本日のご報告は、9月議会での質疑から。
市の急な方針転換に異議を唱えた内容です。
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皆様は、西宮市が現在展開している「放課後キッズルーム事業」をご存じでしょうか。
放課後の小学校を17時まで開放し、運動場・図書館・ランチルーム等で過ごす子どもたちを専属のコーディネーターやスタッフが見守るという事業です(費用負担は保険料のみ)。
現在、導入済なのは高木北・平木・南甲子園・甲陽園・神原の5校。
他に従来型の「子どもの居場所づくり事業」を実施している小学校も14校ありますが、16時半まで・長期休業は対応なし・一旦帰宅してからの参加、といったネックがありました。
これらを解消した新方式が「放課後キッズルーム事業」なのです。
これらの事業が導入された背景には、子どもたちを取り巻く環境への問題意識があります。
屋外で自由に遊べる場所が減っている。
不審者事案が多発している。
公園で遊んでいても苦情を言われる。
スマホやゲーム機で遊ぶことができる。
こうした中、学校が終わってからは、家の中で、自分や家族だけで過ごす子どもが多くいます。
結果として、思いっきり外で遊ぶという体験や、家族以外とのコミュニケーションの機会が、大きく減っている。
そうした現状を打開しようとしたのが、ここ数年、西宮が展開してきた放課後事業でした。
私もこの問題意識は大いに共感するところで、今後の展開に期待をしていました。
市の説明資料にこんな一節があります。
「当事業の中では、時には喧嘩をしたり、ケガをしたりする場合があります。“いじめ”はできるだけ見逃さないように注意しますが、多少の喧嘩やケガは子供たちが将来、自分の力で生きていくために必要な経験と捉えており、それを未然に防ぐというより、自分たちで解決できないと思われる状況になった時点でスタッフが対応(仲裁をしたり応急手当など)をいたします。」
どうしても危険を親が先回りして取り除いてしまいがちな現代において。
「何かあったときの責任が…」と守りに入りがちな風潮の中で。
最も保守的な組織と思われがちな行政がこのようなメッセージを出すのは、きわめて意義のあることと考えています。
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さらに、当事業は育成センターの環境改善にも寄与することが期待されていました。
今回の一般質問でも取り上げたんですが(詳細は後日)、保護者が留守にしている家庭のお子さんを預かる育成センターの利用者が、増加の一途をたどっています。
本年度は8センターで65名の待機児童が発生しているほか、定員もかなり弾力的に運用しているので、多くのセンターで一人あたりの面積基準を満たしていません。
また、国は6年生までの受入を求めているものの、西宮では3年生まで・一部のセンターで4年生までの受入にとどまります。
17時まで学校で過ごせる放課後キッズが導入されれば、育成センターの利用を希望するお子さんの受け皿にもなり得ます。
育成センターは、指導員の方がいらっしゃって、過ごし方をしっかりと決めている「保育」の場。
ご家庭によっては(特に高学年では)、むしろ放課後キッズの方を希望する、という場合もあるのではないでしょうか。
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こうしたことから、市は放課後キッズ事業について「全校への導入を目指す」という姿勢を掲げていました。
直近では今年3月10日の教育こども常任委員会において所管事務報告を行い、同様の見解を示しています。
それが今年8月に突然、事業の拡大を見直すという方針が示されたのです。
その理由に、市は「当初の目的である育成センターの待機児童対策やセンター増設の抑制等に効果を上げていない」ことをあげました。
…それってたった1年(昨年度の実施は2校だけ)で効果が判明するものなんですかね?
そもそも、子どもたちの育ちの場という名目を前面に掲げていたのに、育成センターの待機児童解消効果のみをもって判断するのって、おかしくないですか?
また、これだけ大きな方針変更にもかかわらず、その報告は教育こども常任委員会の委員に紙が配られただけ。
私、自分が所属してるのは総務常任委員会ですけど、所管事務報告の資料は全委員会分、必ず目を通してるんですよ。資料共有システムで閲覧できるので。
所管事務報告は特に重要な事項が報告される場なので、市の大きな課題や現状をつかむのに良い機会なんです。
そこで報告した内容の大幅な変更を、しれっと委員メンバーに配布するだけ…資料共有システムにも載ってない。
幸い会派に所属しているので情報をキャッチできましたが、これに気づかなければ問題提起することすらできませんでした。
さらに配布資料で「コロナウイルスの影響で財政状況の見通しが立たない中、一旦立ち止まり…」と明記しているにもかかわらず、今回の答弁では「市として整理すべき種々の課題が見えてきた」といった表現ばかりで、財源の問題にはほとんど触れず。
それを言ったら「子どもたちにお金を使わないということか!」と批判されるのが分かってるので、あえて他の理由で押し切ったということですかね。
この点、厳しく議場で追及してまいりました。
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今後の方向性について、教育委員会は「一旦、令和3年度における拡大を控え、集中的に整理・検討を行い、放課後キッズを含む放課後施策全体の今後のあり方について改めて、しっかりと構築し直した上で、令和4年度に、新たなスタートを切ることが望ましいと考えている」と答弁しています。
額面通りに受け取れば、より良い制度で、再来年度から改めて拡大していくということです。
まさか、「整理・検討」が放課後事業全体に対する後ろ向きなものではないことを信じつつ。
どの小学校でも、どんな子どもでも、17時まで学校で過ごさせてくれる。
それこそ、共働き世帯が増え、公園でも遊びにくい現代における、「子育てするなら西宮」の姿だと私は思います。
これまでの取組に逆行しないよう、展開を注視していきます!