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2018宝塚グランプリが決定!

作品賞は「ポーの一族」主演男役賞、歌唱賞は望海風斗!

 

毎日文化センター(大阪)の「宝塚歌劇講座」受講者のみなさんの投票で、1年間の宝塚歌劇のベストワンを選定する恒例の「宝塚グランプリ」が26日決まった。最優秀作品賞は花組公演「ポーの一族」。最優秀男役賞は「ファントム」などの雪組トップスター、望海風斗、娘役賞は「ポーの一族」「あかねさす紫の花」などの花組トップ娘役、仙名彩世に輝いた。今年最後のしめくくりとして今回はその結果を詳しくお伝えしよう。

 

2018宝塚グランプリ受賞作品および受賞者

 

最優秀作品賞

ミュージカル 花組公演 ミュージカル・ゴシック「ポーの一族」

(小池修一郎脚本、演出)

レビュー   花組公演 ショー・スぺクタキュラー「BEAUTIFUL GARDEN」

(野口幸作作、演出)

最優秀再演賞   雪組公演 ミュージカル「ファントム」(中村一徳脚本、演出)

最優秀演出賞   中村一徳(雪組公演「ファントム」の演出に対して)

 

最優秀主演男役賞 望海風斗(「ファントム」「誠の群像」の演技に対して)

最優秀主演娘役賞 仙名彩世(「ポーの一族」「あかねさす紫の花」の演技に対して)

最優秀助演男役賞 七海ひろき(「ANOTHER WORLD」「Thunderbolt Fantasy」の演技に対して)

風間柚乃(「エリザベート」「THE LAST PARTY」の演技に対して)

最優秀助演娘(女)役賞 和希そら(「WEST SIDE STORY」の演技に対して)

 

最優秀新人賞   聖乃あすか(「ポーの一族」「MESSIAH」新人公演の演技に対して)

 

最優秀歌唱賞   望海風斗(「ファントム」の歌唱に対して)

最優秀ダンス賞  水美舞斗(「セニョール クルゼイロ」のダンスに対して)

最優秀主題歌賞  「哀しみのバンパネラ」(花組公演「ポーの一族」から)

小池修一郎作詞、太田健作曲

最優秀振付賞   Oguri(花組公演「BEAUTIFUL GARDEN」花美男子の振付によって)

最優秀衣装デザイン賞 加藤真美(星組公演「Thunderbolt Fantasy」の衣装によって)

最優秀美術賞   稲生英介(雪組公演「ファントム」花組公演「蘭陵王」の装置によって)

 

特別賞      輝月ゆうま(月組公演「BADDY」「雨に唄えば」の個性的な演技に対して)

 

2018宝塚グランプリは以上のような結果になった。

 

作品賞ミュージカル部門は、小池修一郎氏が宝塚歌劇団入団前から熱狂的なファンでひそかに舞台化の機会を温めていた萩尾望都原作のカルト的な少女漫画を舞台化した「ポーの一族」がぶっちぎりのトップ。永遠の命を持ってしまった少年の時を超えた放浪の旅を幻想的に描き出した。明日海りおという逸材がいてこそ実現したとも言え、原作発表後46年目の奇跡の舞台化となった。主題歌賞も「ポーの一族」から「哀しみのバンパネラ」が選ばれた。2位も花組の天草四郎時貞を主人公にした「MESSIAH」だったが大差をつけて文句なしのグランプリだった。

 

レビュー部門も同じ花組公演「BEAUTIFUL GARDEN」が栄冠を獲得した。花組らしい花をテーマにした華やかなレビューで、若きレビュー作家、野口幸作氏のセンスあふれる佳作だった。振付賞もこの作品からOguriによる「花美男子」の場面が選ばれた。2位は一票差で猫をテーマにした雪組公演「Gato Bonito!」(藤井大介作、演出)上田久美子演出のユニークなショー、月組公演「BADDY」は2位と一票差の3位だった。

 

再演賞は月組公演「エリザベート」や宙組公演「WEST SIDE STORY」などを抑えて雪組公演「ファントム」に輝いた。装置を一新、映像を効果的に使った新演出が評価された結果となった。演出賞もその手腕が買われた中村一徳が初の受賞となった。パリオペラ座を詳細に再現した装置の稲生英介も美術賞を受賞した。

 

主演男役賞は、その「ファントム」で圧倒的な歌唱を披露した望海風斗に輝いた。「ポーの一族」「あかねさす紫の花」「MESSIAH」と充実した一年だった明日海りおと最後まで競り合ったが2票差で望海に決まった。主演娘役賞は来年4月退団を発表している花組のトップ娘役、仙名彩世。「ポーの一族」「あかねさす紫の花」の控えめでしっとりとした演技が買われたようだ。雪組の真彩希帆、退団した愛希れいかがこれに続いた。

 

助演男役賞は、来年3月退団を発表した星組の七海ひろきと月組の若手ホープ、風間柚乃が同票でダブル受賞となった。七海は「ANOTHER WORLD」の喜六役の軽妙な演技と台湾公演の「Thunderbolt Fantasy」の実質主役のショウフカン役で、風間は「エリザベート」本公演のルドルフと新人公演のルキーニ、さらに「THE LAST PARTY」の学生役も印象的だった。風間は昨年新人賞を受賞、二年連続受賞となった。助演娘役(女役)賞は、月組の憧花ゆりのを一票差で抑えて、宙組の実力派の男役スター、和希そらが「WEST SIDE STORY」(東京公演)のアニータ役が高く評価されて受賞した。

 

新人公演で活躍した期待の若手を対象にした注目の新人賞は、「ポーの一族」「MESSIAH」新人公演で好演した花組の聖乃あすかが、雪組の縣千に一票差で競り勝った。ほかに宙組の娘役、夢白あやと雪組の娘役、潤花にも票が入った。今後の活躍を祈りたい。

 

衣装デザイン賞は台湾の布袋劇の衣装を見事なまでにそっくりに再現した星組公演「Thunderbolt Fantasy」の加藤真美が受賞した。

 

最後に特別賞は、ショー「BADDY」の宇宙人、「雨に唄えば」で悪声の女優リナ・ラモントを好演した月組の実力派男役スター、輝月ゆうまがそのユニークな役作りと個性的な演技で選ばれた。

 

2018年の宝塚は珍しくトップスターに退団者がなくずいぶん安定感のある1年だった。年頭の「ポーの一族」から始まってミュージカル「エリザベート」「ファントム」と宝塚大劇場が連日満員になる公演が相次ぎ、話題の新作とヒット作を交互に上演していくというシステムが定着してきたようだ。来年は105周年を迎え、マスコミの注目度も増して、さらなる宝塚旋風が巻き起こりそうな予感。楽しみな年になりそうだ。

 

©宝塚歌劇支局プラス12月27日記 薮下哲司