【死んでない?】
叔母の入所している施設は、医療サービス付きの看取り専門の有料老人ホーム。
在宅医療専門の開業医が開設し、24時間看護士が常駐。定期的な往診に加えて、必要に応じて医師の診察、治療が受けられる。
家族もペットも24時間いつでも来られて、寝泊まりできる。
昨日の夕方、そろそろ叔母のところへ出掛けるというタイミングで叔母から電話が入った。
自分で携帯の操作がもうできないので、人に頼んでかけてもらってきた。
「もうダメ・・・」
急遽、夫も伴って向かう。
来てみると、もうろうとしているものの、食欲がまだあるから、大丈夫そう。
来週、長年お世話になった方々との集まりが名古屋であって、叔母の状況を知った上で、お招き頂いている。
私から見たら、到底無理な外出。
でも、本人はどうしても行きたいと、かなりこだわっている。
施設の人からは、本人はこれを楽しみに頑張れているし、希望は叶えてあげたい、ギリギリまで行く方向で準備している、とのこと。
ストレッチャーにもなる車椅子が乗せられる介護タクシーも手配してもらった。
痛み止の麻薬も、意識が朦朧としちゃうから、この日までは本人が希望しないならロキソニンだけで様子を見ましょうと、的確にアドバイスくださる。
昨夜は私は泊まることに。
末期の肺癌は呼吸が苦しくなるとは聞いていたけれど、呼吸音から息苦しさが暗闇の中で際立って伝わってくる。
部屋が少しでも明るくなるようにと持ち込んだ、色の鮮やかな少し珍しい色目の紫陽花に水をやっていたら、叔母が目覚めた。
口呼吸をしているから、口が乾く。
吸い口でお水を飲ませると、開口一番の言葉がこれだった。
「死んでない?」
全てには時がある。
起きていることは必然。
私はその事を知っているから、平安があるけれど、叔母はどうなのだろう。
生かされている。
まだ、生かされている。
私は叔母の問いに
ただ
「大丈夫だよ」
とだけ、手を握って答えた。
母と子の幸せ応援団~ひなたぼっこ~
浅井智子