今日で最後の振り返り。
嬉しいことに一週間経った今でも
多くの方々がオバケストラの余韻を楽しみながら、いろんな想像をしてくれています。
今回の振り返り、最初は正直書くか迷いました。
もはや振り返りというか後書きというか、設定紹介というか。
想像する楽しみとしては欲しくない答えもあったかもしれません。
僕の綴った設定や流れは、あくまでも脚本を書いた僕の中にあるもの。
答えなのかと言われれば、そうですが、
そうじゃない。
数多ある未来、皆さんの想像の数だけの未来があっていいと思っています。
僕にとっても想像の一つです。
そんな未来の一つとして読んでいただければと思います。
振り返りの締めくくり
最後は・・・
ファー・ジャルグ役「谷佳樹」くん
写真、最後に衣装で撮ってもらったw
谷くんの存在は、このオバケストラにおいて、どれだけ大きかった事だろう。
役者として役をどこまでも追求し、歌い手としてどう魅せるかをひたすら求め、そして座長としてみんなの空気を一手に掴み、
心ごと一つ上のステージへと上げてくれる。
そして一丸となったチームは皆様に最高の物語を届けてくれました。
純粋に、尊敬し、感謝しています。
もしかしたら彼は、本当にファー・ジャルグなんじゃないかなと。
それほどに、彼はこの世界を引っ張り、そして届けてくれました。
「ファー・ジャルグ」
原案では
「音楽が好きなモンスター(選定中)感受性が豊かで自分の気持ちに素直」
まず思いました。
「(選定中)」
この重要な役、まだなんの妖か決まっていない!と。
そこからたくさん調べ、たどり着いたのが
「ファー・ジャルグ」という妖精(精霊)でした。
幸せ不幸せを司るような伝承だったので、そのままのキャラだけではなく、この物語を紡ぐにおいて重要な要素を混ぜ合わせ、
原作ゆーます先生に伝えたところ、
「いいですね!」
そこから彼の物語が始まっていくのです。
彼は本当に異国から来た妖精。
劇中で妖だとバレそうになって美琴に言うとっさに出た「お、俺、異国人だから!」のセリフの中の嘘は「人」という事のみに、彼の中でその悩みは存在していたのでしょうね。
幸せと不幸を司る、その事で彼は故郷であるアイルランドを追われます。
感謝から人に幸福を与えた事があった。
一度受けた幸福で相手は欲を膨らませ、今以上を求め不満を漏らし、何もしない事で不幸せにされたと迫害される。
彼は人に絶望してしまいました。
はるか遠い土地である日本にたどり着いた理由は妖の未来へとつながる運命のねじれに巻き込まれたのでしょう。
日本にたどり着き、放浪するファー。
音楽を愛するファーは、やっぱり音を楽しむ場所に惹かれるのか、それとも同じように幸せを与える事ができる「昴」の存在に導かれたのか、程なくして彼もまたこの街へとたどり着き、そして屋敷に行き着く。
ここで出会った人ではないもの、「妖(あやかし)」たち。
自分と同じような存在、打ち解けるのに時間はかからなかった。
九十(ここのと)が時間を操れると知った時、ファーは驚いたが自分は人を幸せにする事ができるのだから、と受け入れは早かったらしい。
人との共存を望む彼らに、ファーは気持ちの理解と諦めの意を示した。
清一との出会いは、やはり職務質問から。
屋敷に居候している異国人と名乗ると、清一はすぐさまファーを飲みに連れて行く。
人に絶望していたファー。
しかし、こんな人間もいるのだなと、元来の明るい性格へと戻っていく。
しかし「人ではないもの」という事は絶対に言わないと心に決めていた。
しばらくして、屋敷に人間の女性が来る事を知る。
過去の妖たちが何度も人との関わりを持とうとしては失敗し、過去を書き換えた事を知っているファーは、迂闊にも口を滑らすように話しかけてしまい、そのまま街案内をする事に。
ここからねじれた運命は彼に牙を剥き始める。
【1回目】
彼女は歩み寄りたいと言った。
ファーは人間も人それぞれなのだなと嬉しくなり、彼女に幸せであって欲しいと願った。
それは種族的に。
意気揚々と街へ行こうと飛び出していくファー。
しかし背後からする叫び声。
そこには屋敷にいるはずのない蛇と、みるみる顔色が変わり息をしなくなってしまう美琴。
何が起きたか分からない、
呆然と立ち尽くしていると、近くにいたルーさんから
「ここのっつぁんのとこでやり直してくりゃいいだろ?」
その言葉で時間を超える事の意味も考えずに、すぐさま九十(ここのと)の元へと行き、過去へと飛んだ。
【2回目】
蛇を見つけて美琴は叫び声を上げるが、噛まれる事はなく、未来は変わったのか。
ほっとしたファーは何も伝えることなく、美琴と街に出る。
街で翔子さんと出会う。少し濃い人柄の彼女、友達になろうとしては一人で完結し去ろうとする。
そんな彼女に、「変わっている事は悪い事ではない」と、目を見て友達になろうという彼女。
元来彼女はおおらかで、心が綺麗なのだなと感じていた矢先、すごい勢いで迫る人影、美琴にぶつかってすぐに姿を消す。危ないなと追いかけようとするが、翔子さんの叫び声。
美琴はまたも息をしていない。
未来は変わったはずなのになぜ?
