がん治療の常識・非常識―患者にとっての
最良の選択とは? (ブルーバックス) 田中 秀一
を読んで、主要ながん治療成績は数十年前と
ほとんど変わっていないことを知り、愕然としました。
本著者の田中秀一氏は、読売新聞社の記者で、
新聞協会賞を受賞しています。
丹念な取材でがん治療の最近の状況を1冊に
まとめました。
この本を読むまで、がん治療は相当進歩して
いるはずだ、という先入観を持っていました。
しかし、あっけなくその気持ちは吹き飛ばされ
ました。
がん治療には大別して3つの方法があります。
「手術」「放射線療法」「抗がん剤治療」です。
がんが悪性の病気である理由は、「浸潤」と
「転移」があるからです。
「浸潤」というのは、「周囲の臓器や組織に
入り込んでいくこと」(P.25)です。
「転移」はご存知のとおりです。
「血液やリンパの流れに乗り、離れた臓器に
飛び移って増殖を続けること」(PP.25-26)
です。全身に転移すれば、手術もできず、
手の施しようがないということになります。
私が最初に驚いたのは、肺がんと子宮頸がんの
治療成績は実際にはいっこうに良くなっていない、
という指摘でした。
本著から引用します。
(PP.15-16)信じられないかもしれないが、肺がんを治す、
という点に関して、40年間ほとんど進歩が
みられないのである。
肺がん検診の普及で早期発見が可能になり、
肺がんはよく治るようになった、とも言われ
ているが、データを見る限り、肺がんの治療
成績は実際にはいっこうに良くなっていない。
子宮頸がんの5年生存率も、1960年代以降、
改善がみられない。特に病状が進んだ3期、
4期のがんの生存率は、依然として低い状態が
続いている。
さらに、がんの治療が難しい理由を指摘しています。
(P.27)がんの治療が難しい理由の第一は、がん細胞が
自分自身の細胞に由来するものであることだ。
細胞やウイルスなど外部から侵入してきた
病原体によって引き起こされる感染症であれば、
抗生物質や抗ウイルス剤を使って病原体だけを
攻撃、排除することができる。ところが、
がん細胞は、自らの細胞に近い性質を持っている
ことから、抗生物質で病原体をやっつけるような
わけにはいかない。
(PP.27-28)がん治療が困難である第二の理由は、がんが持つ
「転移」という性質である。がんは無限に増殖する
性質を持っているから、治すには根こそぎにする
必要がある。そのために最も手っ取り早い方法は、
がんを手術で臓器毎取り除くことだ。放射線治療も、
かなりの効果があることがわかってきた。
がん治療には、主に「手術」「放射線療法」「抗がん剤
治療」があると言いました。
しかし、残念ながらどの方法も「延命」させることは
できても、「完治」させることは現在のところできま
せん。
今月19日に、「NHKクローズアップ現代」で興味
深い話題が取り上げられました。
がん細胞自身が増殖するのではなく、「がん幹(かん)細胞」
というものの存在が確認され、これががん細胞を増殖させる
がんの「親分」らしい、という報告でした。
大阪大学大学院の森 正樹教授の研究グループが、発見した
そうです。まだ、研究段階なので、今後臨床データを蓄積し、
今後のがん治療に役立てたいといった内容でした。
「がん幹(かん)細胞」は普段は活動していないため、発見する
のが難しいらしいですが、「がん幹(かん)細胞」だけを集中
して攻撃することができれば、がんの増殖を抑えられるだけで
なく、がんそのものを治療することも可能かもしれません。
今後の研究が期待されます。
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