凰稀かなめ、壮一帆 元男役トップが女役で競演

「ロジャース/ハート」大阪公演

 

 

元宙組トップスター、凰稀かなめ、元雪組トップスター、壮一帆が女役で競演したブロードウェー・ミュージカル「ロジャース/ハート」(玉野和紀台本、訳詞、振付、演出)大阪公演が、1028日、松下IMPホールで上演された。宝塚歌劇団で起こった悲しい出来事から早くも一か月、この日は博多座星組公演のライブ配信があったものの、まだまだ素直に楽しめない毎日が続いている。そんななかOGたちの笑顔にあふれた舞台を見るとほっとしたのも確かだった。

 

「ロジャース/ハート」は、1929年代から40年代にかけてブロードウェーで活躍し「オン・ユア・トウズ」や「パル・ジョーイ(映画「夜の豹」)」などのミュージカル「マンハッタン」「マイ・ファニー・バレンタイン」はじめ数々のジャズのスタンダードを生み出した作曲家リチャード・ロジャースと作詞家のロレンツ・ハートの半生を描いたブロードウェー・ミュージカル2018年に初演され5年ぶりの再演。

 

2人の伝記映画「ワーズ&ミュージック」(1948年、日本未公開)の舞台化で、デビュー曲「マンハッタン」をはじめ彼らが生み出した数々の楽曲39曲を盛り込んだミュージカルレビュー。初演でロジャース役を演じた林翔太がハート役、エディ役他4役を演じていたに寺西拓人がロジャース役を演じ、元宙組トップの凰稀がハートの思い人の歌手ペギーを、ロジャースと結ばれるドロシーを元雪組トップの壮、女優志望の少女役など様々な役で元星組の音波みのり、元花組の音くり寿。ほかに玉野、藤岡正明、中河内正貴らが出演という豪華メンバー。

 

ロジャースとハートの出会いや成功したいきさつはロジャースの語りという形になっていて、ラジオの生放送でのライブやミュージカルシーンの再現など、ほぼ8割が歌とダンスのミュージカルナンバー。ストーリーは付け足しのような感じだったが、楽曲がどれも名曲ぞろいなので大いに楽しめた。

 

林、寺西のコンビは歌唱が安定しているほかそれぞれの個性が役によく生かされていて好印象。ペギー役の凰稀とドロシー役の壮はほかにもいろんな役を演じるがレビューシーンで並んで歌って踊るという珍しいシーンもあって、それが華やかそのもの。さすがスターオーラが違う。

 

凰稀は終盤でコンビ最後の名曲「マイ・ファニー・バレンタイン」をしっとりと歌いこむあたりはすっかり女優だった。一方、壮はコメディエンヌぶりに磨きがかかりドロシー役のさばけた感覚とともに、ラジオ生放送中のアクシデントで急きょスターの代役を演じたアシスタント役が抜群のおかしさだった。

 

音波、音のウタウマコンビも二幕冒頭で客席から登場、しっかりと歌の聴かせどころがあって美声を堪能できた。ロジャースはハートの死後オスカー・ハマースタインとコンビを組んで「オクラホマ!」「王様と私」「南太平洋」「サウンド・オブ・ミュージック」と名作ミュージカルを連発するが、ハートとのコンビ作は別人のような洒落た感覚でいまなお歌い継がれている。そんな名曲の数々を歌い継ぐ凰稀と壮に、塞いでいた気持ちが一瞬明るくなったようだった。

 

©宝塚歌劇支局プラス1030 薮下哲司