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作品賞は「るろうに剣心」主演男役賞は二年連続で早霧せいな!

「2016宝塚グランプリ」決定

 

毎日文化センター「宝塚歌劇講座」受講者のみなさんの投票による「2016宝塚グランプリ」が28日決まった。「宝塚グランプリ」もことしで3回目。お楽しみイベントとしてすっかり定着してきた感がある。今回から衣装デザイン賞や美術賞など裏方の賞も増設、さらに充実した賞に。今回は番外編としてこの結果をお伝えしよう。

 

 

2016宝塚グランプリ

 

最優秀作品賞

ミュージカル 雪組公演 浪漫活劇「るろうに剣心」(小池修一郎脚本、演出)

レビュー   雪組公演 ショーグルーブ「Greatest HITS!」(稲葉太地作、演出)

 

主演男役賞  早霧せいな(「るろうに剣心」「ローマの休日」「私立探偵ケイレブ・ハント」の演技に対して)

主演娘役賞  咲妃 みゆ(「ローマの休日」の演技に対して)

助演男役賞  真風 涼帆(「エリザベート」の演技に対して)

助演娘(女)役賞 美弥るりか(「アーサー王伝説」の演技に対して)

最優秀歌唱賞  望海 風斗(「ドン・ジュアン」の歌唱に対して)

最優秀ダンス賞 愛希れいか(「Forever LOVE‼」のダンスに対して)

最優秀新人賞  永久輝せあ(「るろうに剣心」「私立探偵ケイレブ・ハント」新人公演の演技に対して)

 

最優秀再演賞  花組公演「ME AND MY GIRL」(三木章雄脚本、演出)

        宙組公演「エリザベート」(小池修一郎潤色、演出、小柳奈穂子演出)

演出賞     小池修一郎(雪組公演「るろうに剣心」宙組公演「エリザベート」の演出に対して)

生田大和(宙組公演「シェイクスピア」雪組公演「ドン・ジュアン」の演出に対して)

主題歌賞   「不殺(ころさず)の誓い」(雪組公演「るろうに剣心」から)

        小池修一郎作詞、太田 健作曲

振付賞     謝 珠栄(星組公演「ロマンス‼」第6章「友情」の振付に対して)

衣装デザイン賞 有村 淳(月組公演「アーサー王伝説」の衣装に対して)

美術賞     大橋泰弘(雪組公演「るろうに剣心」の装置に対して

特別賞    香綾しずる(雪組公演「ドン・ジュアン」の亡霊役に対して)

 

選考経過

 

第三回目を迎えた「宝塚グランプリ」。今年は、雪組公演 浪漫活劇「るろうに剣心」が圧倒的な票数で断トツの1位となった。早霧せいなはじめ雪組メンバーの熱演もさながら和月伸宏氏の原作を見事に宝塚の舞台に乗せた小池修一郎氏の演出力が評価の対象になったようだ。次点は文豪の半生をみずみずしく描いた「シェイクスピア」僅差で稀代のプレーボーイの半生を描いたフレンチミュージカル「ドン・ジュアン」が続いた。名作映画の宝塚版「ローマの休日」星組・北翔海莉のサヨナラ公演となった「桜華に舞え」が2票ずつ、轟悠主演「リンカーン」月組・珠城りょうのトップ披露公演「アーサー王伝説」期待の作家、上田久美子氏の新作「金色の砂漠」が1票ずつを獲得した。

 

主演男役賞は昨年「ルパン三世」「星逢一夜」の好演で選ばれた早霧が、星組の北翔海莉と接戦の末、「るろう―」「ローマの休日」と作品に恵まれ2票差で二年連続の受賞。男役として絶好調の今、来年7月末退団を発表したが、これもタカラジェンヌの宿命。残された時間、最後の男役を存分に楽しんでほしい。続いて娘役賞も宙組の実咲凛音とバトルの末、雪組の咲妃みゆの二年連続受賞となった。エリザベート皇妃vsアン王女の対決だったが架空のプリンセスに軍配というところ。星組の妃海風がこの二人に肉薄、花組の花乃まりあ、月組の愛希れいかが同票で続いた。

 

助演賞は男役が宙組公演「エリザベート」でフランツ・ヨーゼフの半生を見事に演じ切った真風涼帆が他を引き離して文句なしの受賞、「桜華に舞え」の西郷隆盛役を熱演した専科の美城れんがこれに続き、「こうもり」「桜華に舞え」の紅ゆずる、「るろうに剣心」の月城かなとなどに票が集まった。娘(女)役は、「アーサー王伝説」で男役ながら魔女モーガンを妖しくも美しく鮮やかに見せた美弥るりかが確実に票を集めてトップ。「ME AND MY GIRL」のマリア侯爵夫人をダブルキャストで好演した仙名彩世、桜咲彩花を引き離した。「ME―」からはジャッキーを好演した鳳月杏にも票が入った。

 

歌唱賞は「ドン・ジュアン」の望海風斗が圧倒的高得票で断トツ。「こうもり」「桜華に舞え」で実力的には決して引けを取らない北翔にも票が集まったが、残念ながら届かなかった。娘役では「シェイクスピア」の専科、美穂圭子が最高得票だった。一方、ダンス賞は月組の愛希れいかが二年連続受賞。「Forever LOVE」での切れのある大きなダンスが魅了した。次点は「HOT EYES」のソロのダンスが印象的だった朝夏まなと。

