薮下哲司の宝塚歌劇支局プラス

映画・演劇評論家の薮下哲司(元スポーツニッポン特別委員)が宝塚歌劇はもとより映画、演劇など幅広い分野のエンターテイメント情報をお伝えしていきます。


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 ©宝塚歌劇団

 

明日海りお主演、花組公演、ミュージカル「ハンナのお花屋さん」開幕

 

花組トップ、明日海りお主演のミュージカル「ハンナのお花屋さん-Hanna‘s Florist-」(植田景子作、演出)が、9日、東京・赤坂ACTシアターで開幕した。今回は公演の模様をお伝えしよう。

 

「ハンナ―」は、ロンドンの閑静な高級住宅地ハムステッドヒースの一角で花屋を営むデンマーク人のフラワーアーチスト、クリスが、仕事を探しに東欧からやってきたミアとの出会いを通して、自らのアイデンティティーを見出していく物語。植田氏のオリジナルで、明日海が、花が大好きというところからインスパイアされての設定だという。時代は現代。東欧や中東からの難民問題を抱えるロンドンの現況をバックに取り入れながら、ほのぼのとした物語のなかに社会性をちりばめた、いかにも植田氏らしい作品で、インターネットやチャットなども取り込んで、舞台に時代を映し出した。ただ、クリスとミアの話より枝葉の話に時間をとられ、肝心の二人のラブストーリーが薄味で、ラストも予定調和的、心にしみいる感動とまではいかなかった。

 

舞台は、北欧の田舎を想像させる自然の中、野原で眠っているクリス(明日海)の周りを、幼いクリスと両親たちが幸せそうにピクニックに興じている。そんなクリスの幻想的な夢の場面から始まる。場面変わってロンドンのクリスが経営する花屋の店先。きょうはクリスの誕生日。店員たちがサプライズパーティーを開こうと準備をしている最中、そこへクリスが栄誉あるフラワー賞でブロンズ賞に決まったという吉報がもたらされる。お祝いのダンスナンバーが楽しい。と、この辺まではよかったのだが……。

 

人気の花屋だが、いくらなんでも店員がお客より多い!いまどきそんな店あるかという素朴な疑問がわく。細かいことだがその辺からなんとなく現実感がなく、リアルに作っている割には肝心なところで、こんなうまくはいかないだろう思わせるご都合主義なところがあちこちにあり、何をテーマにしているのか整理しきれていない感じもある。松井るみによる回想シーンに登場するデンマークの野原のシーンの淡い色使いがよく、大石裕香振付のクラシックバレエなど、雰囲気描写は際立っているだけに残念だ。

 

とはいえ主演の明日海は、トップとしてのゆとりのようなものがでてきて、持ち前の滑らかな歌声は当然として、心なしかダンスも切れがでてきたよう。とにかく表情が明るく、ずいぶんリラックスした感じ。主人公のクリスは、フローリストとしては有能だが、幼い頃に別れた両親への思いがトラウマになっていて34歳の今も、女性にはモテモテだがなかなか結婚に踏み切れないという青年。そんなクリスをなんのてらいもなく自然体で演じた。年齢を台詞で明確に言わせたのはやや違和感があったが。

 

 

相手役のミアはもちろん仙名彩世。クロアチアからやってきた一見地味だが清らかな心を持つミアを定評のある透きとおった歌声で的確に演じ切った。ロンドンに着いたばかりの貧しい女性という設定なので、衣装もみすぼらしく、ほとんど着た切りすずめだったが、そこは実力派の仙名。演技で見せた。

 

この公演を最後に宙組に転出する芹香斗亜は、明日海扮するクリスの父親アベル。デンマーク名門貴族の長男だが、花屋の娘ハンナと恋に落ちクリスを設けるが、ハンナは王宮の生活になじめず、アベルは別の女性と結婚してしまう。クリスの回想で登場するアベルは若く優しい父親の時。芹香はそんな若い父親を生き生きと演じている。出番は少ないが印象的に登場する。

 

そして、クリスの母親でアベルが恋したハンナ役に大抜擢されたのが研2の舞空瞳。なんとタイトルロールである。回想場面での登場だが、何度も繰り返して登場するので実質ヒロインといってもおかしくない。まだあどけない少女のような雰囲気を残しながらも、芯のある歌声が素晴らしく、一方、芝居の時には表情が一瞬にして変わり、しっかりした演技を見せる。末恐ろしい大器だ。「はいからさん」の華優希と「ハンナ」の舞空が、次回作「ポーの一族」でどの役を演じることになるのか注目したい。

 

花屋の仲間たちはジェフ役の瀬戸かずやを筆頭に、ベテラン店員、ライアン役の綺城ひか理、web担当のトーマス役で優波慧、ヤニスの飛龍つかさと若手人気スターがずらり。娘役もアナベルの音くり寿、チェンリンの美花梨乃らが彩を添えた。男役では瀬戸は別格として優波がずいぶん得な役回りで、愛音羽麗を思わせる雰囲気もあって強く印象に残った。デパートの企画部長役を演じた羽立光来のぶっ飛んだ芝居もおおいに笑わせた。

 

フィナーレは、現代のロンドンを意識してか娘役の真っ赤なミニなど男役も含めてやや奇抜な衣装。芝居が幻想的で印象的なシーンで終わっただけになんだか蛇足。カーテンコールの挨拶だけでよかったように思った。

 

©宝塚歌劇支局プラス10月11日記 薮下哲司

 

 

 

甲南女子大学「宝塚歌劇講座特別編」開催のお知らせ

 

◎…甲南女子大学(神戸市東灘区)では、2007年に「宝塚歌劇講座」を他校に先駆けて開設して以来丸10年になるのと宝塚レビュー90周年をダブルで記念、11月19日(日)15時から大学内の教室で「宝塚歌劇レビュー90周年に寄せて」のタイトルで特別講座を開催します。出演は三木章雄(宝塚歌劇団演出家)出雲綾(元月組)薮下哲司(甲南女子大学非常勤講師)司会は永岡俊哉(羽衣国際大学准教授)が務めます。受講は無料ですが、事前に申し込みが必要です。以下の甲南女子大学ホームページ申し込みフォームからお申し込みください。

http://www.kokuchpro.com/event/fd0bb0c2dff10e687cfce97b92546b2a/

 

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