インスタグラムdaichimao_officialより転載



柚香光×和希そら×大地真央コンサート

そして「シェルブールの雨傘」

 

花組トップスター、柚香光のスペシャルコンサート「BE SHINING!」華麗なる時(藤井大介作、演出)雪組の人気スター、和希そらのディナーショー「Vie.」(野口幸作構成、演出)元月組トップスター、大地真央の芸能生活50周年記念コンサート「PURE GOLD」(寺崎秀臣構成演出)そして元雪組娘役トップスター、朝月希和の退団後初舞台「シェルブールの雨傘」(荻田浩一演出)と12月に上演されたステージをまとめて報告しよう。

 

宙組生の不幸な出来事から3か月初動の躓きが仇となって公演の中止はおろか来年の110周年記念行事がすべて白紙という歴史を揺るがす事態に陥ってしまった宝塚。追い打ちをかけるよう新たな問題も発生、宝塚を愛する者にとってなんともやりきれない毎日が続き、舞台を見ても心底楽しめず、観劇評も書く意欲をそがれてついついたまってしまったが、12月も終わりに近づき、とりあえず今月の主な舞台を書き留めておくことにした

 

最初は柚香のコンサートトップ就任がコロナ禍と重なって、大劇場公演がことごとく途中で休演となった不幸なトップで、代表作はやはり「はいからさんが通る」ということになるのだろうがダンサーとしての優れた資質最大限に生かされたのは外箱公演のミュージTOPHATだった。東京公演がなかったのが残念だと思っていたのだが、このコンサートでさわりが再現されたのが最大のみどころだった。

 

大浦みずきがニューヨーク公演で踊った場面の再現などダンスの花組継承した功績は大きく、このコンサートでもそのしなやかなダンスの表現力が際立った。まだまだ宝塚の舞台で男役としてのダンスを見たかったが、2月のサヨナラ公演「アルカンシェル」でのダンサー役に期待したい。

 

ソフトな歌声と硬軟自在の演技、エッジの効いたダンスと三拍子そろい、実力ナンバーワンといっても過言ではない雪組の人気スター、和希そらが突然退団を発表。衝撃を与えたのは記憶に新しいが、クリスマスイブにディナーショー「Vie.」というフェアウェルステージを宝塚ホテルで開催、ライブ配信もあって格好のファンプレゼントとなった。

 

クリスマスソングから始まって「ボニー&クライド」はじめミュージカルメドレー、代表作となった「夢千鳥」はじめ「蒼穹の昴」「プロミセスプロミセス」などの宝塚メドレーと思い出の主題歌を歌いつぎ共演の咲城けい華純沙の軽妙なやりとりにも余裕たっぷり、最後の主演作となった双曲線上のカルテの主題歌を華純とデュエットする場面などでは宝塚生活をやり切った感があふれてい三番手とは言えはや14外部で活躍する同期生に刺激をもらってもおかしくない。男役和希をもっと見たい気はするが、本人の決断を重んじてこれからの活躍に期待しよう。

 

和希をみていてふと思い出したのが大地真央の現役時代。いろんな意味で革命児だった大地ちょっと共通点が感じられたのだ。その大地の初舞台以来50周年を記念したコンサートPUREGOLD」12月に東京と宝塚で開催された。シアタードラマシティでの大阪公演には相手役だった黒木瞳が駆け付け二人の代表作「ガイズドールズ」の名場面9年ぶりに再現変わらぬ呼吸の良さに満員のファンを魅了した。

 

エニシングゴーズ」「マイフェアレディ」「サウンドオブミュージック」「ローマの休日」と退団後に主演したミュージカルの主題歌メドレーを聞いていると大地がいかに恵まれたスターだったかということが実感できる。「マイフェアレディ」のイライザはじめどの役も今でも十分素晴らしい現在のコメディー路線も素敵だが、ぜひミュージカルの最前線帰ってほしいと思った

 

ミュージカルといえばフレンチミュージカルの元祖「シェルブールの雨傘」が東京・新橋演舞場と大阪松竹座で再演され、ヒロインのジュヌビエーブ役で元雪組朝月希和が退団後初舞台を踏んだ。カリスマ的人気の京本大我が主人公ギイ役とあって、客席は京本ファンで満員御礼という感じの公演だったが、朝月が持ち前の歌唱の実力をフルに発揮、素晴らしいヒロインを体現してくれた。母親役を春野寿美礼、ギイの叔母エリーズ役で福間むつみが出演、それぞれも確実なサポートぶりでタカラジェンヌOGの力量の確かさを証明していた。荻田演出は舞台転換の多いこの舞台をスムーズに展開、抒情味たっぷりの好舞台に仕上げたが二人が再会して別れていくラストシーンが子供を使えない生の舞台の弱さが出て映画に比べてやや弱かったのが残念だった。

 

朝月の相手役だった彩風咲奈も来年10月の退団を発表、花、月、雪組と3人のトップスターが一気に交代することになる宝塚。110年を迎えていろんな意味で大きな節目となりそうだ。演者も観客も心安らかになる日が一刻も早く来ることを祈りたい。

 

©宝塚歌劇支局プラス1226日記 薮下哲司