「さだまさし」が語るウクライナ侵攻「何もできないから僕は歌う」 曲が翻訳され静かな反響
さだまさしさんインタビュー前編
さだまさし 2024/03/16/AERAdot.
ロシアで3月17日に結果が判明する大統領選挙。プーチン氏が再選されるとみられているが、あらためて、ウクライナ侵攻の是非が国際社会から問われている。そんな中、ある日本人歌手の曲がウクライナで注目を集めている。ロシア軍兵士に素手で立ち向かうウクライナの女性。その命がけの抵抗を歌ったさだまさしさんの曲だ。曲は「キーウから遠く離れて」(作詞・作曲 さだまさし)。日本語からウクライナ語へ訳され、その歌詞を読んだ戦時下の人から「胸を打つ」との声もあがる。さださんに、この曲を作った理由と、ウクライナ戦争への思いを聞いた。
――ウクライナについての歌を作った理由は。
一昨年2月、戦車が列をなして国境を越えてくる、という時代錯誤の映像に衝撃を受けました。「本当に今起きてることなのか」と。一言でいうと、義憤にかられた、ということですね。その4カ月後にリリースした「孤悲」というアルバムに入っています。
――歌詞は「君は誰に向かって その銃を構えているの」から始まる。「気づきなさい君が撃つのは君の自由と未来」「わたしが撃たれてもその後にわたしが続くでしょう」といったフレーズが印象的です。どんな状況を歌ったのでしょう。
ウクライナのクリミア半島のすぐ北にある町がロシア軍に占拠されました。その街の様子がスマートフォンで中継され、日本のテレビニュースでも流された。その中で、あるウクライナのおばちゃんが、銃を持った若いロシア兵に詰め寄り、怒鳴っているシーンがありました。「ヒマワリの種をポケットに入れておきなさい。あんたが死んだら、地面にその花が咲くだろう。それを私が見てやるから」と言って。その言葉にも衝撃を受けました。この曲は、ロシア兵に語りかけている歌なんです。彼らが聞いてくれれば、と思います。
(インタビュー前編 全文🔗)
音楽は無力なのか?「さだまさし」の曲がウクライナ語に翻訳 「弱きを励ますのが歌」本人が語る役割 さだまさしさんインタビュー後編
2024/03/16/AERAdot.
――「キーウから遠く離れて」の歌詞は、一部のウクライナの人も読んでいます。この曲も含め、「いのち」という言葉が、曲によく出てきますね。
もう僕のテーゼ、テーマの一つです。手を変え品を変え、メロディーを変え、言葉を変えているだけで、テーマは全く動かない。あなたは自分の命を大事にしてください、ということ。自分の命が大切なように、敵の命も大切にしてくださいよっていうのが大きなテーマです。愛の歌は全部、反戦歌だ。僕はそう信じています。だって愛を歌うんだったら、敵の命を奪って良いという論理はありえないですよね。僕に戦争賛美の曲は1曲もありません。戦争が起きるたび、僕はショックを受けるもんですから、イラン・イラク戦争、湾岸戦争、アフガニスタン戦争。これらについて、馬鹿なことを人間は繰り返すんだな、という思いも持ちながら、曲を書いてきました。
――ウクライナ戦争についてはいかがですか。
僕は音楽家なので、銃を人に向けて撃つことはできない。撃った瞬間、自分の歌が嘘になってしまうから。でも、「銃を撃たないで大事な人を守る方法はないのか」というのが強烈なテーマとして、22年2月のロシア侵攻以降、自分の中に生まれました。それについて、今も考え続けています。
(インタビュー後編 全文🔗)
「キーウから遠く離れて」(1分04秒~2分08秒)
さだまさし New Album「孤悲」ライブ・ダイジェスト