龍真咲×早霧せいな、同期生TOP最初で最後の共演!「タカラヅカスペシャル」華やかに開催。今年の宝塚グランプリ最優秀作品賞は雪組「星逢一夜」!2年連続雪組勢が総ナメ。


101年目の掉尾を飾るタカラジェンヌの祭典「タカラヅカスペシャル2015~New Century New Dream」を(石田昌也監修、構成、演出、中村一徳、稲葉太地構成、演出)が19、20の二日間、大阪・梅田芸術劇場メインホールで華やかに開かれた。今回はこの模様と、毎日文化センター「宝塚歌劇講座」受講者(24人)が選んだ「第2回宝塚グランプリ2015」受賞作品、受賞者を発表しよう。

「―スペシャル」は、昨年の大劇場から再び会場を梅芸に戻しての開催。サブタイトル通り宝塚の未来をみすえての新しい夢がテーマ。2015年に上演された作品の数々がスライド映し出される中、緞帳があがると轟悠を中心にした各組トップスターが燕尾服姿で勢ぞろい。開幕から華やかそのもの。

吉田優子作曲によるこのスペシャルのための新曲を朝夏まなと、北翔海莉、早霧せいな、龍真咲そして轟が歌いつぎながら出演者全員がラインアップ。下手の北翔が上着の内側につけた若葉マークを披露してトップとしての初参加を喜ぶと、退団を発表したばかりの龍は、ファンの前で改めて退団を報告、「早霧を置いていきますが、みなさんよろしくお願いいします」と同期の早霧を紹介、息のいいところをみせていた。

恒例のパロディコーナーはトップバッターが星組。「大海賊の博徒たち」のタイトルで「大海賊」と「ガイズ&ドールズ」のパロディーを着流し姿の博徒S(北翔)と森の石松(紅ゆずる)らで繰り広げた。なんだかマジでやくざ物を見ているみたい。続く宙組は「王家に捧ぐ校歌」と題してエジプト高校とエチオピア高校の抗争を古代の学生服姿?のラダメス(朝夏)とウバルド(真風涼帆)らでつづるなんともかわいい爆笑学園物。二部に入って雪組は「いちご白書の三日月藩」。「星逢一夜」と「アル・カポネ」さらに「ルパン三世」まで絡ませ天野晴男警部に扮した早霧と学生カポネ(望海)が繰り広げる何が何だかわけわからん!しっちゃかめっちゃかパロディー。そして月組が「Dragon night」で大評判?だった龍扮する龍宮城の亀が大活躍する「2015-龍宮城の恋人たち」。「舞音」のパロディーで美弥るりか扮するもう一人のしょぼい亀が登場、龍とのかけあいがアドリブを交えておおいに笑わせた。ロベス・ピエイルカ(凪七瑠海)らほかの出演者もすべて龍宮城の魚という設定がユニークで、パロディー合戦、今年は月組が一番だった。専科の轟、華形ひかる、沙央くらま、星条海斗も「琵琶法師のオイディプス王」で参戦。轟が「オイディプス王」の超短縮バージョンを披露、水戸黄門に扮した華形らも「ベルばら」や「風共」をどう短縮できるかに挑戦した。

一幕の歌は愛がテーマ。宝塚のさまざまな愛の歌をメドレーで歌い継いだ。最後は、先ごろなくなった作曲家、入江薫氏をしのんで轟が「霧深きエルベのほとり」から「鴎の歌」。轟はじめトップ四人が勢ぞろいして「ハロー!タカラヅカ」を歌って大作曲家の冥福を祈った。

二幕は珠城りょう、望海、紅、真風がそろっての「Dream」からスタート。夢をテーマに宝塚の名曲をメドレーした。そしてクライマックスは主題歌「New Century Next Dream」をバックにした呼び物の客席参加のコーナー。出演者が二階、三階客席まであがって振りを指導、舞台、客席が一体となっての賑やかな場面となった。そしてラストは定番「タカラヅカフォーエバー」で全員がパレード、約3時間のスペシャルを華やかに締めくくった。

今年も全国40か所以上の映画館でもライブ中継され、今年、花組が公演した台湾でも同時中継されたが、明日海以下花組が東京公演中で出演できなかったのが残念。台湾公演した明日海の台湾のファンに向けたビデオメッセージくらいはあった方がよかったのにと思った。とはいえ一年に一回のスペシャル、積極的な若手登用の傾向がここにも如実に表れ、今回も大盛況に終わったのは喜ばしい。


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さて、昨年に引き続き2回目となった毎日文化センター(大阪)の「宝塚歌劇講座」受講者(24人)の投票による「宝塚グランプリ」が23日決まった。

