私の信条として、もっと言えば、生き方として、どんな些細な縁であろうと出会った人が、一人苦悩のどん底にいる、一人苦しんでいる、一人病と闘っている…そういう人のもとにすぐさま行って胸の内を聞く。応援する。
誰からも称賛されない、もっと言えば、人々の意識にさえ上らないけれど、自分がいるその場で必死に生きている人を捜してでも見つけて、声をかける。
そう18歳の時に決めた。あれ以来、数は多くないかもしれないが、その信条のままに行動に移して来たし、今も変わっていないと胸を張って言える。
2024年4月6日、18年ぶりに復活したNHKのドキュメンタリー番組「新プロジェクトX~挑戦者たち~」がスタートした。毎週楽しみに、熟読さながら熟視聴している。
言うまでもなく、この番組のコンセプトは誰からもどこからもスポットは当たらない、賞賛されない。でもそんなことはまったく歯牙にもかけず、社会のため、人々のためにさまざまな分野でひたむきに黙々と努力し挑戦し続ける人々、中島みゆきの言葉を借りれば「地上の星」を取り上げること。
同番組の新スタートにあたり中島みゆきがメッセージを寄せた(以下要旨)。
(前作の)「プロジェクトX」が最終回を迎えた時、「もう何処にも地味な人生を見守ってくれる人は居なくなったのかぁ」と寒々とした気持ちになったものでした。
記憶に刻まれていくものといえば、より華やかに目立つ人々の名前ばかり。それが当然のこととは言え、心のどこかで探し続けていたのは、たとえば「まなざし」といったような何かだったのでしょう。
どんなに時は流れ、どんなに地図は塗り替わっても、どこかの片隅で着実に人間を支え続けている人間たちをこの「新プロジェクトX」がこれからも見守ってくれることを信じたいと思います。
「新プロジェクトX~挑戦者たち~」では上に書いたコンセプトが前作より強く前面に押し出されているように感じる。さらに、その人の後ろにいて、その人を支え続ける「もっと陰の人」にもスポットを当て、思いを拾い上げる。
この番組の主題歌は、前作同様、中島みゆきの「新・地上の星」。楽曲自体は「地上の星」と変わらないが、「『新・地上の星』はキーを上げました」(中島みゆき)。
エンディングはこれも前作同様、中島みゆきの「ヘッドライト・テールライト」。感動的に伝えた番組のラストシーンに静かに重なるように「ヘッドライト・テールライト」の前奏が始まる。
「新・地上の星」~番組本編~「ヘッドライト・テールライト」、この三者が一体となって骨太で感動的なストーリーが映し出されてくる。
2024年5月8日、東京国際フォーラムで開催された中島みゆきコンサート「歌会 VOL.1」に参加した。その公演の最後に歌ったのが「地上の星」
私のレベルではそれが「地上の星」なのか、キーを上げた「新・地上の星」かは聴き分けられなかったが、流れからすれば当然「新・地上の星」だろう。
見事だった。あれだけの迫力で歌いあげてこそこの曲。歌詞に込められたメッセージは何百倍にもなって伝わった。
つばめよ 高い空から 教えてよ地上の星を
つばめよ 地上の星は 今どこにあるのだろう
(「地上の星」)
見守られることのない「地上の星」
名立たるものではない「地上の星」
輝くものではない「地上の星」
でも、「どこかの片隅で着実に人間を支え続けている」(中島みゆき)地上の星たち。
行く先を照らすのは まだ咲かぬ見果てぬ夢
遥か後ろを照らすのは あどけない夢
(「ヘッドライト・テールライト」)
人間を支え続ける地上の星たちを支え続けるのは、夢をかなえるための飽くなき挑戦。行く先を照らす見果てぬ夢たち。
地上の星たちの背中を今も押し続け、これまで歩いて来た道を「良き哉、良き哉」と判を押してくれるのは、小さい頃に描いたあどけない夢たち。
旅はまだ終わらない。
「地上の星」(公式MV)
「ヘッドライト・テールライト」
(Official Audio)