手術日は飲食一切禁止、薬も指定されたもの以外は禁止と言われていた。水くらいは飲んでもいいのだろうが、全身麻酔をした関係上そういうことらしい。栄養は点滴から入っているから、まあそんなもんか、と深くは考えなかった。
「寝る前に睡眠薬も飲めないのか...」
手術後の夜に睡眠薬を飲まずに本当に眠れるのか、一抹の不安はあった。
そこにきて、鼻血大放出と起きたままの追加処置(ガーゼ突っ込み)のストレスだ。
もともとストレスに弱いからうつ病になったのに、更に急激なストレスが、胃を攻撃した!
夜中、予想的中で当然眠れない上、胃が痛い! ナースコールで看護師さんを呼ぶ。
「胃薬もらえませんか。胃が痛くて全く眠れません」
「胃薬ですかぁ...ん~ちょっと相談してきますね」
どうやら看護師さんでは胃薬を出していいものか判断つかないようだ。しばらくして看護師さんがコップをもって戻ってきた。
「相談したんですけど胃薬無いし出せないんですよ。多分空腹なので胃酸で痛いと思うんですよ。白湯もってきたので、これで胃酸を薄めてください」
白湯?
患者が胃の痛みを訴えているのに、ここは病院なのに
白湯だと?
「1階の自販機でジュースとか買ってきて飲んでもいいですよ」
ジュース?
まあ白湯よりはなにか牛乳的な飲み物の方が胃壁を覆ってくれるかと思い、点滴をゴロゴロ転がしながらエレベーターに乗り1階の自販機へ。
牛乳に近い飲み物は...
カフェオレかミルクティーしかない。仕方ないのでミルクティーのペットボトルを3本買って病室に戻りミルクティーを飲んだ。
当然気休めにもならず胃は痛くなるばかりだ。なぜ病院なのに痛みを訴える患者を助けてくれないんだ。看護師は胃薬を出す権限すら与えられていないのか。だとしても、夜勤の当番医はいないのか。入院前にこうなることがわかってれば胃薬くらい自分で買ってきたのに。痛みにのたうち回りながらいろいろ考える。
呼吸が速くなってきた。まずい、過呼吸だ。うつ病の最悪期は毎日のように過呼吸になっていた。ここのところ調子よかったので過呼吸も治まっていたのに、鼻はどん詰まりの上、胃の激痛。手足と顔面が痺れてきた。完全に過呼吸の症状だ。
「ああ、またうつに戻るのか...」
絶望的な気分のまま朝まで眠れなかった。
朝になり主治医がやってきて
「胃が痛いそうですねー。血を飲み込んじゃうと胃が痛くなるんですよ。お薬出しておきますね」
やっと薬を出してもらえる。と思いきや、なかなか薬がやって来ない。ナースコール。
「薬まだですか...?」
看護師は困ったように
「処方薬なので薬局で準備してるんで時間かかるんですよ」
どれくらいかかっただろうか。やっと薬がきた。すぐに飲んだが痛みは治まらない。ナースコール。
「助けてください...」
「先生呼びますね」
医師がきて
「薬飲んでもまだ痛いですかぁ。そうかぁ、じゃあ点滴で薬入れますね」
点滴で胃薬を入れる。もう祈るしかない。この点滴なら胃痛は治まる、治まる、治まる、治まってくれ...
治まった。
手術日から一夜明け、ようやく鼻も胃も落ち着いた。舐めてかかっていた手術だったが、鼻血と痛みと不眠に苦しんだ長い1日だった。
鼻血はまだまだ止まる様子はない。まあ、睡眠薬を飲んでゆっくり寝よう。考えるのは寝て起きてからだ。
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最近読んで面白かった本です。十数年前に「新型コロナウィルス」を想起させるようなウィルスに関する話を、これほどまでに書けるとは、著者の着眼点に驚きます。
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ではまた。