堂本光一「エンドレスショック」大阪最終公演開幕

元星組娘役トップ、綺咲愛理ヒロインを好演

 

堂本光一が、2000年から25年間というロングランを続けてきたミュージカル「エンドレスショック」(堂本光一作、構成、演出)が、最終公演を迎え726日から大阪公演が開幕した。45月の東京・帝国劇場に続く公演、東京公演が「本編」とコロナ禍の3年後を描いた「エターナル」版の2バージョンでの公演だったが、大阪と9月の博多座公演は「本編」のみの公演で、ヒロイン役元星組娘役トップ、綺咲愛理好演した。

 

「ショック」は1991年の少年隊「playzone」公演からスタート、堂本が引き継いで進化を重ね、ミュージカルを超えた新たなエンタテイメントのジャンルを構築した。少年隊の公演から観劇していて、堂本バージョンになってからも節目には見ることができていて今回で三度目くらいだが、作品の完成度はますます上がってきている。

 

ニューヨークのオフブロードウェ元女優の日本人女性がオーナーの小劇場があって、そこに出演する日本人の俳優たちがブロードウェイの大劇場に進出して大成功するというストーリー。この作品が初演された2000年当時、実際のブロードウェ知っている目には、この展開がどうしても絵空事に見えて作品に乗れなかったは確か。しかし、近年の韓国ミュージカルの台頭や、ブロードウェ舞台自体のグローバル化、さらには大谷翔平の活躍ぶりに熱狂するアメリカ人をみていると、ブロードウェイの大劇場堂本が出演して大成功することが決して夢ではなく現実味を帯びてきていて、ストーリー自体にリアリティがでてきたことに驚くとともに、堂本の超人的なパフォーマンスのすばらしさに感動を禁じえなかった。

 

幕開きの華やかなレビューシーンは劇中劇。いきなり客席まで飛び出すフライングで度肝を抜く。これは小劇場公演の千秋楽という設定。打ち上げの席で若きスター、コウイチ(堂本)は「次はシェイクスピアをやりたい」ともらすが、ナンバー2のユウマ(中山優馬)たちは大反対。オーナー(島田歌穂)の娘リカ(綺咲)はコウイチを慕っているがユウマもリカにぞっこん。そんな時、ブロードウェの大劇場への出演の話が舞い込み、世話になった小劇場を捨てるかチャンスをものにするか若者たちの心は揺れる。大劇場出演のオファーを素直に喜べないコウイチの複雑な心情が素の堂本の人柄とダブる。

 

 一幕のハイライトが大劇場でのスペクタクルシーン。超絶フライングもまじえてまるでサーカスのような体を張ったエンタテインメントを繰り広げた。二幕は劇中劇でも二幕のジャパネスクバージョンで幕開け。太鼓とのコラボによるアクロバティックダンス、布を使ったフライングなど一瞬たりとも見逃せない。20段はあろうかと思われる大階段からの階段落ちもただただ驚きの一語。そして心技体がひとつとなった見事なファイナルステージへとなだれ込む。

 

 演出も担当する堂本は、もうこの舞台のすべてを手中に入れていて計算されつくした余裕たっぷりの動きに安定感などというものではない超人的なスキルを感じさせた。これが最後というにはあまりにも惜しい。さらなる新たな挑戦に期待したい。

 

 コウイチを慕いながら劇団のナンバー2ユウマ役の中山優馬からもプロポーズされるヒロイン、リカ役に起用された綺咲は、華やかな雰囲気をたたえながら歌、ダンス、日舞と宝塚時代に培った実力を存分に発揮、ヒロイン役としての重責を全うした

 

 東京公演では前田美波里とダブルだったオーナー役は島田のワンキャスト。コウイチやユウマを温かく見守りながら元女優だったというキャリアを生かした歌とダンスも披露、リカの母親としての包容力も豊かで充実した歌声はいわずもがな。作品の要を担っていた。

 

 佐藤勝利をはじめサポートメンバーのチームワークも抜群、コウイチとユウマたちが対立する構図にやや理屈っぽいところもあるが、若さゆえの情熱からきたエネルギーの発露と思えば納得がいった。それはともかく、ショーシーンのダイナミックな迫力は他では見られないすばらしさ。ブロードウェイ進出も決して夢ではないだろう。

 

大阪公演は18日まで。9月の博多座の後、11月に東京・帝国劇場での凱旋公演が決まっている。

 

©宝塚歌劇支局プラス81日記 薮下哲司