結果は次の通り。

2015宝塚グランプリ

最優秀作品賞
ミュージカル 雪組公演「星逢一夜」(上田久美子作、演出)
レビュー   花組公演「宝塚幻想曲」(稲葉太地作、演出)

主演男役賞  早霧せいな(「ルパン三世」「星逢一夜」の演技に対して)
主演娘役賞  咲妃みゆ(「星逢一夜」の演技に対して)
助演男役賞  望海風斗(「星逢一夜」の演技に対して)
助演娘(女)役賞 純矢ちとせ(「TOPHAT」「相続人の肖像」の演技に対して)
最優秀歌唱賞 望海風斗(「アル・カポネ」ほかの歌唱に対して)
最優秀ダンス賞 愛希れいか(「GOLDENJAZZ」のダンスに対して)
最優秀新人賞  水美舞斗(「カリスタの海に抱かれて」「新源氏物語」新人公演の演技に対して) 
最優秀再演賞 該当なし

最優秀演出賞 上田久美子(「星逢一夜」の成果に対して)
       稲葉太地(「宝塚幻想曲」の成果に対して)
最優秀主題歌賞 「ルパン三世のテーマ」(大野雄二作曲、青木朝子編曲)
最優秀振付賞 KAORIalive(「1789」二幕冒頭の群舞の成果に対して)

特別功労賞 柚希礼音(6年間のトップとしての多大な貢献度に対して)

★選考経過★

最優秀作品は「星逢一夜」に。「ルパン三世」「TOPHAT」「銀二貫」「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」の評価も高かったが「星逢―」が圧倒的支持で栄冠を勝ち取った。主演男役賞も「ルパン三世」「星逢一夜」など作品に恵まれた早霧せいながぶっちぎり。主演娘役も「星逢―」で好演した咲妃みゆが「1789」「舞音」などの愛希れいかを2票差で抑えた。
助演男役賞も「ルパン―」「星逢―」で好演した望海風斗。「ルパン―」で銭形警部を熱演した夢乃聖夏も健闘したが届かなかった。助演娘(女)役賞は「TOPHAT」などで実力を如何なくなく発揮した純矢ちとせが二年連続の栄冠に輝いた。「黒豹の如く」の妃海風、「星逢―」などの大湖せしる、「アーネスト・イン・ラブ」などの悠真倫も健闘した。

最優秀歌唱賞は「アル・カポネ」ほかで望海風斗が「1789」などの龍真咲「王家に捧ぐ歌」の朝夏まなと、「カリスタの海に抱かれて」の美穂圭子らを押さえた。最優秀ダンス賞は「GOLDENJAZZ」の愛希が圧倒的支持を集めた。新人賞は「カリスタの海に抱かれて」「新源氏物語」新人公演での清新な演技が好感を持って迎えられた水美舞斗が、「ルパン三世」の永久輝せあ「相続人の肖像」の桜木みなとを押さえて受賞。娘役の真彩希帆、星風まどか、彩みちるの名前も挙がった。

再演賞は「王家に捧ぐ歌」「ガイス&ドールズ」「新源氏物語」そして「哀しみのコルドバ」が同点で競り合った結果、突出するものがなく、該当作なしという結果となった。演出賞は「星逢―」の上田久美子が「ルパン三世」「キャッチ・ミー―」「オイディプス王」の先輩・小柳奈穂子を3票差で抑え、大劇場デビュー作で受賞という快挙を達成した。レビュー部門は「宝塚幻想曲」の稲葉太地で文句なし。あと主題歌賞は、既成曲だが宝塚版「ルパン三世のテーマ」に。また振付賞は「1789」二幕冒頭のあの力強い群舞を振り付けたKAORIaliveが「GOLDENJAZZ」の森陽子を1票差で制した。

特別功労賞として6年間トップを務め、前代未聞の大フィーバーの中、退団していった柚希礼音を顕彰することもあわせて決まった。

最終的に「星逢一夜」が作品賞はじめ4部門で受賞、昨年の「前田慶次」に引き続き雪組が2年連続栄冠を獲得、日本物が連続受賞したのは偶然とはいえ、今後の宝塚を占ううえで象徴的な結果となった。

100周年を盛況裏に終え、101年目の今年は、スターの退団だけでなく、理事長が交代するなど宝塚にとっても大きな転換の年になりましたが、来年もさらに楽しませてくれる作品、スターの登場を期待したいものです。ではよいお年を。新年は宙組公演「シェイクスピア」「HOT EYES!」の報告からスタートします。お楽しみに。

©宝塚歌劇支局プラス12月24日記 薮下哲司