんの言葉を読むと、学ぶことがたくさんある
ことに気付かされます。
(『負けてたまるか!』PP.7-8)
99年に会社(日亜化学工業 註:藤巻隆)を
辞めて、翌年カリフォルニア大学サンタバーバラ
校(UCSB)の教授になったのは、米国に
比べて極端に低い研究者への報酬(ほうしゅう)
や閉鎖的な日本社会に対する不満があったからだ。
都会の大学のオファーを断ってUCSBにしたのは、
用意された研究環境はもちろん、自然が豊富だと
いうサンタバーバラの住環境を重視したからでも
ある。
たとえ三流コースの人生でも、人間らしい生活を
するなら断然、都会より自然のある田舎だ。
特別、勉強が好きだったわけでもなかった。
田舎の会社に職を得たのも子育てのためを考えた
からだ。
中村さんは徳島大学工学部電子工学科を卒業後、
同修士課程を修了し、1979年に地元日亜化学
工業に入社しています。
(上掲書 P.12)
科学者には想像力と創造力が必要だと思っている。
この二つの能力は、とりわけ自然との触れ合いで
身に付くものだ。
(上掲書 P.16)
今の子どもが自然と触れ合う機会を失いつつ
あるのは非常に残念なことだ。私は自然の中
で育てることが、教育の第一歩だと思っている。
身近な疑問は、好奇心や研究心を養う。
子どもは自然の中でこそ育てるべきなのである。
(上掲書 PP.27-28)
私が裁判でお世話になっている担当弁護士の
升永(ますなが)英俊さんは、東大法学部と
東大工学部の化学工学という文系理系二つの
学部を卒業している。日本では非常に珍しい
存在だと言えるが、米国では理系学部を出た
弁護士など、ごく普通の存在なのだ。
(上掲書 P.44)
自分の好きなこと、やりたいことを精一杯
やっている日本人は少ない。今の日本人は、
自分なりのシッカリした価値観を持てない
でいるのだろう。
(上掲書 P.49)
米国には、失敗した人間がリベンジできる
システムがある。失敗を恐れず、何度も
チャレンジできるシステムがなければ、
いくら日本でベンチャーを振興しようとして
もムリなのではないだろうか。
(上掲書 P.51)
国際的な基準に比べれば、当時の私の待遇は
不当に低かった。いつしか私には、
「スレイプ・ナカムラ」という国際的なあだ名が
つけられていたのである。
言うまでもない。スレイブというのは「奴隷」
という意味だ。
(上掲書 P.53)
公式や定理など、そんなものを丸暗記しても
なんの足しにもならない。最も重要なのは、
自分で自分の言葉を見つけることなのである。
(上掲書 P.64)
人間が自分の本当の姿を知るためには、
やはり相対的、客観的な視点が必要だ。
自分の国の中にばかりいては、そうした
視点を得ることはできない。
(上掲書 P.75)
私は空を見上げるのが好きだ。世界中どこの
空も青く澄み透っている。この空の色は、
私が現在住むサンタバーバラでも同じように
青い。
好きな色は青だ。それは故郷の海や空の色だ。
そして「20世紀中には実現は不可能」と
されていた青色発光LEDの青だ。その青を
発光させることに、最初から本気で挑戦したい
と考えたわけではない。
(上掲書 P.95)
世界中の研究者が血眼(ちまなこ)で実現しよう
としている青色LEDだ。実現できる可能性は
ほとんどない。万に一つの幸運に向かって努力
するしかなかった。
(上掲書 P.129)
やはり、自分の好きな研究について、トコトン
気がすむまで考えられるようでなければ生きて
いる気がしない。それなら死んだも同然である。
(上掲書 P.134)
自分を信じて得意なことを生かし、想像力を
発揮して考える。そうすれば、なんでもできる
し、不可能なことなどない。
環境の変化に戸惑い、自信を失いかけている
人もいる時世かもしれないが、気分一新して
挑戦し続けてほしい。
(上掲書 P.154)
私の持論は、「人間、好きなことだけをとことん
つきつめてやっていけば、誰もがすばらしい人生
を送ることができる」というものだ。
少々読み疲れたかもしれません。
ですが、引用したどの言葉にも
「最も重要なのは、自分で自分の言葉を見つける
ことなのである」
という共通項があるのです。
私はこの言葉に最も共感しました。
中村さんの思いが凝縮している、と考えています。
お疲れ様でした。
藤巻隆
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