私が毎日行っていることの一つは、古いデータを見直して論文にすることです。麻布大学でたくさんの学生を指導しました。それまで大学院生を相手にしてきたので、指導の仕方も違うことになりました。院生とは経験も違うし、訓練の受け方も違うので当然ですが、しかし私のスタイルとしては手を抜くことは全くしませんでした。厳しく接したというのとは少し違います。私自身が面白いと思ったことをそのまま表現したという小とです。そのことについて、相手が違うから「調整」をすることはしなかったということです。
 私自身の中に、小さな私立大学の学部生の卒業研究がちゃんとした学術論文になるだろうかという不安はなかったといえば嘘になります。しかし高度で難解なことではなくても、きちんと調べれば一定の成果は出るものです。それをしっかり意義づけて書けば論文になることもあるはずだと思いました。
 一番最初は八ヶ岳のフクロウの巣内残存仏の分析で、いい結果だったので思い切ってジャーナル・オブ・ラプター・リサーチ(猛禽類研究雑誌)という国際誌に出して、受理されました。それからいくつも論文にし、自分でも自身が持てるようになりました。
 私のブログの学術的なものに、「最近の論文」というコーナーがあるので見てください。そのうちのいくつかのものはこうして生まれたものです。
 去年からのものを、そういう意味で分けてみると次のようになり、学生の卒業家級から生まれたものは一年半で5本になりますから、けっこう多いと思います。

麻布大学の学生の卒業研究から生まれたもの。
高槻成紀・望月亜佑子
スギ人工林の間伐が下層植生と訪花に与える影響
– アファンの森と隣接する人工林での観察例
人と自然、印刷準備中

小島香澄・高槻成紀. 2020.
麻布大学キャンパス内の植栽樹への種子散布
Binos, 27: 11-16. 
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Nemoto, Y., H. Oomachi, R. Saito, R. Kumada, M. Sasaki, S. Takatsuki. 2020.
Effects of 137Cs contamination after the TEPCO Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Station accident on food and habitat of wild boar in Fukushima Prefecture. (福島第一原発事故後のセシウム137が福島県のイノシシの食性と生息地に及ぼした影響)
Journal of Environmental Radioactivity 
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宗兼明香・南正人・高槻成紀. 2020.
長野県東部の山地帯のカラマツ林のテンの食性 
哺乳類科学, 61: 39-47. 
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Kagamiuchi, Y. and S. Takatsuki. 2020.
Diets of sika deer invading Mt. Yatsugatake and the Japanese South Alps in the alpine zone of central Japan.
(中部日本の八ヶ岳と南アルプスの高山帯に侵入したニホンジカの食物)  
Wildlife Biology 2020: wlb.00710 こちら