 

注目の新人賞は「るろうに剣心」「私立探偵ケイレブ・ハント」と2回の新人公演で好演した雪組の美形男役ホープ、永久輝せあが、まんべんなく票を集めて受賞した。「ルパン三世」が新人公演初主演だったが、今年は本公演でも大きな役がつき、男役としてますます磨きがかかってきた。さらなる活躍を期待したい。次点は「るろうに剣心」の弥彦少年、「ドン・ジュアン」で個性的なヒロインを好演した彩みちる。これに星組の天華えま、花組の綺城ひか理の2人が同点で続いた。ついで宙組の瑠風輝。娘役では宙組の星風まどかにも票が集まった。

再演賞は、初演20周年を迎えて再演された宙組の「エリザベート」と9年ぶりに大劇場に登場した花組「ME AND MY GIRL」が同点で並んだ。この賞は「エリザ」のぶっちぎりになるかと思ったのだが棄権が多く、そうならなかったのが意外だった。「エリザ」の成果への物足りなさか、王道ミュージカルとしての「ME―」の良さが見直されたのか、なかなか興味深い結果となった。

 

演出賞も「るろうに剣心」「エリザベート」の巨匠小池修一郎氏と「シェイクスピア」「ドン・ジュアン」の若手ホープ、生田大和氏が同点で分け合った。ここは素直に若い生田氏の健闘を称えたい。来年は「グランド・ホテル」の演出も担当、今後の活躍が楽しみだ。星組「The entertainer」で大劇場デビューした野口幸作氏も高得点。「金色の砂漠」の上田久美子、「ローマの休日」の田渕大輔、「ヴァンパイア・サクセション」「アーサー王伝説」のベテラン・石田昌也と続いた。

 

主題歌賞は「シェイクスピア」「金色の砂漠」「The entertainer」を抑えて「るろうに剣心」の「不殺の誓い」が選ばれた。この曲は涼風真世がカバー、CDを発売している。振付は謝珠栄氏が振り付けた「ロマンス‼」の「友情」が圧倒的な支持で受賞した、北翔の退団を惜しみ、組のメンバーとの友情と別れを、ネオンサインの照明とともにスタイリッシュに振り付けた場面で、さよならにありがちな湿っぽい雰囲気ではなく、非常に心地よい場面だった。これは納得の選定だった。

 

衣装デザインは「アーサー王伝説」の魔女モーガンのドレスに代表される個性的な衣装をデザインした有村淳氏に。有村氏はほかにも「るろうに剣心」など多くの作品があるが「アーサー王」での受賞。装置などの美術は「るろうに剣心」の大橋泰弘氏に輝いた。冒頭の早霧剣心の剣さばきで竹林がばさばさと美しく倒れる装置は特に印象的だった。

 

そして、特別賞には雪組公演「ドン・ジュアン」で終始、銀色のメイクで亡霊役に挑戦した雪組の香綾しずるの果敢な挑戦に惜しみない称賛が。今年の最高得点での受賞となった。ほかに北翔海莉の組の統率力に対して、またバウシンギングワークショップの企画に対して特別賞をという声があったことも付け加えたい。

 

結局、終わってみれば今年も絶好調雪組のパワーが全面にあらわれた結果となった。2017年は何組が、どんな作品が登場、そして誰が活躍してくれるのだろうか。次々にスターが現れる宝塚ならではの新たな魅力を存分に楽しみたい。では、皆さん今度こそ本当に良いお年を。来年は「グランド・ホテル」の公演評からスタートします。お楽しみに。

 

©宝塚歌劇支局プラス12月29日記 薮下哲司

 

 

 

★参考記録★ 

2015宝塚グランプリ

最優秀作品賞
ミュージカル 雪組公演「星逢一夜」(上田久美子作、演出)
レビュー   花組公演「宝塚幻想曲」(稲葉太地作、演出)
主演男役賞  早霧せいな(「ルパン三世」「星逢一夜」の演技に対して)
主演娘役賞  咲妃みゆ(「星逢一夜」の演技に対して)
助演男役賞  望海風斗(「星逢一夜」の演技に対して)
助演娘(女)役賞 純矢ちとせ(「TOPHAT」「相続人の肖像」の演技に対して)
最優秀歌唱賞 望海風斗(「アル・カポネ」ほかの歌唱に対して)
最優秀ダンス賞 愛希れいか(「GOLDENJAZZ」のダンスに対して)
最優秀新人賞  水美舞斗(「カリスタの海に抱かれて」「新源氏物語」新人公演の演技に対して) 
最優秀再演賞 該当なし
最優秀演出賞 上田久美子(「星逢一夜」の成果に対して)
       稲葉太地(「宝塚幻想曲」の成果に対して)
最優秀主題歌賞 「ルパン三世のテーマ」(大野雄二作曲、青木朝子編曲)
最優秀振付賞 KAORIalive(「1789」二幕冒頭の群舞の成果に対して)
特別功労賞 柚希礼音(6年間のトップとしての多大な貢献度に対して)