<2024.02.14>公式音源3本挿入
<2021.02.17>起稿

 

職場近くの公園の梅がほぼ満開。桜ほどの華やかさはないが、骨太の美しさと言おうか、芯の強さ故の美しさを感じる。

 

(2021年2月15日筆者撮影)

( 同上 )

 

まだまだ寒さが残るとはいえ、どことなく春の気配も漂ってくる晩冬のこの時期。

 

松山千春の「春は来る」「春の足音」「淡い雪」をついつい口ずさんだり、弾き語りしたりする。

 

「春は来る」

「春の足音」

 

3曲ともリリース以来気に入っていてどれも素晴らしいと思うが、歌っている世界の深さという点で言えば、やっぱり「淡い雪」か。

 

近年の松山千春の楽曲の中では傑作中の傑作だと思っている。

 

 

「淡い雪」

 

2017年リリースのアルバム『愛がすべて』のラスト、10曲目

 

アルバムタイトル曲である「愛がすべて」。正直、表現的に”伝えきれてない”と思うが、歌詞の世界から離れて、この「愛」を「人間愛」と拡大解釈すれば(かなり無理があるが)、「淡い雪」はそれに通底するもうひとつのタイトル曲と言っていい。

 

「愛がすべて」と「淡い雪」でテーマが一本通っていると言える。

 

 

「淡い雪」…こういう歌こそ、松山千春があれだけこだわるフォークソング、松山千春流フォークソングの王道だと思っている。

 

タイアップしたコンサート・ツアーでも本編ラストで歌われた。あの時生で聴けてよかった。

 

 

遠い遠い昔ではなく 今も今も続いている
悲しくて 悔しくて 

人は何故に愚かな事ばかりを
罪も無きたくさんの 誰が命を奪うか

(「淡い雪」)

 

すべての人間の心の中に、他者を慈しむ心、優しさ、愛情、いたわりなどが必ずある。それとともに同じく必ずある、憎み、恨み、怒り、貪り。

 

それらが自分を取り巻く外の世界に触れて、負の作用として起こる争い、戦争。

遠い昔に、今も歴史に残る争いはいくつもあった。かと言ってそれらは遠い遠い昔の話しではなく、それを引き起こす人間の本質は変わらず、ずっと繰り返されてきた。現在も続いている。今この時も続いる。

人が人の命を奪う権利は誰にもない。なぜそうした愚かなことばかりが繰り返されるのか。
 

松山千春は「いつの日か」(1985年)の中で

誰も求めてたわけじゃないさ 

けれども誰もが気づいてたはず

 

 

と、誰も求めていないけれど、誰もが気づいていた、何度も同じ過ちを繰り返す人の命の性を歌う。


 

冬の厳しい寒さがあるから、それを乗り越えた春の暖かさに感謝できる。それは宇宙のリズムと言えるし、人生開花の法則とも言える。

 

戦争で、自らの意思とは関係なく尊い命を失ってしまった人々がいる以上、今起こっている様々な争いを「冬の寒さ」に例えることは絶対にできない。

 

ただ、だからこそ平和を求める気持ちは一層強くなる。

 


淡い淡い雪 この大地に眠れ
雪よ雪よ雪 時をとじこめ

(「淡い雪」)

 

時さえも閉じ込め、止めるほどの雪。

 

この歌詞に触れるたびに雪に覆われた世界の白さをイメージする。その点で松山千春の他の楽曲で言えば「雪化粧」や「冬の嵐」などに共通している。

 

現在を見ても、社会全体の情報化が進み、誰もがSNSを通して発言者、発信者となった。匿名性も担保されることから、自分こそが正義と勝手に思い込み、言いたい放題、書きたい放題。自分がイメージする決着を迎えるまで、特定の誰かを攻撃し続け放題。 

根底には、社会や人々との間に嫌悪感に根差した境界線を設け、自分はそのこちら側にいて安心を得ようとして人を攻撃する風潮を感じる。

 

争い、とまでは言わないが、その風潮の本質にも憎しみ、怒り、愚かさ…そんなものを感じる。

憎む気持ちさえ 恨む心さえも
この冬を越えて 消えるものなら

(「淡い雪」)

春、雪解けとともに、人間の中から愚かさも消えてなくなればいいのに。


人間や自然を愛し慈しむ心に満たされればいいのに。
 

これから生まれ来る罪もなき無数の新しい命たちを慈しみ育む世界が訪れればいいのに。

 

さびの熱唱。若き松山千春のそれではない還暦を過ぎた松山千春のそれとして、深みと味わいを感じる。

 

 

 

 淡い淡い雪 この大地に眠れ
雪よ雪よ雪 優しくつつめ

人はそれぞれの 夢を胸にいだき
幾度も争い 疲れ果ててる

遠い遠い昔ではなく 今も今も続いている

悲しくて 悔しくて

人は何故に愚かな事ばかりを

罪も無きたくさんの 誰が命を奪うか
 

 

淡い淡い雪 この大地に眠れ
雪よ雪よ雪 時をとじこめ

憎む気持ちさえ 恨む心さえも
この冬を越えて 消えるものなら

人は何を求めるべきか

わずかばかりの時を与え
空しくて はかなくて

人は何故に愛を忘れているの
幾千のけがれ無き 新たな命はばたけ

空しくて はかなくて
人は何故に愛を忘れているの
幾千のけがれ無き 新たな命はばたけ

 

 

 

<サード写真>

【撮影者】@eiji_k0909さん

【タイトル】今朝のハルニレの木
【撮影日時】2020-01-13
【撮影場所】北海道豊頃町

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