2019宝塚グランプリが決定!
作品賞は「カサノヴァ」に。主演男役賞、歌唱賞は望海風斗!

毎日文化センター(大阪)の「宝塚歌劇講座」受講者のみなさんの投票で、1年間の宝塚歌劇のベストワンを選定する恒例の「宝塚グランプリ」が25日決まった。最優秀作品賞は花組公演「カサノヴァ」。最優秀男役賞は「壬生義士伝」などの雪組トップスター、望海風斗、娘役賞も「壬生義士伝」などの雪組トップ娘役、真彩希帆に輝いた。退団した花組トップ、明日海りおは特別賞、星組トップの紅ゆずるは主演した「エクレール・ブリアン」がレビュー部門の最優秀賞に輝いた。今年最後のしめくくりとして今回はその結果を詳しくお伝えしよう。

2019宝塚グランプリ受賞作品および受賞者

最優秀作品賞
ミュージカル部門
(大劇場)花組公演 祝祭喜歌劇「カサノヴァ」(生田大和脚本、演出)
(大劇場以外)月組公演 ミュージカル「チェ・ゲバラ」(原田諒脚本、演出)
レビュー部門   
星組公演 スペース・レビュー・ファンタジア「エクレール・ブリアン」(酒井澄夫作、演出)
最優秀再演賞   宙組公演 ミュージカル「オーシャンズ11」(小池修一郎脚本、演出)
最優秀演出賞   生田大和(花組公演「カサノヴァ」の演出に対して)

最優秀主演男役賞 望海風斗(「壬生義士伝」「20世紀号に乗って」の演技に対して)
最優秀主演娘役賞 真彩希帆(「20世紀号に乗って」「壬生義士伝」の演技に対して)
最優秀助演男役賞 芹香斗亜(「オーシャンズ11」ほかの演技に対して)
風間柚乃(「チェ・ゲバラ」ほかの演技に対して)
最優秀助演娘(女)役賞 鳳月杏(「カサノヴァ」の演技に対して)

最優秀新人賞   彩海せら(「壬生義士伝」新人公演の演技に対して)

最優秀歌唱賞   望海風斗(「20世紀号に乗って」「壬生義士伝」の歌唱に対して)
最優秀ダンス賞  水美舞斗(「ドリーム・オン!」などのダンスに対して)
最優秀主題歌賞  「石を割って咲く桜」(雪組公演「壬生義士伝」から)
石田昌也作詞、手島恭子作曲
最優秀振付賞   若央りさ(星組公演「エクレール・ブリアン」ボレロの振付によって)
最優秀衣装デザイン賞 有村淳(花組公演「カサノヴァ」の衣装によって)
最優秀美術賞   松井るみ(花組公演「A Fairy Tale青い薔薇の精」の装置によって)

特別賞      明日海りお(5年半にわたって花組を牽引した類まれな求心力と宝塚史上初めての新横浜アリーナ公演の成功に対して)
         柴田侑宏(半世紀にわたって座付き作家として活躍、宝塚歌劇の発展に多大な貢献をされた功績に対して)

2019宝塚グランプリは以上のような結果になった。

作品賞ミュージカル部門(大劇場)は、明日海りおが稀代のプレイボーイ、ジャコモ・カサノヴァを演じた花組公演「カサノヴァ」と、新選組のなかでも一目置かれた田舎侍、吉村貫一郎の半生を描いた雪組公演「壬生義士伝」が、最後まで競り合い一票差の僅差で「カサノヴァ」が最優秀作品賞の栄冠を勝ち取った。「カサノヴァ」は、生田大和氏が最優秀演出賞、黒魔術に傾倒するコンデュルメル夫人役で女役に挑戦した鳳月杏が最優秀助演娘(女)役賞、最優秀衣装デザイン賞(有村淳)と4冠となった。

大劇場以外のミュージカル部門では、月組公演「チェ・ゲバラ」を星組公演「ロックオペラモーツァルト」が追う展開となったが「チェ・ゲバラ」が引き離して栄冠を獲得。作品の充実度では、この作品が今年度最大の収穫で高い評価を得た。

