フライング | たからしげるブログ

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つれづれ思うことどもを不定期で発信しています。

 小学校のころからの幼なじみの友人、Mくんの奥さんが亡くなった。


 2週間くらい前に、久しぶりにかかってきた電話に出ると、奥さんが危篤だという。


 がんの末期で、いまはもう病院にも見放されてしまい、自宅にずっといるという。


 Mくんとは中学もいっしょ、高校・大学は別だったが、ぼくが高2のときに始めたエレキバンドの世界では、大先輩だった。


 中学のころからギターを弾いていて、高校や大学では、まわりのみんなに比べて、ずば抜けたテクニックの持ち主になっていた。


 家が近かったので、よく会って、音楽やバンドの話ばかりいつもしていた。


 ぼくはギターがからきしだめで、バンドではドラムをたたいていたのだが、そのうちいっしょにプレーするようになって、赤坂や六本木にあるナイトクラブでのアルバイトの仕事にも誘ってもらうようになった。


 奥さんのHさんは、そんな凄腕ギタリストの追っかけだったらしい。


 お互いが社会人になってまもなく、ふたりは結婚して、Mくんは1児の父になった。


 いずれはプロのギタリストとしてデビューするつもりだったMくんが、その道をあきらめたのは、運転していた車がバスと正面衝突して、九死に一生を得たものの、手の指を自在に動かせなくなってしまったからだ。


 やがてMくんは、神奈川県座間市の相模が丘に家を買って引っ越していき、ぼくは千葉県市原市の姉ヶ崎に引っこんだ。


 会う機会がほとんどなくなってしまっている間に、酒好きのMくんは50代になってから脳こうそくの発作を数回くり返した。


 もの忘れが激しくなり、歩くのも苦労するようになったMくんを、同年代で明るい性格のHさんは終始支えて生きてきた。


 訃報をきいて駆けつけたぼくに、Mくんは「おれが先だとばかり思っていたのに、あいつ、フライングしやがった」といった。