【3回目】
蛇を避け、街中での人影も避けた。
3回目ともなるとまだ何かあるのではと疑ってはいたが、しばらくそんな様子もない。
彼女が学校へと通い見送る毎日。
天真爛漫な彼女がこのまま変わらなければいいなと願いつつ平穏な毎日を送る。
しかし彼女が学校へと通い始めてしばらくして、翔子さんとのお茶中に突然亡くなった事を知る。
まただ。どうやっても彼女を救えないのか?
【4回目】
蛇を避け、人影を避け、お茶に何かを仕込まれるのではないかと遠目から見守り、気を抜けない毎日。
そんな折、彼女から清一へと打ち明けるように言われる。
正直そんなつもりは毛頭ないし、彼女は偶然知っただけで誰もが受け入れられるわけではない事を理解していない。
帰ろうとすると、もうすぐここに来ると言い残し、草陰に隠れる彼女。
図られた、そう感じながらどうごまかそうかと考えていたら倒れこむ音。また蛇だ。
なぜだ、なぜ救えない!
【5回目】
起きた事は全部先回りした。
緊張で精神的にまいっていた時、屋敷に美琴宛に手紙が届く。
彼女はその手紙をみて、衝撃を受けていたが、何事もなかったかのように振る舞いはじめる。
ここまでずっと何度も彼女を見てきた。幸せにするために。
明らかに無理をしている様子、見ていられない。
問い詰めると、彼女は定められた許婚の元に帰らねばならないという。なぜ、そんな悲しい目をしているのに笑うのか。
とっさに出てしまった言葉。
「言う通りに帰る事、それは君にとって幸せなのかい?」
彼女は、自分の未来を諦めていた。
喧嘩別れのような形で去っていく美琴。その後、帰り道でまたも命を落としたことを知る。
どうすればいい、幸せってなんなんだ?
【6回目】【7回目】【8回目】
どうしても救うことができない。運命はそれほどまでに彼女の存在を消したいのか。
手紙を持ち去っても、引き止めても、運命は彼女を連れていく。
そもそも、何度も同じことを繰り返している時点で未来は変化していない。救った時の状況が変わるだけで、そこから言葉も何もかもが同じ。
俺はファー・ジャルグ、「赤い人」という名の妖精。
幸せ不幸せを司り・・・
本当に?