レビュー部門は、紅ゆずるのサヨナラ公演となった星組公演「エクレール・ブリアン」がぶっちぎりで選ばれた。紅の長所を最大限に生かしたレビューの王道というべきゴージャスなレビューで、ベテラン、酒井澄夫氏のこれまでの蓄積をいかんなく発揮した傑作だった。振付賞もこの作品から若央りさによる「ボレロ」の場面が圧倒的大差で選ばれた。


注目の主演男役賞は大接戦で、最後まで気をもませたが「20世紀号に乗って」「壬生義士伝」の2作で望海風斗が、「カサノヴァ」「A Fairy Tale青い薔薇の精」の明日海りおを2票差でしのいで2年連続の栄冠に輝いた。望海は最優秀歌唱賞も受賞。歌唱賞は「ロックオペラモーツァルト」の好唱で礼真琴が急追したがわずかに及ばなかった。望海はこの賞がスタートして以来6年連続の同賞受賞。主演男役賞は「チェ・ゲバラ」の演技で専科の轟悠が望海、明日海に続いた。

主演娘役賞も「20世紀号に乗って」と「壬生義士伝」の真彩希帆と「カサノヴァ」の仙名彩世の二人が票を分け合い最後まで予断を許さなかったが、一票差で真彩が選ばれた。ほかに美園さくらや星風まどかにも票が入った。

雪組公演「壬生義士伝」は、「石を割って咲く桜」が主題歌賞、新人公演で主演した彩海せらが最優秀新人賞を獲得、「カサノヴァ」と同じ4部門の受賞となった。ちなみに主題歌賞は「カサノヴァ」の「人生には恋と冒険が必要だ」(ドーブ・アチア作曲)が僅差で2位、新人賞は、月組の英かおとが続いた。

再演賞は星組公演「霧深きエルベのほとり」や雪組公演「はばたけ黄金の翼よ」など懐かしい作品の再演を抑えて宙組公演「オーシャンズ11」に輝いた。真風涼帆と芹香斗亜の星組新人公演の再現という話題性とともにすっかり宝塚の演目として定着した感。助演男役賞もこの作品の楽しい演技で芹香が、「チェ・ゲバラ」のカストロ役を好演した月組の風間柚乃と同点で分け合った。風間は新人賞も含めて3年連続の受賞。専科の華形ひかるが「鎌足」の演技でこれに続いた。

最優秀ダンス賞は昨年に引き続き水美舞斗がバウ公演「ドリーム・オン!」の切れ味鋭いダンスが高い評価を得て「エクレール・ブリアン」などの礼真琴らをしのいで選ばれた。

美術は19世紀のロンドンの雰囲気を色濃く再現した花組公演「A Fairy Tale青い薔薇の精」の松井るみが、ヴェニスを背景にした同「カサノヴァ」の二村周作を僅差でしのいだが、これはいずれもいい仕事で甲乙つけがたかった。

最後に特別賞は、5年半の間、花組トップの座を類まれな求心力で務め上げ、今年は宝塚史上初めて新横浜アリーナでの一万人コンサートを大成功に導いて退団した明日海りおと半世紀にわたって座付き作者として宝塚歌劇の発展に多大な寄与があった柴田侑宏氏の功績をたたえて贈られることになった。

2019年の宝塚は105周年という節目の年だったが年頭に星組の紅ゆずると花組の明日海りおという二人の人気トップの退団が相次いで発表されるという激動の年となった。二人のトップの連続退団は大きな痛手になると思われたが、くしくも年号も平成から令和と変わり、まるで予感していたかのように礼真琴と柚香光という二人のレイが退団した二人に代わって新トップに就任、宝塚歌劇にとっては奇跡のような新しい年を迎えようとしている。雪組トップコンビ、望海、真彩は紅、明日海の退団で抜けた大きな穴を埋めるに十分な充実ぶりを示しているほか、珠城りょう率いる月組、真風率いる宙組も作品に恵まれ、2020年の宝塚のラインアップは今年以上に充実、見る側にとってはまたまた忙しい年になりそうだ。

©宝塚歌劇支局プラス12月25日記 薮下哲司