矢沢永吉さんが「FIGHT ON」EIKICHI YAZAWACONCERT TOUR 2024(8都市17公演)を開催することを4月1日、自身の公式サイトで発表し、LINEなどSNSでも発信していた。

 

また同時に今ツアーも「ツアー予習プレイリスト」を公開、配信していた。そこには「JEALOUSY」「魅惑のメイク」「ニューグランドホテル」「パッシングライト」「ピ・ア・ス」など全25曲が収録されている。

 

ツアー特設サイトを見て、個人的に目を引いたのが以下の告知。

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今後の矢沢永吉コンサートにおける「永ちゃんコール」「大声で一緒に歌う」「ヤジ」についての規制のお知らせ

 

 

コロナ禍に実施した「永ちゃんコール」「大声で一緒に歌う」などの禁止に対して、ご協力を賜った事により、

「永ちゃんの歌がちゃんと聞けてすごくよかったし、バックミュージシャンの演奏もかっこよかった」
「改めてコンサートの良さを感じた」
「周りに騒ぐ人がいなかったのでとても快適だった」
というメッセージを、多くの方々から頂きました。
そのような皆様からの反響を受けまして、今後の矢沢永吉コンサートにおいて、コンサートの1曲目から本編曲の終わりまで、「永ちゃんコール」「一緒に歌う」「ヤジ等」などの行為については引き続き禁止とさせていただき、皆様のご協力をお願いしたいと存じます。
コンサート開演前、アンコール以降については他のお客様のご迷惑にならない範囲内での「声出し」を解禁とさせていただきます。
ただしコールの強要、他のお客様に迷惑となる行為、コンサートを楽しみたい方々の妨げとなる行為、に該当される方には公演中であっても係員より注意させて頂きます。
係員の注意に従わない場合は退場とさせていただく可能性がございます。予めご了承ください。

 

 

改めて、こうして公式に明快に方針を打ち出すスタンスはさすが。矢沢永吉さんがどこに目を向けているのか、懐深く広く大きく見ていることがよく分かる。参加した人たちは安心して矢沢永吉さんとの時間と空間を楽しめることと思う。

 

2021年12月19日に開催した日本武道館145回目ライブの中で矢沢永吉さん自身が話していた。

 

コロナ下でのライブ開催、マスク着用、声出し(客席で歌うことも)禁止について

「いやいや、なかなかこれはこれで捨てたもんじゃないですよ。ファンの人が“永ちゃんの声がよく聞こえる”とか“歌がちゃんと聞こえる”“隣のやかましいおじさんが歌わないので、静かにしてくれて、歌がよく聞こえる”とか(笑)。いろんな声、ありますので、OK、楽しんでください!」(要旨)

 

きっとこういった声を拾い上げ、具体的な方針にまで作り上げたのだろう。

 

【EY TV Ⅱ】矢沢永吉 「背中ごしの I LOVE YOU」

Music Video

 

 

 


こういう矢沢永吉さんのスタンスを読み聞きしていて、いつも即座に思い出す、私が40年以上応援し続けているアーティストのうちの一人のライブ。

 

コロナ下でルールがあっての開催、開催日までしつこいほどルール厳守を主催者側やプレイガイドが徹底してきたにも関わらず、

 

歌い手本人がマイクを通して観客に「なにビビッてんだよ!(歌えよ)」と大声での合唱を強要する。観客はマスクも付けずに大声で歌い手の名前をコールし、叫び、一緒に歌う。

 

コロナ下でなくても、手製の大きなうちわや国旗を、周囲の観客にはお構いなしで振り回し続ける人。歌の最中にも大声でコールする人。

 

公演中、平気でスマホで動画撮影する人たち。公演終了後には、公演中に飲んだ飲み物の空ペットボトルをホール内に残し、退場後のホール床には数多くのペットボトルが散乱している。

 

一応、同じファンという立場ながら、立ち上がって一緒に拳を上げたりコールしたり、歌ったりしない人に、それらを疑問視したり強制するような視線を投げつける。


基本的なマナーやルールはあったものではない。

 

他のお客さんのことを思いやる気持ちは微塵もなく、むしろそれらを周囲に強要する全体的なムード。我こそがその歌い手の一番のファンだと思っているようだが。

 

良識的に歌とその世界を楽しみたい人は参加する前からそれらに気を遣う。矛盾するようだが、あの空間に入ると思うと、どこか気が重くなるところがある。

 

全数調査をしたことはないので分からないが、私の実感としてそうした人たちは2000年代に入ってちょっとした頃かな?急速に増え、その頃からファン層が入れ替わり始めたと感じている。

 

それらはやっぱりその歌い手に呼応しての行為でありムードなので、歌い手本人のパフォーマンスや作り出すムードの変化だともいえる。

 

それまでもそうした人はいたことはいたが、超えてはいけない一線を持っていたように思う。同じ空間にいても不愉快ではなかった。

 

今やもう30年以上、40年以上応援し続けているファンは激減しているのかもしれない。かりにライブ会場にいても、多勢に無勢、上に書いたような状態の会場内では数少ないであろう良識ある人は駆逐される。

 

結局、全体としては動員数が落ち続けるトレンドの中で、そういう行為をするファンだけが残っていくような気がしている。

 

歌い手本人に改めて欲しいとは思わないし、どだい無理な話。でも例えば矢沢永吉さんに学びつつ、自身の視点や考え方を見直し、サイレントオーディエンスと言える人たち、長きにわたり応援し続けているそういう人たちに視線を向けて欲しいと思う。