バックナンバー(55)
ここに掲載しているのは、管理人・藤巻隆が
携帯サイトで運営していた時のコンテンツです。
2007年1月8日号からスタートしています。
1カ月分毎にまとめてあります。
● 2011.07.25
(No.3)<230>
多様化なくして未来なし
長谷川 閑史(はせがわ・やすちか)氏
[武田薬品工業社長]
日本企業であっても、21世紀はダイバーシフィケーション(多様化)とグローバリゼーションの2つの流れを上手く取り込まない限り、成長も生き残りもあり得ないということです。
最大の課題は、日本の武田本社の国際化、多様化です。欧州や米国に本拠地がある企業は、海外の優秀な人材に本社を経験させることが普通にできる。ところが日本企業は、これがなかなかできない。それを変えていかないと、ほんとうの意味でのグローバル企業になれないので、計画的に進めています。
部下にやれと言いながら俺は別だよというのは武田では通用しません。
当社は京都大学と共同研究契約を結んでいますが、学術機関とはさらに積極的に協力していきます。当社の研究開発費は年間3000億円で、研究者の数は1200人程度。社外にいる何十万人の研究者と協力しキャッチアップしていくのは、当たり前のことなんですよ。
● 2011.07.18
(No.3)<230>
「七人の侍」でアジア拓く
三宅 占ニ(みあけ・せんじ)氏
[キリンホールディングス社長]
余計なところにコストをかけるべきではない、というのは震災の教訓です。「生茶」のキャップは緑にしたいとか、いろいろ現場で要望はありますが、そのために全体の生産量が落ちては意味がない。白のキャップだっていいじゃないかと。その方が生産性が10%上がるらしいですよ。
原点に戻るには、マインドや働き方を変えないとダメなのではないか。熾烈なシェア競争をしている時に我々はどこを見ていたのかというと、お客様ではなくアサヒばかり見てしまっていた。アサヒがこういう商品を出したからうちも出さなくちゃいけない、と。いったいキリンは何をやっているんだと長年のお客様は憤り、落第の通信簿をもらってしまったわけです。
国内最大の課題は「総合飲料戦略」です。キリンビール、キリンビバレッジ、メルシャンなどで、資源配分だとか、コスト削減や売り上げ面のシナジーをしっかりやっていく必要がある。少子高齢化で市場は厳しいですが、ビアテイスト飲料の「フリー」が新しい需要を創造できたように、カテゴリーの枠に捉われないような商品開発に取り組むことが課題ですね。
● 2011.07.11
(No.2)<229>
新興国でも「人が基軸」貫く
井上 礼之(いのうえ・のりゆき)氏
[ダイキン工業会長兼CEO(最高経営責任者)]
コマツや資生堂など、中国で成功している会社は現地法人を経営する権限を中国人に任せていると聞きます。それだけでなく、現場で働く工員には技能を教えて熟練工に育てているようです。教えた工員が他社に転職することも覚悟のうえで、技術の出し惜しみをしない。溶接なら溶接で最高の技術を教わっていると彼らが実感できるようにする。そして優秀な人材は職場長などに抜擢します。
断崖絶壁に追い込まれた時に、(給水しなくても加湿できる機能のある)「うるるとさらら」というヒット商品が誕生しました。本当の危機に直面した時に、力を発揮するのが人間の可能性です。
ただ、過信や慢心は禁物です。ダイキンはリーマンショックの時に減収減益にはなりましたが、赤字にはならなかった。こんな時には過信に陥りがちです。実際、そんな現象が役員陣を含めて、ところどころに見えます。品質問題も心配しなければなりません。これから新興国向けに低価格の商品を作っていくわけですが、その品質基準がまだ完成していません。
新興国でボリュームゾーンを攻めるには、最先端のエアコンはコストが高すぎます。ですから下請けの部品メーカーを抱える「垂直統合」ではなく、汎用化した部品をライバルと一緒になってでも大量生産する「水平分業」にして、徹底的にコストを下げる。
一方で新興国は国によって空調の好みが違います。例えばシンガポールでは部屋全体が寒いというほど冷やします。風が体に直接当たるエアコンが好まれます。
このため経営計画では、商品開発を日本、米国、欧州、中国、タイ、インドの6地域に分散し、世界の8地域でマーケティング機能を強化する方針を打ち出しました。
ダイキングループとして、全体最適と部分最適をうまく調整する人材を育てないと、下手をすれば、方向性を定めずに暴走するようになり、最重点の市場で他社に負けてしまいます。
結局、外国人でも本当にダイキンの経営理念を理解し、それが好きだという人材を採用し、育成できるかどうかが重要になります。
● 2011.07.04
(No.1)<228>
世界中でエネルギー投資
ペーター・レッシャー(Peter Loscher)氏
[独シーメンス社長兼CEO(最高経営責任者)]
シーメンスでは、社内で「メガトレンド」と呼んでいるものに戦略的に経営資源を集中してきました。
メガトレンドとは、「都市部への集中」「人口の増加、高齢化」「気候の温暖化」「経済のグローバル化」といった、将来に影響を及ぼす世界的な潮流のことです。ここに成長市場を見つけます。
このメガトレンドに沿って選択と集中を進めた結果、現在の事業部門は「インダストリー(産業機器)」「エネルギー」「ヘルスケア(医療機器)」の3つに要約されています。
私が就任した当時は、旧幹部らの不正支出事件などもあり社内が混乱していました。しかし需要なのは「危機を見逃すな」ということです。危機的状況というのは、何を変えなければならないか、何を改めて強調すべきかを見極める機会でもあります。
当時のシーメンスには、各事業や各地域におけるリーダーシップが不足していました。私は従業員との対話を続けることで、リーダーシップの開発を通じた組織の強化を図りました。また人材育成の面では、社内の研修施設「リーダーシップ・アカデミー」において、教育を強化しています。
その結果、日本法人では初の日本人CEOが、中国法人でもはつの中国人CEOが登場し、各地域の事業拡大に取り組んでいます。私は現在も仕事の時間の7割を使って世界中を回り、従業員と対話するようにしています。
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