なにもわかっていないのに?「幸せ」の意味を初めて考えた。君にとっての幸せの意味を・・
俺ができることなんて、幸せへの道へ手助けしてあげられる程度のもの、だとしたら彼女の出した答えこそが、幸せなのだろうか。
【9回目】
今度こそはと時を戻ると、蛇がいない。
すると覚さんやルーさんがいつもと違う反応を。
だめだ、平常心!と、いつも通り紹介していくが、今までと行動が何もかも違う。
見たこともない未来からの妖、昴の行動、初めてのことで未来は変化してきたのかと期待する。
翔子さんとの出会いで人影が迫ってきたが避ける。今回は二人いた。警戒を強めるが、お茶にもなんの痕跡もない。
清一と話す時に刹那が付いてきた。そして美琴が俺に言う。
「私が言いたいのは、あなたがどうしたいのかです。」
そんなことは、聞かれたことがなかった。蛇は刹那に任せ、清一に本当の意味で伝えたが、やはり受け入れられない。
何度感じてもこの気持ちには慣れないものだ。
そうこうしている間に、手紙が届く。
いつもより早い手紙の到着。
やっとここまで来たのに、彼女を幸せにできるかもしれないのに。
我を忘れて、美琴を連れ出し、あの日のように問う。
「言う通りに帰る事、それは君にとって幸せなのかい?」
彼女に何度もやり直していたことを告げる。
押しつけるつもりはない、でも、この変わった未来で何を思い、何を諦めようとしているのかを知りたかった。
彼女は自由を求め、そして今を謳歌していた。
だからこそ、家のこと(許婚との結婚)は受け入れないといけないと。
普段はあんなにも強く人を包み込むのに、自分のこととなると途端に臆病になる彼女。
でも、その決心は固いように思えた。
音楽会まではいて欲しいと言い残し、去ろうと思った。
彼女の決めた答え、だけど
「俺は君に幸せになってほしい。君にとっての幸せって一体なんなのだろうか。」
昴から反対派の勢力が音楽会を壊そうとしていることを聞く。
彼女の幸せを守れるのならと音楽会は諦め、阻止しようと赴く。
未来勢たちが協力してくれているおかげで相手の司令塔と対峙する。
彼は清一の同僚の烏飼さんだ。
人間に溶け込めるお前が憎い、そう言い放つ烏飼さん。
そんな風に見られていたとは、過去の自分が見たら驚くだろうな。
どうにか阻止しているが、烏飼さんは強い。
しかし、今一歩踏み込んでこないというか、迷いを感じる。
その時現れた清一、音楽会に行こうか迷っていたのか、こんなところで会うなんて。
清一のおかげで烏飼さんは引いた。
そして音楽会に刺客が潜り込んでいることを知る。
絶対に美琴は守ってみせる!音楽会に急がねば。
たどりついた瞬間、まさに美琴に毒牙が放たれる瞬間だった。
刺客を制し、
「君もみるといいよ、これが我らの未来に繋がるから。」
刺客は止められたことで諦めたのか、ほかにやめる理由になることがあったのか、晴れやかな顔で去って行く。
戸惑う美琴。
そして聞いてくる、この時間を何度もやり直したのかと。
「ううん、今この瞬間が初めての今だよ。だからこそ、君が選ぶ答えこそが、未来なんだ。だからこそ人の想いを、君の想いを、俺達に聞かせてほしい。」
彼女は迷っていた。歌うことで決心が揺らぐのではと。
背中を押され、自らを受け入れて、そして歌い始める。
歌う中で旦那様が見せた幻なのか、何度も時を繰り返し、守った記憶が流れ込む。
そして、去っていく姿が見える、ちゃんと未来に進む道として。
今日は音楽会。
多くの妖と、人間たちが並んで彼女の歌を聴いていた。
そんなありえないはずの今を選んでくれた美琴。
「ありがとう、僕たちを受け入れてくれて」
彼女は救われた。これで幸せになれる。
「・・・私の方こそ、守ってくれてありがとう。」
彼女は歌中で一緒に全部を見ていた。
伝わってしまった繰り返した違う未来。何度も何度も繰り返してようやくたどり着いた今。驚きと反応が怖かった。
「待っていてくれる?」
それでも、まだそういってくれるのかい?美琴。
「待ってるさ、いつまでも。」
そして、二人の未来はつながっていったのでした。
という一つの答え、僕の中にあった「新しい世界」での話。
「オバケストラ!」振り返り
長々とおつきあいいただきありがとうございました。
作り手、という意味ではまさに僕は「ルー」の気分でした。
世界を作った者として見守り、
時には道標をそっと置いてみたり、
混じって一緒に笑ってみたり。
素敵な作品になったのは
キャストスタッフ一同の頑張りと、
ご来場いただいた皆さま、
遠くから応援してくださった皆さまのおかげです。
改めまして
SEPT×ホーンテッドオバケストラ
Entertainmentv live stage「オバケストラ!」
ご声援、ご来場いただきまして本当にありがとうございました。
SEPTは11月7日から始まる次回作、
「SEPT Vol.8」
に向けて動き出しています。
少しでも気になった方はチェックしてみてもらえたら嬉しいです。
ではまた、SEPTの世界で。
「よし、こっからだ!」