職場でインフルエンザの予防接種をした。毎年たくさんの要望があるので、もう十年、医師に来てもらって職場で実施している。長女も職場で接種したそうだが、かなり痛かったと帰宅して嘆いていたので、まったく関連はないが筆者も構えて接種した。▶接種する前に体温測定とともに予診票を記載し、接種していいかどうか医師の判断を仰ぐ。筆者は病歴の欄にくも膜下出血と記載したが、それを見た医師が言っていた。「よく助かりましたね。こうやって元気に接種に来られていること自体が奇跡です。くも膜下出血には“3分の1ルール”と言うものがあります。罹った方のうち3分の1の方が亡くなる。3分の1の方は後遺症に悩まされ、3分の1の方が回復される、というものです。通報が早かったのでしょうね」。「はい。私が変ないびきをかいていたのを不審に思って妻が通報してくれました」▶この時のことは妻から何度も聞かされている。救急車の中では筆者の脈も呼吸も止まった。筆者の葬儀をどうやって出すのか真剣に考えたそうである。長女と長男に電話し、搬送予定の病院まで至急来るように伝えたとも。この話題になるたびに妻と長女、長男には感謝しかない。▶接種会場を出た所で後輩と会った。彼は「だいぶお元気になられましたね。以前と変わりありませんね」「いや、まだ完璧には回復していないんだけどね」「無理せず、ゆっくり治してください」…そんな会話をして別れた。「生きていてよかった」と心から思う。  (虹)2025.11.09