(心に残るコラム)

 

  2024年4月14日 朝日新聞
(天声人語)入学式の言葉から

 

 青春は若いやつらにはもったいない――。ノーベル賞作家バーナード・ショーの名言をひいたのは日本大の理事長である。「大人のやっかみ」だけれど、若いときには「可能性という道路が広くどこまでもある」のを分かってほしい、と。この春の入学式の言葉から▼「ほんまもん」とは何か。京都工芸繊維大の学長は説いた。大学の学びとは、偽物と本物の違いを見分けるようになること。AIを駆使したフェイクがあふれる世に「見極める力は人との交流で培われる」▼失敗を恐れるな。鹿児島国際大の学長は「大学は、安心して何度でも失敗の経験が積める場所でありたい」と言った。激しい変化の時代である。「大過なく勤め上げられて感無量」でなく、挑戦を続けよう▼構造的な差別はなくさねばならない。女性の学部新入生が2割にとどまる東京大の総長は訴える。「女性をはじめ多様な学生が魅力を感じる大学であるか、多様な学生を迎え入れる環境となっているか」▼何を言うかは大事だが、誰が言うかも大事である。「自分の立ち位置をしっかりと把握して」と国会議員を兼ねる近畿大の理事長。自民党の裏金問題で、秘書がやった、自分は知らないと弁明を繰り返した姿が重なる▼能登半島地震から3カ月余り。悲しみとともに、復興の道を歩む。「被災地に最も近い大学」という石川県立看護大の学長は、新入生たちに語りかけた。「命の尊さを忘れず、学ぶことをスタートしてください」。小欄からもエールを。

 

 

(2024年1月20日勝鬨橋から/筆者撮影)